【#毎週ショートショートnote】横断幕中耳炎
俺は今スタートラインに立っている。
男子800メートル予選2組。
トラックに響き渡る歓声。
高鳴る鼓動。
真夏の厳しい練習を耐え抜いてきた。
その成果を見せるときだ。
遠くには憧れのあの先輩も見守ってくれている。
これは何としても良いところを見せねば。
パン!
ピストルの合図とともにスタートする選手たち。
負けてなるものか!
颯爽と集団についていく。
1周目が終わるあたりに例の先輩が声援を送っていた。
今日こそは良いところを見せたい!
ラスト1周の鐘が鳴る。
2周目に入りバックストレートを走っているときに、ある横断幕が目に入った。
「多くの言葉で少しを語るのではなく、少しの言葉で多くを語りなさい」
「善く生きる」
「批判を避けたいのであれば、何もせず、何も言わず、何者にもなるべきではない」
「この世で情熱なしに達成された偉大なことなどない」
!?
横断幕を読んだ瞬間、酷い耳鳴りがして大失速。
最下位でゴールした。
後日、病院へ行ったら急性中耳炎だった。
(409字)
この記事は、たらはかにさん企画【毎週ショートショートnote】参加記事です。
今回のお題は、裏お題【横断幕中耳炎】でした。
高校時代は陸上部に所属し、主に800メートル、1,500メートルの選手でした。
大会では沢山の横断幕が張られていますが、当時、科目の「倫理」が大の苦手でいつも悩まされていたので、その二つを掛け合わせ、中耳炎に繋げてみました(笑)
ちなみに、憧れの先輩とは、1つ上の女子の先輩で、当時好きで好きで仕方ありませんでした。
高校卒業後は、一度も会っていません。
告白できなかったことは今でも心残りです・・・が、幸せに暮らしていることを願っています。
余談ですが、LINDBERGの「every little thing every precious thing」が好きで、陸上競技の雰囲気がよく感じられる曲です。
この曲は、阪神・藤川球児投手の登場曲にも使われていましたね。
次回のお題にも参加します。
よろしくお願いします!
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