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教科書に載ってたお話を思い出した

「小学校か中学校のときに教科書に載ってたお話を思い出しました!」

ショートショートを読んでもらった人から、こんな感想が届きました。読んでもらったのはこれです。

「教科書に載ってたお話」は、『一切れのパン』という物語だそうです。気になって調べてみると、ルーマニアの作家が書いた短編の物語。1958年に出版された短編集に収録されているようです。

短編集は見つけることができませんでしたが、『一切れのパン』が収録されているルーマニア短編集を図書館で発見。概要はネットで確認していたけど、物語をちゃんと読んでみると、なるほど納得でした。

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『一切れのパン』の舞台は、第二次世界大戦中のルーマニア。戦争の影響で敵国の捕虜になってしまった主人公が、護送車から脱走を試みます。その際、主人公がやさしいことばをかけたラビ(ユダヤ人の僧侶)が、お礼として小さいハンカチの包みを差し出しました。

「この中には、パンが一切れはいっています。何かのお役に立つでしょう」
私は、感謝しながら包みを受け取ったが、ラビはまだ車輌の開いた口から去ろうとしない。
『まだ何かいうことがあるのかな?』と私は思った。
「あなたにひとつだけ忠告しておきましょう。そのパンは、すぐに食べずにできるだけ長く保存するようになさい。パンを一切れ持っていると思うと、ずっと我慢強くなるもんです。まだこの先、あなたはどこで食物にありつけるかわからないんだから。そして、ハンカチに包んだまま持っていなさい。そのほうが食べようという誘惑にかられなくてすむ。私も今までそうやってもってきたのです」

>ルーマニア短編集『珍しい毛皮』 p.179~180より
(一切れのパン)

主人公は、僧侶の教えを守り、ハンカチに包んだままの一切れのパンを大事に持って、家を目指して逃げ続けます。何度も、危険な目に遭い、空腹で我慢の限界を迎えようとするけれど、その度に僧侶の言葉を思い出します。ポケットの中で握りしめて、歩き続けるのです。

数々の苦難を乗り越え、ようやく妻の待つ家にたどり着いた主人公。崩れ落ちるように長椅子に横になり、妻に伝えます。

「これがぼくを救ったんだよ・・・・」
「まあ、そのきたならしいハンカチが?何がその中に入っているの」
「パン一切れさ」
突然、部屋全体が私といっしょにくるくると回転しはじめた。ハンカチからぽろりと床に落ちた一片の木切れ以外には、もうなんにも私の目にはいらなかった。

>ルーマニア短編集『珍しい毛皮』 p.188より
(一切れのパン)

信じる力というのか、心のもちようというのか、はたまた信仰心とでもいうのか。何かにすがって力をもらっているつもりでも、実はそれは自分の心の強さだった。
『君に贈る火星の』も、テーマは同じ。

当然、『一切れのパン』の方が、緊迫感があふれていて読み応えがあるし、時代背景も考えさせられます。そんな作品と、根底にあるエッセンスに通じるものがあるなんて。
これも捉え方次第なんでしょうけど、自分が書いたものにちょっと自信が持てました。

これを励みに、またこれからも書き続けます!

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