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メッセージ

不思議なことに社会主義社会を経験したロシアではより資本主義を感じる、それは他の西側諸国で感じたことのないような酷い形で現れているようにも思える。街を歩けば物乞いする人がいて、小銭をせびる人がいて僕がロシア語がわからないのも関係なしに隙間なく話しかけてくるし、何より色々な方法でわからないと言ってもロシア語で叩きかけてくる。友人によれば、それは意図的にやっていて、相手が「鬱陶しいなこのやろう、もう小銭くらい渡して去ってもらおう」と感じるまでやるのだという。ロシアでは最低賃金が月額1万8千円程度で、モスクワの平均給与でも12万円程度、なのにモスクワでは学生向けのシェアアパートですら5万円以上するのが相場らしい。僕にはどうやって生きていけばいいのかさっぱりわからない。ある人は、親がアパートを購入してくれたので家賃を払わずにそこに住めるという。しかし、どうやって自立した生活を送ることができるというのだろうか、ロシア社会では親からの支援も収入に含まれた計算をされているというのだろうか、文句ばかり言っても始まらないけれども、経済的に苦労する人が多い社会であることには間違いないと思う—それは社会主義の理想とかけ離れていないか?いや社会主義体制は崩壊したんだ。


地下鉄の入り口では、金属探知機とX検査機を持った警備員が常駐していて、エスカレーターを下りたところではモニターを監視する係が常駐している、そしてプラットフォームにも複数の警備員が巡回している。不思議なことに、これは抑圧のメッセージではないかと思う。このようなメッセージは政府や行政によって国民に発せられた抑圧された市民であることを意識させるためのメタメッセージであって、日々地下鉄を利用することによって、このメッセージが強化されていくようだ。このようにして社会を統制していこうする欲望は、社会主義時代の名残なのかもしれない。

雪化粧のスターリン

ロシアに来るのは10年ぶりだった。10年前には、モスクワでレーニンを捜す作品を作った。ロシアは僕の知っている世界とは何もかもが違う、それは思考を要求するし、僕はそのためにモスクワに来たのかもしれないと思った。

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