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食費1日300円生活から​​大逆転のためにした「3つの約束 」

食費は1日300円〜、服はフリマで1着30円。

これ、事業の失敗で17億円の負債を抱えてしまったぼくが、その後の3年間で設定していた生活費です。40歳までは年収7000万円もらっていた、50過ぎのおっさんが、華麗なる縮小です。

ほんとは服も買いたくなかったんですが、食費を抑えれば抑えるほど、体重って増えちゃうんですよ。安価な炭水化物を食べるしかないからどんどん太っちゃって、サイズの大きいものを次々買うしかなくなってしまいました。辛かったですねぇ……(詳しくは「17億円の負債とうつ。どん底にいたときの耐え忍び方」

今回は、こんなどん底生活を過ごしていたぼくが、『モンスト』で再起するまでの取り組み、そしてアイデアの生み出し方についてお話します。

1日食費300円生活から『モンスト』で這い上がる

ぼくがどん底から這い上がれたのは、初期開発に携わった2013年10月リリースのアプリゲーム『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)をヒットさせたからです。

単に、貧乏生活から抜け出したいだけなら、ゲーム以外の道に進むのもよかったかもしれません。ぼくは、「お金の匂いを嗅ぎわける力」にだけは自信がありますから。

でも、絶対にゲームで這い上がりたかった。そのためなら、貧乏もやれる。そこの気持ちだけは一切揺るぎませんでしたね。だって、ゲームで負けた以上はゲームで勝たないと、絶対にイヤなんです。

そんな強い意思で勝ちにいった一手が、『モンスト』でした。そのために、自分に約束したことは大きく3つありました。

 1. 目標はできる限り明確に設定し、対象は絞り込む

まずは目指すべき先を決め、それをできるだけ明確にイメージすること。

「金持ちになるぞ!」みたいなフワッとした目標だと、踏ん張りきれなくなるんですよ。一歩一歩足を前に出そうって気持ちも、揺らいでしまうんです。

だから、「何年何月何日に売上○○円を達成する」というように、できるだけ細かく区切るといいですね。誰しも心が弱いから、そうしないと途中で心が持たないんですよ。逆に、目標を明確にすれば、それに向かって動けるようになります。

ぼくは、マラソンでいう第1グループ、業界の最先端を走ってる集団の最後尾につくことを最初の目標にしました。

というのも、第2グループの先頭ぐらいまでなら、わりと簡単にいけるんですよ。それまで培ってきたノウハウとかが当然ありますから。だからまずは、第1グループの最後尾につけることを目指すぞ、と。

走るコースは、アプリゲームかボードゲーム、どちらかでいこうと思っていました。どちらも自分が好きだったことに加え、マーケットとしてこれから大きくなるのがわかっていたからです。

ただ、走るなら二兎を追うのではなく、一兎に絞る必要があります。

ボードゲームは世界でブレイクし、未来永劫ずーっとお金が入ってくる魅力がありました。ただ、瞬発力に物足りなさがあり、マーケットの伸び方も思ったより遅かった。対して、当時スマホは垂直立ち上げみたいな伸び方をしていたんです。スマホゲームでヒットをつくることに舵を切り、目標として設定しました。

2. 実現のために必要な情報を収集する

目標が明確になったら、次はそれを実現するために必要な情報を収集すること。情報なしで感性だけで勝負とか、がむしゃらにがんばるとかは、違うと思います。

野球にたとえるなら、ルールや打撃理論を理解し、バットをしっかり振れる身体もつくっておく。そうでないとホームラン打てませんよね。それと同じです。長く開発に携わったコンシューマーゲームから、“脳の変換”をする必要もありました。

だからぼくは、第1グループに追いつくために、当時流行していたガラケーの携帯ゲームを片っ端からやりまくりました。コンシューマーゲームと違って携帯料金さえ払ってればいいので、貧乏なぼくにもちょうどよかった(笑)。

そうやって1年、2年とひたすらランキング上位ゲームをやり込んでるうちに、「なぜ、おもしろいか」を体感値として持てたことはもちろん、買い切り型の有料ゲームではなく、基本は無料で遊べて追加課金という、フリーミアム形式のゲームのほうが勝ちを拾いやすいとわかりました。

ちなみに、第1グループと第2グループの差を考える際に、構造として頭に入れておくといいのは、「情報収集に充てられる、時間の差」です。

第2グループで走ってるのは、その日をどうにか過ごすのが精一杯でゼェゼェ言ってる状況なんですね。情報を収集しようにも、短時間しかとれません。最先端の第1グループはどんどん情報収集しながら、余裕で走っているので、差は広がるばかり。

ぼくの場合はメンバーに内緒で、自分のゲーム開発に回すべきリソースをセーブして、情報収集の時間を当てていましたね。

3. 風が吹いていることを読み、それにしっかりと乗る

では第1グループに追いついたあと、いかに先頭を走るのか?

