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欧米人、昔の日本人の名前、地名の意味と言葉の語源や歴史を探求する。本業は会計士。

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わたしたちはなぜ世界史が嫌いなのか?

私は世界史を学びたくなかった あなたは世界史が好きですか?私は高校までの世界史を敬遠していました。学校で、「授業」または「受験科目」として「世界史」を取りたいとは思わなかった、というのが正確な表現です。理由は、大量の意味のないカタカナを覚えられないと思ったからです。  カタカナ用語は音しかなく意味が不明なので覚えられず、無味乾燥な記述の事件等の名前の羅列や発生年も覚えられず、何よりその頃は世界史そのものにまったく興味がありませんでした。受験は日本史(これも事件や用語の羅列で

    • アンダルシアはヴァンダル族の国

       前回に引き続き、ゲルマン人の一部族ヴァンダル族とブルグント族について解説します。 ヴァンダル族 「ヴァンダルVandal」は、ゲルマン祖語の*wandalに由来し、「流れ者」という意味です。  彼らは現在のポーランドあたりを原住地としていました。フン族の侵入を契機に南下と西へと移動を開始し、フランク族と戦いつつ凍結したライン川を越えて、西ゴート族よりも先にイベリア半島に入ります。スペインの南、「アンダルシアAndalcia」は、ヴァンダル族の国を意味するラテン語「ウァンダ

      • 旧約聖書のざっくりストーリー

         今回は旧約聖書のストーリーを解説します。ストーリーを理解する必要があるのは旧約聖書由来の人名を解説するにあたり、「この人は誰なの?」かが分からないと、どういう意味でつけられた名前なのかが分からないからです。教養としても最低限知っておきたいところです。旧約聖書は元々ユダヤ教の聖典であり、ヤハウェはユダヤ人を特別に愛し、ユダヤ人は神を信じ律法を守ることで救われるというお話です。 天地創造 ヤハウェが天地を7日間で創造し、最後にアダムとイブが作られました。2人はヤハウェに禁じら

        • ゴシックはゴート族に由来する

           ゲルマン人の大移動は教科書に載っている大昔のことで、まったく興味が湧かないかもしれません。私もそうだったので、その気持はよくわかります。現代と何の関係もないから、どうでもいいけど単にテストに出るので仕方なく覚える、という態度になってしまうのは無理もないことです。  しかし、本当に現代と何の関係もないのでしょうか。実は、ゲルマンの部族名は様々な言葉や地名の語源になっており、西欧、北欧諸国の起源ともなっているので現代とも深い関わりがあります。  今回は、ゲルマン人の大移動で国家

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        わたしたちはなぜ世界史が嫌いなのか?

          ユダヤ人とは誰のことか

           ユダヤ人というワードが出てくると陰謀論的な雰囲気が出てきてしまいますが、現代ではユダヤ人は民族的な概念ではなく、定義であることはあまり知られていないようです。旧約聖書に関連する名前を紹介する前提として、まずは誰がユダヤ人と言われているのか、見ていきましょう。 ユダヤ人とは定義である ユダヤ人というと、どのようなイメージでしょうか。  頭がいい、商売上手、儲け上手、迫害された歴史、ずる賢い、世界の支配者等々陰謀論を含めてプラスもマイナスもあるかと思います。突飛なところでは日

          ユダヤ人とは誰のことか

          フェリックスはヴィーナスの添え名

           引き続き、ローマ神話由来の名前について解説します。 ヴィーナスとフェリックス 春の女神にして美の女神「ウェヌスVenus」は、ギリシャ神話のアプロディーテーに対応するローマ神話の女神です。ウェヌスの原義は肉体的愛であり、英語読みした「ヴィーナスVenus」の方が私たちには馴染み深いですね。ヴィーナスという名前は、元女子プロテニス選手のヴィーナス・ウィリアムズがよく知られています。  ウェヌスの添え名のひとつに「フェーリークスfēlīx」があり、「幸運」を意味します。「フェ

          フェリックスはヴィーナスの添え名

          アントワネットとアンソニー、アントニオは同じ名前

           前回、前々回に続き、ローマ神話由来の名前アントニウスから派生した名前について解説します。 アントニオ猪木アントニオ猪木の「アントニオ」にはどのような意味があるのでしょうか。  アントニオは英語名「アンソニーAnthony」「アントニーAntony」に対応するポルトガル語名「アントニオAntonio」から名付けられたリングネームです。  猪木は苦しい生活から抜け出すために家族でブラジルに移民し、現地で興行していた力道山に見出されプロレスラーとして戻ってきました。当時のレスラ

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          新大陸はなぜ西インドと呼ばれたのか?

           前回に続いてやたらと出てくるのにあまり説明されることのないインドという諸概念について、そして「東」に関連する中東、極東、オリエント、レバントについても解説します。 東インドと西インド インドに関連して、東インドや西インドという名称もあります。  この場合のインドは元祖インドから派生した概念でありますが、範囲は異なっています。東インド、西インドとはどのような範囲を指すのでしょうか?  東方からの物資は、ほぼすべて小アジア、レバントを通って西ヨーロッパにやってきていました。そ

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          アジア、インドの意味するところは何か?

