「理想が高すぎるんじゃない?」と言われがちな友人
長いこと恋人ができない人が周囲からよく言われる台詞の第一位は
「理想が高すぎるんじゃない?」
だと思う。
たしかに、理想の高さが原因で恋人ができない人もいるだろう。
しかし、原因が他にあるのに、周りがその台詞を言い過ぎるとどうなるか?
なんと、本人も「私って理想高いのかも?」と悩んでしまい、本当の原因に気づかなくなってしまうのだ。
◇◇◇
以前も書いたが、アリスという友人がいる。
色白で華奢で、「はんなり」という言葉が似合う京美人だ。おとなしいけど芯は強くて、繊細さと大胆さを兼ね備えている。控えめに言って、魅力的だ。
アリスは7年間、彼氏がいなかった。
例によって周りは「理想が高すぎるんじゃない?」と言った。
はじめは否定していたアリスも、だんだん「私って理想高いのかも?」と悩むようになった。7年間も色々な人から言われれば、そうなのかもしれない、と思ってしまうのは当然だろう。
だけど、アリスは理想うんぬん以前に、異性との出会いがほとんどない生活をしていた。
ある程度の人数の男性と出会っても誰のことも好きになれないなら、それは、理想が高いのかもしれない。
だけど、7年間で10人くらいしか異性と出会わない状況で恋ができないのは、アリスだけじゃないだろう。
アリスの理想が高いのかどうか、誰にもわからないのだった。
◇◇◇
転職前のアリスは、1年に1~2人くらいしか異性と出会わない生活をしていた。
彼女は事務職だったが、部署には父親くらいの年齢のおじさんと数人のお局がいて、アリス以降、新卒が入ることはなかった。そして、彼女の会社は他部署の人と顔を合わせる機会がほとんどなかったそうだ。
つまり、職場に出会いはなかった。平日は家と職場の往復なので、異性と出会うことはない。
じゃあ休みの日はどうかというと、アリスの趣味は料理だ。家で料理をしていれば、当然出会いはない。料理教室も女性しかいなかったそうだ。
じゃあネットはどうかというと、アリスが唯一やっているSNSはインスタだ。しかし、鍵アカなので出会いはない。
アリスにとって異性と出会う唯一の手段は「友人が開く飲み会」だった。
でも、それも友人が結婚していくにともない回数が減っていく。
かくして、1年に1~2人くらいしか異性と出会わないライフスタイルになったのだった。
◇◇◇
……と、彼女の暮らしぶりを聞いた多くの人は
「そりゃあ彼氏できないわ」
と思うんじゃないだろうか。
圧倒的に、出会っている異性が少ない。
なのに、アリスも周囲も「出会いの少なさ」ではなく「理想の高さ」に着目する。
なぜ!
アリスの姉であるトシコちゃんはよく
「アリスはもう何年も人を好きになってないんだよねぇ。好きになれない体質なのかな?」
と心配していた。
いやいやいや。
惚れっぽさの指数があるとしたら、それは人数ではなく割合で示されるべきだろう。
分母に「出会った異性の数」を置き、分子に「好きになった人の数」を置く。そうして導き出される割合こそが、惚れっぽさの指数なんじゃないか。
理想の高さに悩むより、まずは分母を増やせば良いのでは……?
昨年、アリスは転職した。
そして、そこで出会った人と付き合い始めた。
私はアリスの恋人に会ったことがない。彼女の理想が高いのかどうか、いまだにわからないままだ。
◇◇◇
恋人ができない人は「理想が高すぎるんじゃない?」と言われがちだ。
だけど、あまり真に受けなくてもいいかもしれない。
「まだ出会っていないだけ」の場合もあるだろうから。
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