バガテルを聴く
ベートーベンのバガテルを聴いている。
バガテル(Bagatelle)は、クラシック音楽でピアノのための性格的小品(キャラクターピース)の一つ。バガテルとは、「ちょっとしたもの」「つまらないもの」という意味で、転じて軽やかな内容の小品を示す[1]。
名称からして、大曲の作曲過程でこぼれ落ちた楽想や、ふとした思いつきで手すさびとして書かれたものという意味合いが強い。しかし、作曲家自身が捨て去るには忍びず、曲として残したものとすれば、それなりの味わいもあるし、バガテルという命名に多少なりとも韜晦(とうかい)が感じられるという点で、一般的な楽曲とは多少異なった位置づけを持つものが多い。定まった形式は認められず、曲の長さも3分程度のまとまったものから断片的な短いものまで多様である。
あの「エリーゼのために」も、バガテルに数えられるらしい。
様々な芸術作品において、習作と呼べるものや、小品と呼べるようなものがあるが、ちょっとした作品の味わいは、独特の魅力を発する。
それは決して技巧的に簡単だとか、構成が安易というわけではない。仰々しいレッテルやジャンルから解き放たれて、自由な印象を与える。
ベートーベンのバガテルを聴いていると、まるでジャズミュージシャンの演奏を聴いているように、自由で、多彩だ。それは、目の前でベートーベン本人が軽やかに遊んでいるようだ。
遊び心にあふれ、必ずしも予定調和に持っていかない。激しく乱れているかと思えば、ロマンティックに歌われたり。静かにつぶやかれたと思えば、舞踊的であったり。わかりやすいメロディが多いのかと思ったら、技巧的な要素が詰め込まれているものもある。
多くの演奏を聴いたわけではないが、演奏者によって演奏が大きく変わるのじゃないかと思う。どのように味付けをするのか楽しめるのも、バガテルの魅力じゃないだろうか。
ご紹介するのは、ベートーベン晩年の作品から。
6つのバガテルよりNo.4 Presto、No.5 Quasi allegretto、No.6 Presto
演奏は、干野宜大(ほしのたかひろ)さん。
テクニカルさを感じさせない、気持ちのいい演奏です。
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