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アメジストの魚。

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アメジストの魚のまとめです。 宜しければプロローグからどうぞ。
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#雪

アメジストの魚。6-2

アメジストの魚。6-2

―恋は盲目。―
茅尋は私が思っているよりもあっさりとその言葉を肯定した。自分から言った言葉なのに、肯定されたことに対して居場所のない不快感が熱を帯びる。

「ねぇ、茅尋。」

駄目、君だけは。
もう狡い私を捉えてしまったんだから、君だけはちゃんと私を見て。視て。お願い。

「一緒に、」
「嫌だよ。」
茅尋が言葉を遮る。
寄せては返す波の音が僅かな沈黙を作った。

「…まだ何も言ってないじゃん。」

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アメジストの魚2-2

アメジストの魚2-2

幻だと思った。
目の前の光景を現実だなんて思いたくなかった。

「し、の…?」
「久しぶりだね、茅尋。元気にしてた?」
「…は、」
「おーい、聞いてるー…?」
「……」

呼び掛けに応えなければと思うのに言葉が出てこない。
鼓動が早くなっているのが分かる。思考も全く追いついていない。
どうして要がここにいるんだろう。

「ねぇ。」
「あ、えっと…」
「無視されると悲しいんだけど。」
「ご、ごめん」

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