マガジンのカバー画像

アメジストの魚。

20
アメジストの魚のまとめです。 宜しければプロローグからどうぞ。
運営しているクリエイター

#夢

アメジストの魚。6-2

アメジストの魚。6-2

―恋は盲目。―
茅尋は私が思っているよりもあっさりとその言葉を肯定した。自分から言った言葉なのに、肯定されたことに対して居場所のない不快感が熱を帯びる。

「ねぇ、茅尋。」

駄目、君だけは。
もう狡い私を捉えてしまったんだから、君だけはちゃんと私を見て。視て。お願い。

「一緒に、」
「嫌だよ。」
茅尋が言葉を遮る。
寄せては返す波の音が僅かな沈黙を作った。

「…まだ何も言ってないじゃん。」

もっとみる
アメジストの魚1-3

アメジストの魚1-3

懐かしい夢を見た。

「この歌好きなんだ。」 と彼女はイヤホンの片方を僕の右耳に挿した。聴こえてきたのは当時流行っていた曲で、曲名は何だったろう…、思い出せない。

「…さっきは、その、ありがとう。」
曲が終わったタイミングでやっとの思いで感謝の言葉の声を出す。

「いいよいいよ、それにしても間一髪だったね。あと少しで轢かれちゃってたよ?」
彼女はそう言ってクスッと笑う。さっきの切羽詰まった表情は

もっとみる