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月の満ち欠け【読書のきろく】


自分が生まれ変わりの当事者になりたいか、考えさせてくれた物語

おもしろそうな本の紹介に出会いました。
作家にメールでインタビューをするそのやり取りが、そのまま本になっている。そこであぶり出されているのは、作家が小説を書く裏側。

すごく気になります。だけど、せっかくなら作品を読んでからの方がしっかり楽しめそう。ということで、佐藤正午さんの作品、初体験です。

物語のテーマは「生まれ変わり」。
生まれ変わりを望む者と、それに巻き込まれた人たちが登場します。最初は状況が読めません。少しずつ明らかになる生まれ変わりの理由と想い。30年以上に渡って出会いと別れが交錯するので、相関図を書きながらだとスッキリできそうだなと思いつつ、頭の中で人と人とを繋げながら読みました。

読みながら、考えました。
僕自身が、誰かの生まれ変わりだとしたら?
約束の人には会えるんだろうか?
そもそも、前世の心残りを解消することを背負った命は、幸せなのか?
どこが始まりで、どこで終わりを迎えるのか?

生まれ変わりは、あっても不思議じゃないと思います。でも、今世で出会ったご縁よりも前世のことが優先されてしまうのは、なんか寂しい。目に見えない何者かに、バカにされてるような気もする。

そんなことをどっぷり考えさせてくれるくらい、その世界に引き込んでくれました。小説であることを忘れさせてくれたような感覚です。書くテクニッを主張せずに、一歩引いて物語の世界を支えているような印象を受けました。言葉選びや情景描写が、すっと入ってくるのです。
小説を読んでいると、洒落た表現を分かる言葉に変換しながら進むことがあるけど、この作品ではそんな苦労がなかったのが印象的でした。
絵画のような描写が美しかった『車輪の下』を読んだ直後だったから、余計にそう感じるのかもしれません。

佐藤正午さんの他の作品も、読みたくなりました。

・・・追記。
文庫本は、「岩波文庫的」です。なぜ「的」なのか分かりません。
おふざけな作品なのかな?とも思いましたが、おふざけ要素はまったくありませんでした。

読書のきろく 2021年24冊目
「月の満ち欠け」
#佐藤正午
#岩波文庫 的(?)

#読書のきろく2021 #小説

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