【楽曲解説】Suite for Xylophone Trio No.2
第二組曲の第一曲は、第一組曲の後すぐに作ったような気がする。かれこれそれから約一年が経っているので、思い出せない。第一組曲の第六曲の流れで、そのまま作ったのだったような気がする。
まず考えたのは、調性。第一組曲はハ長調だったので、第二組曲はヘ長調あたりにしようかとも考えたけれど、結局はハ長調にした。作風からして、基本的に調性はそれほど意味がないような気がしていた。叩き方に影響は与えるし、特にスケールの感覚は大分違うけれども、かといって臨時記号を基本的には使わない方針だから、結局そんなに変わらないような気もしていた。また、仮に黒鍵がなくともできるような曲をもう少し生み出しておきたかったこともあり、結局は第二組曲もハ長調で作った。
【第一曲】
第一曲は、コンガとのコンビネーション。難易度は低く、わかりやすいメロディの曲にしたかった。コンガとスネアドラムによる単純なリズムで、心地よいグルーブを作り出していると思う。十四小節目のアウフタクトからの十六分音符がやや刺激的だけれども、全体的に穏やかな空気で進行する。もう、これ以上語ることはない。それくらいに、シンプルな曲。他の曲と比べると圧倒的に文章量が少なくてなんだか申し訳ないけれども、それだけ素直ないい曲だということで。
【第二曲】
第二曲に取り掛かったのはその一年後。明らかに第一曲とは気合の入り方が違い、余裕を微塵も感じさせないフラストレーションの塊のような一曲になってしまった。そもそもティンバレスとのコンビネーションというのはどうなのか。持っている団体はどれほどあるのか。作曲者としては、コンガやトムで代用していていただいて全く問題ない。エネルギッシュな曲になったので、ティンバレスくらいの攻撃力があったほうがいいとは思うけれど、こだわりはない。ティンバレスは、ラテン楽器の中でも持て余す楽器第一位ではないかと思っているのだけれど、大きな音が出せる割には、効果的に用いるのはとても難しい。今一つかっこよく鳴らなかったりする。ただ、スティックコントロールはしやすい楽器だとは思うので、アンサンブル楽器としてはわるくないんじゃないかと思っている。それもあって、全体的にラテンのリズムを意識している。六小節目までがエネルギッシュなイントロになっているけれども、実はここだけ一端作って、しばらく時間があいていた。だから、ここだけ異常に力が入っている。七小節目からは四拍子のグルーブを出しながら、弱音の音色を楽しみたい部分。前半はユニゾンだけれども、十三小節目からは意図的にずらされている。こういう部分が好きだったりする。十八小節目のアウフタクトから三者三様のメロディが奏でられるけれども、それがかみ合うように作られている。演奏者のバランスによって仕上がりが変わってくる場面だと思う。二十三小節目からは明らかなユニゾン。ここでは、全体の主題であるリズムを用いて、とてもシンプルな作りになっている。木琴で和音を変えていくことも考えたけれども、ここはリズムに集中してほしかったので、あえてそのままに。ここは打楽器としての側面を重視した。二十九小節目のアウフタクトは、蛇足だったような気もする。ここがあるだけで、難易度が上がってしまう。この部分がなくても、曲としては成り立つ。無かった方がすっきりしていたかもしれない。でも、まあ、いいか、と思っている。
【第三曲】
第三曲は、トライアングルとのコンビネーション。これは結構な問題作。フーガを作ってみたいなあと思っていたので、作ってみた。リズム楽器でのフーガは結構難しく、特に音色が異なると同じリズムだとは意識することが困難なので、結果的にフーガとは認識できない。最初にリズムを作り、組み合わせる中でリズムを調整したのだけれど、電子音で確かめるのには限界があった。特にトライアングルのニュアンスが難しく、たぶん、実際に演奏する場合には表現の工夫はできると思う。トライアングルは魅力的な楽器で、音色表現の宝庫である。シンバルに比べると、細やかな表現がしやすい。適度なミュートや、叩く場所を変えることによって、いかようにも表現を変えることができる。