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朝井リョウ「正欲」一言感想文

何故ある種の「下ネタ」に嫌悪を感じるのか、わかったような気がする。その言動自体というよりは、それをあたかも普遍的な感覚として疑いもしないその態度に嫌悪を感じているのだと思う。欲求というどう考えても個別のものを一律のものに十把一絡げにする乱暴さに嫌悪を感じているのだ。この本を読んでいる人といない人では、性の話をする土俵が違う。個々人に形成された「正欲」にどう応ずるか。我々が対話を通じて深めるべきテーマである。この物語ではその対話がとても印象的に行われている。それは言葉に限らない。時に身体的な動きであったり、周囲の変化であったりもする。それを我々は受けとめられるのか。一方で、このような「正しさ」は、芸術にとっても大きな課題である。個々が持つ「感動」や「心地良さ」なんて違うけれども、時にそこに「正しさ」が鎮座している。だから、芸術家にもまた、対話が求められているのだ。

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