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【ショートショート】未知の言語

ジャングルの道なき道を彷徨う事2週間。やっと原住民族の村を探し当てた。
メイクや衣装の特徴がこれまで出会った民族とのどれとも合致せず、恐らくはまだ確認されていない未知の民族と思われた。
突如現れた異物の存在に彼らは不信感と恐怖をあらわにし続々と村人が集まり始めた。
むやみに興奮させてはならない。私と現地で雇ったガイドは一定の距離を保ち静観する。
何とか敵意が無いことを意思表示する。
しかし両者意思疎通が取れないまま膠着状態が続いた。

すると民族の長老と思しき人物が屈強な若者を従えてこちらに近づいてきた。
私もガイドを従えて恐る恐る前進する。
互いに3メートルほどの距離まで近づくとガイドは試しに現地のある言語で敵意は無いことを語りかけた。
しかし手応えは無かった。向こうの若者はこちらに槍を向けたままだ。
すると長老は若者に向け手を上げ武器を下ろすように促すジェスチャーをした。静かに若者は槍を下ろす。
そしてこちらに顔を向けおもむろに口を開いた。

『?(゚Д゚≡゚Д゚)?』

我が耳を疑った。
老人の発した顔文字が聞き取れたのだ。
どういう原理かは分からないが、耳からの情報であの顔文字が認識できたのである。
驚きと混乱でガイドが僅かに後ずさった。
ふと降りてきた閃きを信じ私はリュックからノートを出しペンを走らせた。そして彼らに向け掲げる。
『( ´∀‘)人(´∀‘ )』
長老は目を閉じ沈黙した。長い時間をかけて熟考しているようだ。
そして再び目を開くと頷きながら口を開いた。

『(*´∇‘)b 』

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