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アメジストの魚。

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アメジストの魚のまとめです。 宜しければプロローグからどうぞ。
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2022年1月の記事一覧

アメジストの魚4-1

アメジストの魚4-1

バレてしまった、それもよりによって茅尋に。

薬もちゃんと飲んだのに何でこのタイミングで発作なんか起こすんだろう、ついてない。本当に。

床に散らばった紫色の"ソレ"だってもう見られてしまったからどうやったって言い逃れは出来ないし。

嫌な沈黙が少し流れて、茅尋が動揺を隠せない様子で私の顔を見た。

「何だよこれ、何も言わなかったじゃないか、こんな事一言も…」
「…。」

何も言えるわけなかった。

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アメジストの魚3-3

アメジストの魚3-3

映画が終盤に差し掛かったと同時に穏やかな時間は終わりを告げる。

「ぅぇ、けほっげほっ…」
さっきの雨に打たれたせいなのか要が咳込み始めて止まらなくなった。

僕は毛布をかけて彼女の背中をさすりながら治まるのを待つしか無かった。それから落ち着くまでに十数分時間を要した。

「大丈夫…?今、水持ってくるから」
要は咳が治まってからも苦しいのか蹲ったまま黙っている。当然ながら返答はない。

新しいマグ

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アメジストの魚3-2

アメジストの魚3-2

「どうしたの、ずぶ濡れだけど…」
「急に雨降ってきちゃって。」

部屋にいて気が付かなったけれど、たしかに外からは雨のサーサーと降る音がする。

「待ってて、今タオル取ってくる」
「ごめんね。」

脱衣所にある収納ボックスからバスタオルを一枚取り出して玄関に戻る。

「はい、これ」
「ありがとう。」

「もし必要なら洗面台の所にドライヤーとタオル置いておいたから使って。それと僕のしかないけど着替え

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アメジストの魚3-1

アメジストの魚3-1

要と再会して3日が経って、僕は熱を出した。
生え変わりの影響で熱が出てしまうことがあるらしいと前にサイトで見た気がする。

頭はぐらぐらして喉は焼けるように痛んで食事もろくにできない。鱗に触れると一枚、また一枚と剥がれて床やシーツにパラパラと落ちた。

(古い鱗ごと心につかえているものが一緒に剥がれ落ちてくれたらいいのにな。)

そんな事を思いながら僕はそれを拾ってゴミ箱に放り捨てた。

体調もあ

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