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SMよ、人生をひっくり返してくれ

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他人に怒れない私が「怒りの練習」のために、SMバーでS嬢としてデビューする体験ルポです。子ども時代に虐待をうけた後遺症の克服にもなればと、身体を張って実験中!
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#SM

SMよ、人生をひっくり返してくれ㉒ それじゃ悪いSになっちゃう(前編)

虐待の経験から「人への怒り方」を見失ったオトナが、SMというシステムの中で「怒りのぶつけ方」を探すという試み。 前回のレポートから、だいぶ時間が経ってしまった。 なんでそうなったのか、現時点では自分でもはっきりとはわかっていない。考えるのが怖かったのかもしれない。だからここで書きながら見つけたい。 店長貸し切り、ガチンコ6時間「お悩み相談」 キッカケは、昨年夏に行った広島のSMクラブ「Z(仮名)」だ。SM歴の長い店長を貸し切れる「お悩み相談」コースを予約し、昼の1時ごろ

SMよ、人生をひっくり返してくれ㉑ この子を解放してあげたいと思った(後編)

Mは、鞭の当たり方でSの気持ちを読む ほんのちょっとのつもりで飲んだ広島のSMバー「Club Mazan(マザン)」で、男性のお尻連続斬りをすることになった私。 一仕事やり終えたような気持ちになり、席に戻るとすっかり顔を真っ赤にした先輩が「お疲れさま」と迎えてくれた。 「私・・・大丈夫だったですかね?」 「え、いい感じだったよ」 「どのへんがですか?」 採点を求める生徒のように、ちょっぴり先輩を質問攻めにしてしまった。 そのやりとりを見ていた誰かが 「Mってね、Sの顔を見

SMよ、人生をひっくり返してくれ⑳ この子を解放してあげたいと思った(前編)

広島の夜は長い。そして、何が起きるかわからない。 ほんの1、2杯お酒を飲んで帰る予定だったSMバーで、今、私は鞭を持ち、お客さんに囲まれている。 時間にして10時ごろだったろうか。私が来店したときよりも明らかに人数が増えた。「Club Mazan(マザン)」のお客さんは横のつながりもあるらしく、ちょくちょくスマホをチェックしては「〇〇くん、これから来るってさ~」などオーナーに報告している。十数席のカウンターには老若男女、ファッションもばらばらでいろんな素性と思しき人達がひし

SMよ、人生をひっくり返してくれ①「人に怒れない病」を克服したい

こんなに迷うことが、今まであっただろうか。 でも、いつかは実行しなくてはならない。そうじゃないと、きっといつまでも弱虫のままだ。人生で残してある大きな宿題のうちの一つ。あなたにはありますか、そういうの?  私のはね・・・笑わないでほしいんですけど・・・ SMデビューすることなんです。 いや、女王様とかヒエラルキーのすごい上みたいんじゃなくていい。でも、Sだ。サディスティックだ。丸の内じゃなく東京でもなく、今住んでるのは愛媛だけど。もっといえば、スナックでさえあるかわから

SMよ、人生をひっくり返してくれ② 母のようになりたくなかった

前回の記事を読んだ人から、「怒りの発散をしたいなら、SMではなくスポーツに没頭するとか心理療法でもよいのでは?」というコメントを複数いただいた。ご心配ありがとう。でも、それではやっぱりダメなのだ。 私の場合、人と人との関係性の中で「いたぶる側に回る」ということが、とても重要な意味を持っているのだ。 私が怒れなくなった原因の一つに、昔の母の姿がある。 ある時期から、人に文句を言ったり声を荒げようとすると、ヒステリックに怒鳴り散らしていた昔の母の姿が重なるようになった。そして、

SMよ、人生をひっくり返してくれ③ 女王様に相談だ

人に、怒りをぶつける練習がしたい。 そして、怒りのストッパーとなっている「昔の母の姿」と、それを嫌う「今の自分」を統合させるために、人をいたぶる側に回ってみたい。暴走しないように安全な方法で。 それが実現できるのは、SMのお店しかないのではないか? だが、自分が女王様になるというイメージは持てない。はて、どうしたものか。やはり餅は餅屋ということで、その道のプロに聞くのが早い。私は藁にもすがるような思いで、知り合いの女王様・TさんにLINEを送った。 半年ぶりくらいの突然

SMよ、人生をひっくり返してくれ④ SMバーを探す

あと数日で、世界が変わってしまうかもしれない。 SMバーデビューが、今週末に決まったのだ。 4月下旬、東京都内に1週間ほど出張する予定があるので、そこで何軒か試してみようと考えていた。実は、そのタイミングでT女王様が「私のお店でなんか企画しましょうか?」と言ってくれていたのだが、ここしばらく連絡が取れなくなってしまったのだ。当初は、T様のお膳立てで事が運べば安心だなんて甘えていたけれど、「虐待の後遺症克服」とも言える人生の賭けなのだから、T様の好意とは別に、自分の足で歩くの

