無尽蔵〜我が家の日常風景
無尽蔵。
地表の70%をおおう海の水のように無尽蔵。
空に燦然と輝く太陽のエネルギーのように無尽蔵。
どんな言葉にもすぐにととのう、ねづっちのなぞかけのように無尽蔵。
そして、我が家の2歳児、つむぎの体力のように無尽蔵・・・。
つむぎの朝は早い。
朝起きるとすぐに、エンジンを掛け始める。朝ごはん前には「おぉそぉとー」。
俺は、もう外にいけるくらい暖まっているぞとアピール。
仕方なく、抱っこで連れ出すぼく。抱っこにする理由は靴を履かせてしまうともはや帰ってこないからだ。
抱っこで玄関前をうろつく。
「あっち」
残念なことに、今日はこのくらいでは満足してくれないようだ。
つむぎに言われるがままに歩みをすすめる。
家の敷地を出て、お隣さんの敷地へ。
「おとなりさん、いないねぇー」「あっち」
お隣さんが外に出ていないことを確認。さらに先に進む。次の目的地へ。
しばらく進むと、
「つむぅー」
お隣さんのお孫さん(Sちゃん)の声が聞こえる。振り返ると2階の窓にはSちゃんの姿。
喜ぶつむぎ。
「ほら、つむ、Sちゃんいるよ、つむも返事したら?」
Sちゃんと遊ぶのが一番楽しい、とつむぎはよく言っている。
「Sちゃん(小声)」
どうやら照れているらしい。ぜったいに聞こえない声で返事する。
Uターンしてお隣さんの家へ。Sちゃんも出てきて、一緒に砂場遊びを始める。つむぎは裸足だったが、もう後で足を洗えば良いかと砂場にそっと着地させようとする。
着地しない。「あとで、足洗うから良いよ」、と言っても着地しない。なんと、僕に抱っこされたまま砂場遊びをするという蛮行に。うぅ、おもい・・・。
しばらくそのまま遊んで、ようやく家に帰ってくれるようだ。隣の我が家に向かって歩きだす(もちろん僕が)。
「良かったねぇ、Sちゃんと遊べて。Sちゃんスキ?今度、スキですって言ってみたら?」
「スキです」
ニコニコしながら告白の練習をするつむぎ。つむぎは2歳にして、もう初恋をしているのかもしれない。
ようやく、家に戻ってくる。ここまでが朝ごはん前の出来事だ、しかもずっと抱っこ。僕の体力は、朝ごはん前に半分以上削られる。
朝ごはんを食べ、今日はいつもの網走の公園へ。
幼稚園に行かない日、つむぎはノリノリで歌をうたいながら、網走に向かう。
車を降りるなり元気いっぱいで走り出すつむぎ。大きなすべり台、大きなトランポリン、跳ねるトラック、小さなすべり台、アスレチック。休むこと無く遊び続ける。
「しめしめ、これで午後はお昼寝ぐっすりなはず。もっともっと遊ぶがいい」
僕と幸枝さんは交代しながらつむぎと遊ぶ(体力を削る)。
午前中いっぱい遊んで、車内でご飯を食べて、美幌に戻る。さすがのつむぎもすでにお昼寝が近いはず。
家に帰り、一緒に穏やかにテレビをみる。これが勝ちパターンだ。
10分、20分、30分。
あれ、寝ない??
「おぉそぉとー」
え、寝ないどころか、この暑い中外に行くの??この日美幌は36℃近い猛暑日だ。
まじかぁ・・・。
仕方なく外に連れ出す。
「ドライブでも行くか?」
「うん」
ドライブの振動で寝せてしまう作戦。つむぎを連れて車に向かう。チャイルドシートにつむぎをセット。できない・・・。
「うんてんする!」
つむぎは後部座席のチャイルドシートから抜け出し、狭い車内をむりやり運転席へ。「うんてん」を始める。
観念して助手席に座る僕。まあ、エアコンが効いてるだけましか・・・。
しばらく「うんてん」を楽しんだつむぎは、車から降りる。ようやく家に帰るのかと思いきや、今度はシャボン玉を持ってくる。
ここで、僕の体力は限界を迎え、幸枝さんに交代を申し込む。エアコンの効いたリビングで体力の回復に努める僕、外で遊ぶ幸枝さんとつむぎ。
30分くらいして家に戻ってきた。まだまだ元気いっぱいなつむぎ。時計はすでに3時を回っている。
つむぎの体力は無尽蔵なのか・・・。あれもやりたかった、これもやりたかった。今日は無理なのか・・・。
家の中を遊び回る小さな怪獣。体力が削られ、もしこれがドラクエだったらプレイ画面はオレンジから赤に変わろうとしている中、相手をする僕と幸枝さん。
「よし、今度こそドライブ行こうか?美幌峠、景色きれいだよ!!」
「けしきぃー?いくぅ!」
今日の仕事を諦めて、今度こそ気合を入れてドライブに行く覚悟を決める僕と幸枝さん。しっかりと準備をして車に向かう。
今度はチャイルドシートに乗ってくれるつむぎ。
いざ出発。
美幌峠に向かう車中。歌をうたうつむぎの声が聞こえなくなる。バックミラーを覗くとそこにはようやくお昼寝に入ったつむぎの姿が。時計は4時前。今日も長い戦いだった。
海の水が無限にあるわけではないように、太陽もいつかは燃え尽きるように、そしてねづっちもいずれ引退する日が来るように。
無尽蔵かと思われたつむぎの体力を削りきれた瞬間だ。
すぐにUターンして、家に戻る。幸枝さんは手をつけていた仕事を、僕は食器を片付、け夕飯を作る(日曜日は僕の担当)、一時の静かな時間を有効活用するのだった。
2時間後、ふたたび我が家の怪獣は目を覚ますまで
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