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【ショートショート】天地製造

人間の営みを見下ろし、神は涙を流していた。
決して悲しんでいるのではない。感動の涙だ。
それはまるで立派に走る我が子の成長した姿を見る、親のそれに等しい。
幾多の失敗や教訓の歴史を経て、省人化、省力化をスローガンに人員、コストなどありとあらゆる無駄を排除し効率化を求め続け、今も世界を未来へと推し進めている。
神がこの世界を7日間で創り出した頃からは想像し得ない成長を遂げていた。
そして神は己を恥じた。
意を決し、神は時の座を立ち上がる。時間を遡り天地創造の第6日目までかえってくると自らの仕事を顧みた。
例えばピンクの花だけで100種類もいるだろうか。
目に見えない雪の結晶に綺麗な形が必要なのだろうか。
同じような生物が何種類も重複しているのではないか。
『何ということだ。こんなにも無駄があったとは』神は己の仕事に絶句した。
親がこれでは我が子に示しがつかない。そして神は無駄と思われる所をことごとく修正していった。
『うむ。スッキリした。これで親として我が子にしめしがつくというものだ』
再び2022年、現在の時の座に戻り下界を見下ろす。
『おや。これはどういうことだ…』
叡智を極めつつあった文明は消え失せ、荒廃した土地が広がっている。
かろうじて存在した人類は毛皮を纏いマンモスの肉を頬張っていた。

なんだ創造で合っていたのかと神は嘆いた。

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