【ショートショート】睡眠労働
パジャマ姿の労働者が次々出社する。
「あ、課長。おやすみなさい」
「お、おやすみ」
挨拶を交わし自分のワークベッドに鞄から取り出したマイ枕を置き
始業の子守唄に合わせ就寝する。
正午にアラームが鳴り1時間の昼覚醒を取る。
昼食を取り、読書したり軽く運動したり皆思い思いに過ごす。
2人の社員が屋上のベンチで日光浴をしている。
「俺、部署異動を希望してるんだ」
「てことは起床業を目指すって事?」
「仕事で寝て家でも寝て。人生の殆どが睡眠なんて…このままで良いのかが疑問でさ」
「じゃあ起きれるように資格とって上にいかなきゃな」
昼覚醒終了のチャイムが鳴り、皆ベッドに戻ると昼就寝の支度を始めた。
自社ビルの地下フロアに睡眠部は置かれており地上階が実働部のフロアだ。
ここは起床資格をパスした社員が少数精鋭24時間体制で実業務をこなす。
「部長、実業16時間経過したので睡眠補給してきます」
若手社員は給眠室へ向かい冷蔵庫から8時間睡眠に相当する「S8」の瓶を取り出す。
栄養ドリンク大の瓶の蓋を開け一気に飲み干した。
すると先輩社員も遅れて給眠室へ入ってきた。
「先輩お疲れさまです。まだ帰れないんですか?」
「あと8時間頑張ったらやっと連休よ」
そう言ってS8を飲み干すとあー不味いと眉間に皺を寄せる。
「最近さ、睡眠の質落ちてなくね?睡眠部サボって起きてるんじゃないの」
「ですよね。なんで俺いつも多めに寝飲してますよ」若手社員はS4の瓶を冷蔵庫から取り出した。
定時になると睡眠部の面々はベッド下のボトルに溜まった睡眠エキスの進捗量を確認する。
「課長、ノルマ達成出来てないんで2時間程残眠します」
「そうか、じゃあおやすみ。悪いがお先におはよう」
「おはようございます」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?