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【ショートショート】整幹院

「どうもおひさしぶりですね。最近noteへの更新が滞っているようですがどうなさいましたか」
診察台に腰を掛けた吉田図工は、そう声を掛けられると苦笑いを浮かべながら頭をかいた。
「それがちょっと、凝り固まってしまって辛くて…」
「そうですか。それでは、触って確認していきますね」
そう言うと整幹師せいかんしは図工の頭の柔軟性を触診する。
「なるほど、思想の偏りから発想…ひいては思索までカチカチになってますね」
「どうりで。最近ワンパターンなモノしか思いつかなくて」
「ゲントレンを撮ってもう少し確認してみましょうか」
「ゲント?何ですかそのゲン…レントゲンのことですか?」
「吉田さん。そういう所です。自由な発想への許容感度がだいぶと固くなってます」と整幹師が微笑むと、ああと図工は狼狽えた。
「大丈夫です。それでは、ほぐしていきますね」

「少し施術した結果、脳の姿勢が相当悪くなってることが分かりました。ただ、元々ものすごく良い想像力お持ちですよ」
「そんな…実感無いです…」
「今は発想の姿勢が悪いので、その想像力の着地点がズレてしまっています。本来の空想する部位に着地すべきところ、そのエネルギーが不安や心配する部位に反れてしまっているんです」
「はぁ、そうなんですか」
「どうです。まだ何も行動せず、失敗すらしていないのに不必要に不安を想像して悩んだりしているでしょ」「…た、確かに」
「想像力がきちんと空想に着地するように仕上げていきますね」

「すごい!脳が軽い!ありがとうございました」
吉田図工は軽い足取りで帰宅すると、早速パソコンへと向かい『整幹院』を書き上げた。

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