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【ショートショート】無欲な男

とある無欲な男の前に、突如神が現れた。
「これまで欲にまみれた人間は数多くみてきたが、お前は常に無欲で慎ましく生きてきた。その功績にどんな願いでも一つ叶えてやろう」
「とんでもありません。今で充分です」
「うむ、確かに無欲な男よ。ならば何か困っている事はないか。どんな悩みでも解決してやろう」
「いや本当に結構です」
「私も宣言した手前、神として後に引けぬのだ。私を助けると思って打ち明けてみよ」
「それならば…確かに無欲であることが人からは特異に映るようで。何か裏がないか勘ぐられたり、果ては極意を教授してくれと懇願されたり…できればそっとしておいて欲しいのです」
「なるほど。その悩みを解決する為に他の人間に何かを施し変化を与えるのは本来の意に合わない。お前に僅かばかりのものを授ける形で解決しようと思うがそれでよいか」
「かまいません。お願いします」
神は杖を振りかざした。
すると男は何かを思い出したように言った。
「先程の願いですが一つありました。まだ間に合いますか」

「よし。お前の問題は解決した」と残し神は姿を消した。

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