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精神保健福祉士の後進育成を振り返る

今回もソーシャルワーカーとしての経験を振り返る
テーマが「後進育成」「実習指導」
これは30年間の経験で力を入れていたテーマでもあった

後進育成も大事な役割と思うきっかけ

病院でも地域でも初めてのソーシャルワーカーになり
教えてくれる先輩の存在はなく
峠を越えて先輩のいる地域へ教えを乞う
更に峠を越えてスーパービジョンに通う
気付くまで未熟な僕を見守って支えてくれた
苦しみながら気付いた時の有り難さ
同じ職場でなくとも
先輩も後輩もお互いに成長していくものと
僕もそんなSWでいたいと思わせてくれた経験があった


初めての実習指導経験

鹿児島県は養成校が少なかった
先輩からのアドバイスも受け
後進育成を毎年複数名受け入れ、プログラムも考えた
相談室という部署も部屋もない経験から
初期の頃は、「相談室を確保するため」
「SWという職種を認知してもらうため」

どんな行動をするかなども考えていた頃が懐かしい

患者さんへの理解を深めたい思いと
支援者が何を「感じ」「思い」「考え」
どのように行動するかを体験
してもらいたい考えで
4週間を実習期間として過ごしてもらうようにした

実習生はいきなり閉鎖病棟からスタートに不安を話す実習生も多かった
保護室でしばらく過ごしてもいいですか?と意欲的な実習生もいた
実習生の人生以上の年月を病院から出たことない人を前に
感じる衝撃を言葉にしていく
ショッキングな犯罪を犯してしまった病気の怖さを知って
悲しさ、怒り、苦しさ、虚しさ、寂しさ、様々な思いの葛藤を言葉にする
終わってみると「閉鎖病棟からスタートして良かった」
「4週間があっという間でまだ過ごしたい」という言葉に
嬉しかった記憶がある


大切なのは実習期間だけじゃない

毎年新人を採用してもらった
若いスタッフと実習生を交流させ
実習生は近い将来像を想像する
若いスタッフは先輩としての自覚と成長意欲をもつキッカケになる
実習のいい循環をとても感じた

ひとつ目の職場での経験はかなり大きく深いものを得させてもらった
ふたつ目の職場で実習指導を経験した
精神保健福祉士協会の実習指導者養成のプレ講習を受け
鹿児島から東京まで自腹で行くほど熱意を持っていた
病院実習は2週間となり4週間プログラムの良さが活かせないと悩んだ
腹立たしさも覚えたけれど
マクロな視点での育成を考える必要を理解した
地域と連携する実習をどうしたらいいだろうと悩んだ
短い実習期間で感情を揺さぶられる体験
感情に流されない学びを促すために
実習期間をどのように活かすのか
実習生にとっても指導者や現任者にとっても
成長を深めあう機会にすぎない
けれど、その機会の重要さは大きい


新しい病院で創っていく実習環境

養成校は少なく、ベッドは多い鹿児島県から
養成校や社会資源も人口も圧倒的に多い神奈川県へ
厚生省の頃から精神科ベッド7万床以上減らすと言っていたが
新しく開設した精神科を有する病院へ
新たな職場は開設して間もないこともあり課題も多かった
スタッフ、カンファレンス、治療プログラム、あらゆるルールを
“0”から“1”へ“2”へ“3”へとないものを他の職種と協力して創り
人口は多いのに地域の資源がないことに驚きながら
地域の資源づくりに病院職員として協力しながら
実習受け入れできる環境を意識していた

より良い病院づくりのための新しい取り組みをしながら
いつか自分がいなくなっても機能する実習を意識して
人材を採用し、育て、指導者を増やす
先輩も指導者も後輩や実習生と共に影響し合い成長するもの
だから指導というより
お互いが「感じたこと」「思ったこと」「考えたこと」
言葉にしながら、自分にないものを補い合い高め合う
そのために言葉を発しやすい雰囲気づくりは意識した
実習プログラムは発想を変えるしかなかったし
大事にするポイントも増えていった

実習生をペアにして行なった実習は
振り返りで実習生がお互いを認め尊重し刺激し合う
気づきや行動力への相乗効果を感じたし
実習前と実習後の成長の手応えを感じた
実習期間以外でも交流して相談できる先輩として
実習報告会も可能な限り出席するように努め
実習前と変化した実習後に頑張っている様子に
とても嬉しく思ったしやり甲斐を感じていた

