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慢性疼痛と睡眠障害の関係

今回は、慢性疼痛と睡眠障害の関係性について整理していきます。

下記文献をベースに紹介していきます。

Sleep problems in pain patients entering tertiary pain care: the role of pain-related anxiety, medication use, self-reported diseases, and sleep disorders

まずは、慢性疼痛について簡単に説明していきます。

痛みの期間による分類

①急性痛

急性痛は、明らかな組織損傷がある場合がほとんどで、その治癒に必要な期間内に生じる痛み。つまり、急性痛は、生体の警告信号の役割がある。
痛みの多面性からみると、感覚的側面が色濃い痛みである。

②慢性痛

慢性痛は、組織損傷が明らかに治癒しているにもかかわらず残存する痛みや、組織損傷がない状況で通常痛みと感じない程度の弱い刺激で痛みと感じるもの。
痛みの持続期間が、3か月以上と定義されている。
痛みの多面性からみると、情動的側面認知的側面がより色濃く反映した痛みである。

今回の痛みは、後者の慢性痛のことを指しています。

次に、睡眠障害の判定方法を整理していきましょう。

睡眠障害の評価方法

この研究では、
Basic Nordic Sleep Questionnaire (BNSQ)という睡眠障害を判断する質問票が使われています。
入眠障害、睡眠維持障害、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群などを評価することができます。
過去3ヶ月間の様々な症状を、
1(全くない、または月に1回以下)、
2(週に1回以下)、
3(週に1〜2日)、
4(週に3〜5日)、
5(毎晩またはほとんど毎晩)
のスケールで問診するものです。

繰り返される睡眠問題は、
①入眠困難、
②夜間覚醒の繰り返し、
③リフレッシュできない眠り
の3つの質問で判断しています。

入眠困難が週3回以上、夜間覚醒が週3回以上、朝起きた後の疲労感が週3回以上、さらに日中の疲労感が週3回以上と、少なくとも1つの問題を経験した患者を「睡眠問題」群に割り振って比較しています。

今回登場した睡眠障害についても簡単に整理していきます。

睡眠障害

・入眠困難

夜になかなか寝付けず眠るまでに30~1時間以上かかかる

・睡眠維持障害

夜中、何度も目が覚め、その後なかなか眠れない

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に空気の通り道が狭くなり無呼吸状態と大きないびきを繰り返すこと

・レストレスレッグス症候群

寝床に入って安静にしていると足がむずむずするような異常な感覚が出現し、入眠が障害されること

はじめに

慢性疼痛と睡眠の問題はしばしば併発します。
痛みそのものが睡眠を妨げるが、他の要因も疼痛患者の睡眠問題に寄与している可能性があります。
痛みと睡眠の関係を明らかにするために,正常に睡眠している痛み患者と睡眠障害を繰り返している患者を比較した研究があるので、紹介させていただきます。

研究の目的

①疼痛患者の睡眠障害のあり、なしに関して、睡眠の悪化に関する要因がどのように異なるか調査すること。
②睡眠障害における疼痛関連不安要素の役割を確かめること。

結果

疼痛患者と睡眠障害の有無の頻度

458名の痛みがある患者について、

正常な睡眠
→61人(コホートの13.3%) 
「著しい」睡眠障害
→199人(43.4%) 
「軽度」または「まれ」な睡眠障害(週に1-2回以下しかない)
→198人        

※睡眠が正常な患者と睡眠障害を繰り返す患者では、年齢、性別、教育年数
において差はなかった。

睡眠障害と痛みの関係

睡眠障害を抱えている者は、正常の睡眠している者に比べて

・平均の痛みが強い
・痛みの部位数が多い
・痛みの持続期間は2年と長い
・疼痛関連不安が強い

ことが報告されています。

疼痛関連不安と睡眠

睡眠障害のある患者は、すべての評価項目において、正常に睡眠している患者よりも有意に疼痛関連不安が強かった。
【疼痛関連不安の項目】
・認知不安
 例:「痛みがあると心配だ」
・逃避/回避行動
 例:「痛みがあると重要な活動を避ける」
・痛みに対する恐怖
 例:「痛みを感じると何か恐ろしいことが起こるのではないかと恐れる」
・生理不安
 例:「痛みがあると心臓がドキドキしたりバクバクするらしい」


まとめ

・痛みがある患者は、睡眠障害もあることが多い。
・睡眠障害と痛みの関係では、正常の睡眠者に比べて、痛みが強く、痛みの部位が多く、痛み持続期間が2年と長く、疼痛関連不安が強いことがわかった。
・疼痛関連不安とは、認知不安、逃避回避行動、痛みに対する恐怖、生理不安があります。

筆者の意見

睡眠と痛みの関係は、他の文献でも報告されています。
慢性痛を抱えていても、睡眠障害と関係があると知っている方は少ないと思います。
痛みが減らずに悩んでいる人は、睡眠を見直してみるのも一つの方法かもしれません。
睡眠時間を確保できていますか?日中眠気が強くないですか?起きたときだるくないですか?
こんな症状があれば、睡眠に問題があるケースが多いです。
睡眠を改善して、痛みの改善も図れるとよいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
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