SMよ、人生をひっくり返してくれ⑤ ”同業者”Aちゃんをアサイン

はじめてのSMバーに一緒に行ってくれそうな相手として、思い浮かんだのは、10年以上前に同じ会社で働いていたAちゃんだった。 我々は広告系の企業に勤めていたのだが、現在Aちゃんは別業種に転職をしてスタートアップ企業の後方支援のような仕事をしている。考え方も柔軟な今どきの働きマンだ。ちなみに私より年上だけど、淡くて可憐な花柄のブラウスがしっくり馴染むようなかわいらしさがあって、ほんわりとした話し方をする。 Aちゃんなら、私に今SMが必要な理由をわかってくれるかもしれない。 い

SMよ、人生をひっくり返してくれ⑥ ミルキーウェイで逢いましょう

どうやって入ればいいのか? ついに、SMバーの扉を開く日がやってきた。 夜8時、コロナ騒ぎなどなかったかのように賑わう五反田の繁華街を、友人Aちゃんと人を避けながらキョロキョロと周囲を見回しつつ歩く。目指すは「ミルキーウェイ」というお店。なんともロマンティックな名前だが、天の川ではなく三途の川だったらどうしよう。緊張のあまり、腹ごしらえに食べた長崎ちゃんぽんを少し残してしまった。 場所が非公開だったため、メールで住所を聞いていた。「わかりづらい場所なので、近くまでいらっし

SMよ、人生をひっくり返してくれ⑦ 飴と鞭

スリッパの代わりに 私がプレイの相手として最初に選んだのは、体が頑丈そうなジャイアンのほうだった。 「どんなことをしてみたいですか?」と、ジャイアンが質問してリードしてくれる。 「スリッパで、頭を思い切りはたきたかったんですけどねー。あ、持ってくるの忘れちゃった」 「んー、ここにはなさそうですねぇ」 と、二人して部屋の中を見回していたところ 「手始めにコレはどうですか?」 とスタッフのヒデさんが持ってきてくれたのは、黒い革製の羽子板のような形の鞭だった。尖っていない丸い鋲が

SMよ、人生をひっくり返してくれ⑧ 穢れてなんか、いなかった

リクエストがないとやりづらい S嬢デビューとして幸運だったのは、偶然にも対照的なタイプの二人のM男さんを試せたことかもしれない。 ジャイアンは「ここをいたぶられるとうれしい」というツボが明確で、質問すれば殴ってほしい部位などのリクエストをくれる。右も左もわからない初心者Sとしては、的が定まるのでやりやすかった。自己紹介で「わがままなM」と名乗っていたのも頷ける。そして、苦痛を自分の中で快感に変換できる、自家発電型のようだった。 一方で、吉村氏は「相手の喜びがすべて」という

SMよ、人生をひっくり返してくれ⑨ 女王様の巣窟へ

技術習得のために女主人を尋ねる 都内にいるうちに、SMバーをもう一軒ぐらい試しておきたい。 五反田の「ミルキーウェイ」ではアットホームで充実した時間を過ごすことができたが(下の記事参照)、その価値は比較によってこそ一層浮き立つものだ。ならば全く毛色の違うお店にしてみよう。 そう考えて選んだのが、池袋にある「Mistress bar Guernica(ミストレス バー ゲルニカ)」だ。 Mistressとは女主人や女性支配者の意味で、 Guernicaといえばピカソが描い

SMよ、人生をひっくり返してくれ⑩ 私が女王様になった理由

「怒れない私」を克服するためのSMバーデビュー。2軒目「Mistress bar Guernica」の続き。 SMショーに魅せられて 蜜さんは、どうしてお店の女王様になろうと思ったのだろう。やはり誰かをいたぶりたいという欲求があったのだろうか。 「いえいえ、自分のことはずっとMだと思っていたんですよ」 聞けば、長いことお店のお客さんとして通っていたそうで、お店のSMショーなどを見るうちに「あんな風にかっこよく鞭をさばいてみたい」と思うようになったそうだ。そして実際にや

SMよ、人生をひっくり返してくれ⑪ 女王様の鞭コレクション

名入れ鞭の価値 「鞭、いろいろあるんで、気に入ったのがあったら使ってみてくださいね~」 小柄で栗色のワンレンボブが印象的なユリカ様は、はきはきとわかりやすく話す。手慣れた幼稚園の先生のようだった。まるで「はーい、おもちゃはいっぱいあるから、好きなので遊んでね」とでも園児に号令をかけるような。 でも、きつめのメイクと、大きな胸を強調した大胆なカットのラバーボンテ―ジが、すごい威圧感・・・。やさしいのか怖いのかよくわからない。このミステリアスさが、Mの人たちを翻弄するのだろうか