スタッフの協力もありがたかったし
指導者になってくれる人材も増えていくと
年度末年度始め以外は実習生を受け入れ
スケジュール調整も大変だったけれど
多くの学生や養成校との交流ができて有り難かった


コロナ禍で経験したオンライン実習

世界中が大変だった中で
貴重な現場で体験できる実習ができなくなった
オンラインで実習をするという経験の中で
かなりのデメリットに悩まされながら
スライド、写真、動画を活用するなど工夫をした

経験して良かったことは

・実習目的や内容をより絞って整理できた
・わかりやすい写真や動画などのツールが増えた
・実習生の発言しやすさを感じた
 (場の空気や主体性より、順番、指名で発言という意味では課題だが・・)

残念だったことは

・現場の雰囲気を肌で感じる機会がない
・当事者と直接対面できない
・実習生の主体性や行動からの指導ができない
・適切な評価ができない
そういった影響は大きいと思った

けれども、オンラインを活用できた経験から
事前学習や容易に訪問できない現場を知る機会など
未来では実習を深めるための工夫として
新しい実習スタイルが+αされても不思議ではない


実習課題として気になったこと

  1. 社会福祉士と精神保健福祉士の実習の違い

  2. 社会人経験者の実習生を嫌がる現場が多いこと

  3. 当事者やメンタル課題のある学生が増えていること

1.社会福祉士と精神保健福祉士の実習の違い

社会福祉士との交流は日常的に多かったので
実習に関する情報交換をしていて感じることがあった
ソーシャルワークという共通する実習ではあるけれど

・社会福祉士は実習で業務を学ぶ
・精神保健福祉士は実習で当事者や自己理解を学ぶ

ところが色濃く感じられることが多かった
精神保健福祉の歴史が一つの要因とは思うけれど
未来は、この違いをなくしていく必要があるのではないか


2.社会人経験者の実習生を嫌がる現場が多いこと

社会人を経験した実習生が増えていると感じた
20歳代から70歳代くらいまで
養成校の先生方や実習生本人から相談はかなり多かった
40〜50歳代の相談が特に多かった
通信コースのスクーリング講師を経験させてもらうと
目的意識が明確で熱意が伝わってきて
眠そうな学生は圧倒的に少ない
なのに、なぜ、実習受け入れを嫌がる声があったのか

・指導者が圧倒的に若い場合が多い
・実習生としてでなく、社会人経験からの指摘になりやすい
・現場の課題を学びとして共有しにくい

実習中断となった話も時々耳に入ってきた
社会人経験者も多く実習受け入れしてみたけれど
とても謙虚に若者指導者と共に学ぶ実習生もいれば
学ぶ姿勢というより評価して批判する態度が強い実習生もいれば
若いスタッフと言い合になりトラブルになる実習生もいた
社会人としての経験があるゆえの陥りやすいポイントだと思う
精神保健福祉士でなかったら、僕も批判的になっていたかもしれない
変えたいと一生懸命取り組んできたひとりとして思う
変わってきたけれど、まだまだなのだから


3.当事者やメンタル課題のある学生が増えていること

多くの実習生と関わってみると
リストカットを繰り返していた実習生
対人恐怖やコミュニケーション障害のある実習生
メンタルクリニック通院中で服薬中の実習生

様々な課題を抱えた実習生も増えてきた
自己開示する実習生もいれば
個人情報なので事前情報として共有すべきか悩んだことを
後から養成校の先生に聞くことも多かった
オリエンテーションで「何かある」と気づくことが殆どだけど
実習中の関わりや、自己洞察、自己覚知などの振り返りは
気を遣うことは多いと感じた


専門職育成に思う

少子化の課題が続く未来が待っている
転職しやすい世の中になっていく
社会人経験者の育成で課題になるところにも
課題を抱えながら資格取得を目指せる人にも
目を向けていくこと

実習受入が難しいと断ることは簡単かもしれないけれど
指導者としての柔軟性や力量も問われていくのかもしれない

医療福祉現場も人材不足に備える課題は重要で
業務改善や新しい仕組みづくりに悩むだろう
実習生受け入れを業務とする仕組み
これまで以上に必要になるかもしれない
後進育成も大切な役割なのだから
当然のことではあるのだけれど・・・


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