見出し画像

AIの続きを書くには

画像1

Photography by Josef Polleross

しばらくルーマニアの首都ブカレストに滞在していた。これでブカレストに滞在したのは3回目、クルジュナポカに一回なので合計ルーマニアには4回訪問したことになった。今回の目的は、ブカレストビエンナーレに参加するためだが、なんと数日前に現地に行って、そこから作品を超タイトスケールでなんとか作った。そもそも今回のビエンナーレで新作を作ったのは僕だけだったようだ。

10年前に訪問したブカレストの街並みを覚えているかと思いきや、全然忘れていて、何もノスタルジックな感じに浸ることはなかった。これはこれでいいのかもしれない、というのは作品制作で忙しかったので、他の暇はほぼなかったからだ。ブカレストの日中の気温は30度を超えていて、蒸し暑く日本の初夏を思い出すような気候だったけれど、どこもエアコンなんていうものはなかった。

今回、社会主義時代に独裁者が工場訪問するとき、大勢の労働者による社会主義の実現を祝い拍手喝采する様子からインスパイアされ、社会主義体制が倒れ、独裁者が消えた今、資本主義社会にいる僕らは「商品」を拍手喝采すべきではないかという発想で作られた映像作品「商品を拍手喝采する, 2022」を制作した。これは許可申請やその他の調整にとても時間のかかる制作だったけれども、なんとかうまく行ったのではないかと思うので、いずれの機会には日本でも展示できるといいのではないかと思う。もしくはこの続編を日本で制作するという手もある。

画像2

ブカレストビエンナーレのオープニングは2日間にわたって行われた。初日朝のプレスカンファレンスでは、スティーブ・ジョブス風の格好をしてステージに上がり今回のビエンナーレを紹介。そう、今回実はAI(人工知能)によるキュレーションだということを売りにしている、実際のところまだまだこれが僕はうまく行っていないと思うが、いくらかニュースになったらしい。今回AIが選んだテーマは、「ポップカルチャーに対する挑戦」ということらしい。つまるところ、AIによる展覧会コンセプトの構成、アーティストの選定くらいはできるかもしれないが、実際のところ展覧会というのは、さらにキュレーターとアーティストが協働して新作を作ったり、さまざまな要素が絡み合って出来上がるものだが、これはいずれかの将来にできることになるのかもしれない。され、僕らはこれから何を学ぼうというのか。

画像3

いや、AIはもちろん完全体ではないし、完全なAIなんていうものは存在しないのかもしれない。僕らはこれらのことから何が学べるのかということがそもそも重要で、僕個人はAIによるキュレーションがどういうテーマを選ぼうともあまりそれ自体には関心がなかった。この先、美術館の展覧会でAIキュレーターというが出現するかもしれないし、AIアーティストだって出現するかもしれない。もしくはAI観客なんていうのもあるかもしれない。すくなくとも、彼らが人類で「代替」ではない以上は、僕らはそこから率先して学ぼうとすべきだろうか。何かを創造しようとする時、創造の源になるものはどこにあるだろうか、それは知識や知恵やデータ以上のものか?

画像4

ブカレストの路上で出会った男性。生涯恋人がいなくて、ぬいぐるみだけが家族だという。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?