           アジア、私たちは自分たちの住む地域がそのように呼ばれていることを知っていますが、どういう意味を持つ概念なのか、起源は何かと問われると、あまり知られていないのではないでしょうか。何の語源的説明もなく、そう呼ばれているからそうなのだ、という感じで歴史も地理も進んでいきますが、それぞれの概念が重なる部分があり、意味するところが今ひとつはっきりしません。  今回から、歴史的経緯も含めて地名、国名、都市名の語源について見ていきたいと思います。 アジアの意味 「アジアAsia」とはい

          アジア、インドの意味するところは何か?

          ジューンブライドは女神ユーノーのご加護

           ローマ神話の主神ユーピテルに引き続き、配偶神である女神ユーノーに由来する人名について解説します。 豊穣の女神ユーノー ユーピテルの妻は「ユーノーJūnō」です。ユーノーは初耳かもしれませんが、実はよく知られた名称の元となっています。  6月を意味するJuneはユーノーのことです。ジューン・ブライドはユーノーの月である6月に結婚することで、結婚生活の守護神ユーノーのご加護を得ようとする慣習です。ちなみに、女性誌「ジュノンJunon」はユーノーのフランス語名です。  ユーノー

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          【最終回】江戸時代以前の女性の苗字と夫婦別姓

           さて、ここまで男性を中心として話をしてきたため、女性の名前がどうだったのかについてはまったく触れていませんでした。江戸時代以前の女性の苗字はどうだったのか?夫婦は同姓だったのか、別姓だったのか?などの疑問が湧いてきます。 女性の苗字はどうだったのか 結論から言うと、女性の苗字については誰も「関心がなかった」ということになります。  江戸時代以前の女性に関しては、例えば武鑑を見ても大名の妻は「御内室 松平播磨守頼説娘」のように名前が明かされていません。紫式部や清少納言、和泉

          【最終回】江戸時代以前の女性の苗字と夫婦別姓

          ユリウス・カエサルとジュリエットはユピテル神

           カエサルといえば、共和政ローマの独裁官ガイウス・ユリウス・カエサルで知られていますが、彼の氏族名「ユーリウスIūlius」とはいったいどんな意味があるのでしょうか。 ユリウス・カエサル ユリウスという氏族名は、ローマ神話の主神「ユーピテルJūpiter」に起源を持つ名前です。ユーピテルを聞いたことがない、という方も、ユーピテルを英語読みしたジュピター「木星」は知っていると思います。  ユリウスは古いラテン語の「ヨウィリオスJovilios」の短縮形であり、その意味は「ユー

          ユリウス・カエサルとジュリエットはユピテル神

          江戸時代以前の庶民も苗字を持っていた

           これまで江戸時代以前の複雑な、現代とは異なる日本人の名前の慣習について様々な角度から解説してきました。しかし、あまりにも概念が多すぎて混乱しているかもしれません。まずはどの話が名前のどの部分のことだったのか、改めて各トピックと関連付けて整理してみましょう。 伝統的な日本人の名前についてまとめ 上杉謙信を例として取り上げます。  位階は名前の要素ではありませんが、通称として使われる官途受領名と関係し、公文書でも使われるためここに含めています。これらをすべて繋げたフルネーム

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          ハンニバルはアナト神とバアル神

           昔、「羊たちの沈黙」という映画で「ハンニバルHannibal」という名前を初めて聞いたとき、とても不思議な響きを持っているな、と感じたことを覚えています。それまでに聞いた欧米のどの名前とも違う名前だと思ったのです。今回はハンニバルという名前の由来について見てみましょう。 不思議な響きのハンニバル 歴史上の人物でハンニバルと言えば、共和政ローマとの第二次ポエニ戦争で活躍したカルタゴの名将ハンニバル・バルカが有名です。バルカは「雷光」という意味です。ハンニバルはアフリカ大陸か

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          羽柴下賜と豊臣下賜

           前回の続きです。天下人となった豊臣秀吉は、羽柴、豊臣を下賜することで、忠誠を誓わせました。誰にどのように下賜したのか、見てみましょう。  また、「西郷隆盛の本名は隆永だった」というトリビアネタがありますが、江戸時代以前の名前の構成が違う時代の話であり、その前提知識は教えられず、さらに明治の名前の整理後には隆盛にしたことなどが説明されないので、この話を完全に理解するには今までの説明を踏まえる必要があります。 羽柴、豊臣下賜 豊臣秀吉は、羽柴の名字と豊臣の氏名を家臣たちに下

          羽柴下賜と豊臣下賜

          ジョシュアとジェイソンはイエス

           英語で「ジーザスJesus」がなぜ「イエス」と呼ばれるのか?音があまりにもかけ離れ過ぎではないか、と近年まで思っていました。  歴史について造詣がある方であっても、名前そのものについて深掘りしないとジーザスとイエスの関係について、その全体像を知ることはないのかもしれません。今回はイエスという名前とキリストの意味について見ていきたいと思います。 ジーザスがなぜイエス? キリスト教の信仰対象であるナザレのイエス、の「イエス」は基本的にギリシャ語音写の影響を受けた呼び方です。キ

          ジョシュアとジェイソンはイエス