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吉村トチオ
2020年7月17日 23:28
早見青児は成績が優秀な子供ではなかった。教育熱心な両親は彼に高度な教育を施し、TVや漫画など一切の娯楽を排したのに関わらず、彼の成績は平均を上回ることはなかった。ある日、彼は友人の家へ遊びにいき、そこで初めて漫画を読んだ。彼はある漫画に熱中し、約束の帰宅時間を過ぎても読むことをやめなかった。彼を夢中にさせたのは永井豪の漫画だった。彼の母親が迎えにきて、禁じられていた漫画を読んだことがバレ
2020年5月2日 17:19
彼がサナギになって、もう3日が経つ。調べてみると、アゲハ蝶はサナギになってから10日間から14日間で蝶になるらしいから、まだまだサナギの状態は続きそうだ。 彼と出会ったのは職場の図書館だった。彼は、閲覧者用の長机に数十冊の本を山積みにして、熱心にノートをとっていた。見た目はまだ10代かとも思えるほど幼かったけど、学生ではないようだった。平日でも開館から閉館まで、ずっといるのだ。彼は異質な
2020年3月28日 20:47
その日は、朝から嫌な予感がしていた。 さわやかな朝ではあった。太陽は庭の芝生に適度な陽光をあびせ、風は強くもなく弱くもない力加減でウォーキング中の老人たちに対しての快適なサービスをわきまえていた。そして、聞こえてくるのは子供たちが庭ではしゃいでいる声。まったくこの上なくさわやかな朝ではないか? ただし、小さな子供たちと一緒に遊んでいるのは、わが最愛の妻ではなく、ペンギンだった。 夢かと