アメジストの魚3-2
「どうしたの、ずぶ濡れだけど…」
「急に雨降ってきちゃって。」
部屋にいて気が付かなったけれど、たしかに外からは雨のサーサーと降る音がする。
「待ってて、今タオル取ってくる」
「ごめんね。」
脱衣所にある収納ボックスからバスタオルを一枚取り出して玄関に戻る。
「はい、これ」
「ありがとう。」
「もし必要なら洗面台の所にドライヤーとタオル置いておいたから使って。それと僕のしかないけど着替えもあると思うからそれも自由に着て」
「何から何までごめんね、ありがとう。」
要はタオルで頭や顔を拭きながら脱衣所に入っていく。僕はコンビニの袋をリビングに持って行ってから牛乳を鍋に入れて温める。
しばらくしてラフな格好になった要が中に入ってくる。サイズは問題なさそうだ。
「ありがとう。」
「どういたしまして。ホットミルク作ったけど飲む?」
「飲む。」
マグカップに注いでテーブルに置き、要をソファに促して自分も座る。
「そういえば、あの袋何が入ってるの?」
「ゼリーとかポカリとか。あとお菓子も。」
「わざわざ買ってきてくれたんだ、助かるよ。ありがとう」
「ん。」
小さく頷きながらホットミルクを口に運ぶ。
要なりの優しさに感謝しつつ、待ちながら選んでおいたDVDをセットして再生ボタンを押すと少し懐かしい映画の予告が始まった。
「ねぇ、茅尋は私がいない間何してたの?」
要は予告を見ながら言う。
「何もしてないよ、仕事して病院通ってって感じ」
「写真は?撮ってないの?」
「撮ってるよ」
「これ見終わったら久しぶりに一緒に見ようよ。」
「考えとく」
「えー、ケチ〜。」
「冗談」
こんな他愛のないやり取りが昔に戻ったかのようで、懐かしくて。
彼女が笑っているからこのままこの時間が続けばいいと思った。