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『学習する学校 子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する』第6章生産的な会話【290】

 この章では、学校が変化するために必要な一人ひとりの考え方や行動に最も影響があると言っても過言ではない「生産的な会話」に必要なことが書かれています。

一人ひとりが話す機会

 1週間の初めと終わり、授業の最初など、節目のタイミングを利用して、チェックイン・チェックアウトという活動を行います。

 そこでは、どの人もグループ全体に向けて話す機会をもつことができます。もちろん、パスをすることができるので、話すかどうかの選択肢も残されています。
 教員から話し始め、一人ずつの話に集中して聞いていきます。このときに、安心して話せる状況であるかに注意を払う必要があります。
 また、チェックアウトの際には、学んだ内容に関して考えたことや、次にどのような学びにつなげていきたいかといったことなどを話す機会すると良いと書かれています。

オープニング・デー

 子どもたちが安全だと感じる空間を作り出すためには、会話がオープンにできるかどうかが重要になってきます。オープンに話すということは、取り扱いにくい話題にも触れることがあります。そういった話題でもみんなで話し合えるように、一人ひとりの声が平等に価値があるということを、子どもたちに伝えていく必要があります。

会話の枠組み

 子どもたちの生産的な会話を生み出すために必要な枠組みについて示されていました。簡単に紹介いたします。それは、「他の人の話に耳を傾ける」「沈黙を尊重する(反応するまでの空白の時間も必要)」「人の話は遮らない」「人の話を評価しない」「でもと言って否定しない」といったことです。

保護者面談を構成し直す

 保護者と教員のつながりについて、情報を効果的に共有できる仕組みづくりが重要だと書かれています。子どもに接している時間が長いのは、教員と保護者なので双方の理解が進んでいないと子どもが混乱する可能性があります。

 保護者との関わりに際にも、5つのディシプリンを使ったアプローチをする方法が提唱されています。子どもがもつ願望について現状を確認し、クラスのことや家庭環境について考えている前提を表に出し合います。そして、それぞれがもつ目標について話し、子どもの生活全体に目を向けながらお互いを理解することを心がける必要があります。

 この時に重要なのは、自分が見えている部分だけで評価するのではなく、状況全体をコントロールしている人はいないという前提のもとで、教員・保護者・子どものそれぞれが知っていることや考えていることをお互いに知ることが目的であるということです。

 保護者と教員が子どもについての理解をする際に役立つ双方の質問(「子どもの好きな遊びや嬉しそうにするのはどんな時ですか?(家庭)」「子どもは学校の外でどんな人と交流していますか?(家庭)」「子どもが自由時間でどんなことをしていますか?(学校)」など)も紹介されているので、本書を参考にしていただけたらと思います。

子どもが振り返る機会を

 子どもが自分の経験を振り返り、自分の意見を他人に伝える方法を学ぶ機会を設定する必要があります。その例として、「タイムカプセル」として後輩のためにアドバイスを考えることで、個人的な見解から広げることができます。その時に使える子どもたちへの質問(「新しい学年でどんなことが起きると思っていた?」「学年がはじまる前に誰かが教えてくれたらよかったと思うものは?」「他の人の考えにオープンになれたか?」など)も紹介されています。

教室全体でも振り返りを

 子どもが振り返りを促すには、教員自身もメタ認知的な振り返りができる必要があります。日誌なども活用することができれば、子どもたちの学びや成長を理解するのに役立つものになると書かれていました。
 最後に、「批判的内省をする教員」の例が紹介されています。物事の見方には複数あることを前提として、「自分のレンズ、生徒のレンズ、同僚の受け止め方のレンズ、理論的文献のレンズ」を通して見ることの重要性が指摘されています。こういった考えも参考にされると、教員としての視野も広がるのではないでしょうか。

<参考文献>
・ピーター・M・センゲ他著、リヒテルズ直子訳『学習する学校 子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する』(英治出版、2014)

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