トライアングルから始まるので、トライアングルに焦点を当てたバランスで作るのもいいと思う。木琴は何だか聴音の練習のような感じになってしまった気もするけれども、まあ、あまりひねらず、これはこれでいいかな、と。十一小節目からはユニゾンになる。ここで答え合わせのようにピシッと合わせると、前半とのギャップでおもしろいんじゃないかとは思うけれども、あえて音量の変更はしていない。ただ、トライアングルでほんの少し音を変えている。木琴とスネアドラムにしても、前半と全く同じ演奏というよりは、ユニゾンだからこそのバランスや表現ができるといいと思う。この曲は作曲者の中でも明確に「これが正解だ」という表現があるというよりは、演奏者の方にうまいこと工夫してもらうと、なんとかおもしろい感じになるんじゃないかと思っている。そもそもどんな曲でもそんな側面はあるけれども、特に演奏者への丸投げ感が強い一曲。
【第四曲】
第四曲はクラベスとのコンビネーション。どうもクラベスを入れるとラテン系にしてしまう。クラベスが思いっきりシンプルになってしまったが、僕はこの四分音符の感じが好きなのだ。カウベルでこんなリズムを叩くのも好きで、シンプルかつ結構難しい。四分音符、それもラテンのグルーブの中での四分音符の職人技は、楽器編成を問わず重要な要素である。最初のスネアドラムのリズムパターンも使いがち。これも叩いていて好きなリズム。ロールを入れると、とたんにグルーブが変わる。アクセントをどこに持ってくるか、ロールの長さや音形をどうするかで変化する。九小節目からは、木琴もリズムパターンに。木琴でリズムを刻むのも、僕のクセの一つ。十七小節目からは、スネアドラムにガンガン行ってほしいところ。スネアドラムは、意外にいつもフラストレーションが高まっている。大編成になればなるほど、非常に気をつかいながら演奏している。たまにはガンガン鳴らしてほしい。二十七小節目からは再現部。シンプルなラテンのリズムで進めていただければと思う。聴き終えてちょっと物足りないくらいが、ちょうどいい。
【第五曲】
第五曲はコンガとのコンビネーション。組曲内では楽器を全部変えるつもりが、うっかり被ってしまった。まあ、いいか。三拍子の曲、しかも弱音でゆったりとしたテンポという設定を決めて制作。もう少しグルーブを出したものにしようかと思ったけれども、当初より少しずつ音を減らしてシンプルに。音数が少ない状態で拍節感を出す曲として設定。適度な掛け合いをはさみながら、八小節目のアウフタクトからはアクセント部分。このスネアドラムは、難易度が高い。僕だったら、あまりやりたくない。その後は割合メロディックにリズムが続く。十六行目からはユニゾンにアクセント、フォルテッシモの主題に。弱音というコンセプトはどこかに行った。とてもわかりやすい掛け合いが続く。二十五小節目から弱音になり、静かな緊張感のまま終わる。この時はまだ、終曲まで静かに終わるとは思っていなかった。
【第六曲】
第六曲はライドシンバルとのコンビネーション。ここにきてやってきた、ミニマルミュージック。そもそもミニマルな表現が大好きなのだが、あまり使わないできた。そして、終曲はテンション高めでイケイケの曲にしようと思っていたのに、気がついたらミニマルになっていた。不思議。自分の中のミニマルが溢れてしまった。結果、自分好みの曲になってしまった。三小節目からスネアドラムが入り、一気にグルービーに。スネアドラムとライドシンバルを合わせているのだから、そりゃそうだ。それぞれリズムパターンを変えながら、進行していく。多分それだけでおもしろい響きになるはず。これぞ、ミニマルのおもしろさ。九小節目からは特にビート感強めに設定。十五小節目でリズム的にやや抑制があり、十七小節目で弱音に。二十一小節目では思い切ってスネアドラムを削る。大編成の曲で、最後の盛り上がりで出番のない中で突っ立っていることを経験されている打楽器奏者の皆さまであれば、最後に音がないのなんて平気だろう。三小節だけなんで。ごめんね。
【第二組曲 再生リスト】
【第一組曲 再生リスト】
【第一組曲 出版楽譜】
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