必要となるのは、「時の運」です。これは、自分ではコントロールできません。

ただ、その運がきてるかどうか、いま自分に「風が吹いている」と読めるかどうかは、それまでの取り組みや研究次第で十分可能になります。ぼくの場合は、ガラケーからスマホに代わるという「神風」が吹いてくれました。

ガラケーのゲームは、電話番号のボタンをポチポチ押しながら遊ぶもので、そこのノウハウは完全に第1グループが握っている状況でした。

でも、スマホはタッチパネル。すべてのルールが新しくなるわけで、この風に乗らない手はないわけです。

しかも、ガラケーのゲーム市場はかなり大きくそこで儲かるので、第1グループのライバルたちはスマホにシフトしづらかった。コンシューマーゲームの会社は、「そもそも携帯電話はゲームじゃない」と風に乗ろうとしなかった。そんなライバル不在の状況で、ワーッと巻き起こっていた巨大な風を読めていたぼくは、しっかり乗ることができたわけです。

もう1つ運が良かったのは、ガラケーからスマホゲームに替わる風に『パズル&ドラゴンズ』(以下、『パズドラ』)が、先頭で乗ってくれたこと。追いかけるより、先頭を走るほうが明らかにいろいろ大変です。『モンスト』はそのうしろで、風に乗っていけばよかったので、かなり楽させてもらいました(笑)。

『パズドラ』リリース後に開発を開始した『モンスト』は、開発期間約7ヵ月でリリース。その約1年2ヵ月後、ついに先頭に立つことができたのです。

期間限定のバックパッカーと見立てて、どこかおもしろがる

ここまで『モンスト』のヒットへの道のり、つまり事業的な再起を紹介してきましたが、ぼく個人の精神的再起のために課していたことも紹介させていただきます。

まず「食費300円生活」を、『モンスト』が軌道に乗ったあとも変えずに、トータルで3年間行いました。いまの自分がどういう立場にあるのか。それを自覚し続けるためにとった、追い込みの方法でした。そういう生活を課すことで、闘志を燃やし続けることができたわけです。

「あえて選ぶ、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)。ここから大逆転してやるぞ!」「自分は、ほんとうにがんばらないといけないんだ!」と 。

いつまでこの生活が続くのかわからない不安や怖さも、もちろんありましたよ。でも同時に「いつかは必ずヒットを出せる」と自分を信じていたので、「期間限定のバックパッカー」と自分を見立て、どこかおもしろがっている気持ちもありました。

毎日の生活に課していたのは、3つ。

1つめは、「お金に限らず、時間など含めたすべての『ムダ』を排除する」。2つめは「目的を明確にする」。3つめは、「すべてに期限を決める」

実は、ぼくが学生のころからずっとやっていたことでした。そこに、原点回帰したんです。『モンスト』ヒットのための取り組みと、ぼく自身のありかたに共通するところも多かったですね。

結果、3年で『モンスト』のヒットに辿りつき、名実ともに再起を果たすことができたのです。

「アクションゲームで狩りをする」×「RPGで強くなること」の組み合わせで、新しい企画へ

最後に、『モンスト』が「ゲーム(=企画)としてヒットした理由」について解説してみます。

よく、「優れた企画=全く新しい発想」と捉えている人がいます。「どうすればそんな斬新なアイデアが思いつくんですか?」と聞かれることもありますが、ぼくは発明家のようにゼロから何かを生み出しているわけではないんです。

「いまあるすごく便利なもの」と「いまあるいいなと思ってるもの」をくっつけて、「別の良いもの」をつくろうと提案をしているだけ

 『モンスト』は、「アクションゲームで狩りをする」と「RPGで強くなること」の組み合わせでした。RPGって基本的にアクション性はなく、プレイする回数・時間によって強くなっていくものですが、『モンスト』はアウトゲーム(ゲーム内の要素)のところにRPG要素を持ちつつも、インゲーム(実際にプレイするゲーム部分)が完全にアクションなんです。

その組み合わせで「アクションRPG」というジャンルになり、さらにスマホならではの操作性が加わる。そうなるともう完全に、「いままで世の中になかったゲーム」とパッケージされるわけです。

Web3.0ゲーム『TEKKON』のパッケージは、位置情報ゲーム×夢です。「運営ではなくユーザーがお金持ちになるゲームになってほしい」という夢を、ブロックチェーン上に託しています。自分のプレイ時間が換金できるようになれば、ゲームで遊ぶことに対して肩身の狭い思いをすることなく、趣味や副業として堂々とゲームを挙げられる世界を目指しています。

企画には、想像の範疇を超えるワクワクドキドキを

企画とは、お客さんの心を動かす必要があるわけですよね。そこにはやっぱり、ワクワク感やドキドキ感があるかどうか。人は、自分の想像の範疇のものに対しては、この程度かとがっかりしてしまいます。

『モンスト』、そして先行者的存在だった『パズドラ』のヒットは、当時のユーザーにとってのスマホゲームの想像の範囲を超えていたからです。

次にくる、と言われ続けながら、VRやメタバースがずっと「元年」のままになっているのは、まだ皆さんの予想の範囲を超えていないからでしょうね。


さて次回は、ぼくと仲間とのかかわり方、チームづくりについてお話しします。『パズドラ』も『TEKKON』も、ヒットは自分だけでつくるのは難しく、ヒットの構造をつくることができるメンバーが揃うことが重要です。組織で働く多くの人へ、参考になるといいなと思います。

社会貢献をしながら仮想通貨を稼げるアプリ『TEKKON』

編集協力/コルクラボギルド(文・ぐみ、編集・平山ゆりの)


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