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ZOZOGLASSの何がスゴイのか?

 ZOZOCOSME(ZOZOのコスメ専用EC)開始にあたってローンチしたZOZOGLASS。これスゴイんです!マジで!きちんとした色彩工学的アプローチをしているだけでなく、UX面でも!

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コスメと肌の色

 コスメ(メイクアップ化粧品)にとって、肌の色は重要です。ファンデーションは「肌の色に近いものを選ぶ」というのが王道ですし、同じアイシャドーや口紅を塗っても、肌の色が違うと発色も異なり、さらには、肌の色との調和にも影響し、その化粧品が自分に似合うか/似合わないか?=商品の価値にまで影響します(いわゆるパーソルカラー)。

 なので、自分の肌の色を正確に把握することが重要なのですが、肌の色は人によって違う、といっても、(すくなくとも日本人の中では)「ベージュ」の中のバリエーションの話です。赤や青の人がいるわけでもなく、色空間全体から見たら、誤差みたいな微妙な差です。

 しかし、その中に10色のファンデーションが配置されているなど、その微妙な差が重要なのです。

 従来は色彩計などを用いないと肌の色を正確に把握することができませんでした。もしくは、あらかじめ用意した肌の色のモノサシ(肌色スケール)と比較し、どれと近いか?という比色を行わないとでした。しかし、色彩計は高価だし、肌色スケールも下手をすると、肌の色のばらつきより印刷時の色のばらつきの方が大きくなり、かなり慎重に印刷する必要があります。いずれにせよ、ユーザが気軽に使うことはできませんでした。

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↑肌色スケールの例

 カメラを使って測色する方法は、研究レベルでは以前(1990年ごろ)から行われていました。研究所にて、しっかりとした照明環境を構築し、あらかじめ特性を調べた一眼レフカメラを用いてXYZを求めます。


 カメラで色を測るには?

 色を科学する <番外編> XYZを自分で計算してみよう!でも書きましたが、色を測る(測色)=XYZを求めることであり、眼に入ってくる光(物体の反射特性x照明の分光特性)を等色関数で受け止め、波長ごとの応答を足し合わせる(積分する)ばよいのです。

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 等色関数として、x(λ)y(λ)z(λ)を使えば、XYZになるし、r(λ)g(λ)b(λ)を使えば、RGBになる。カメラのRGBセンサの感度を使えば、そのカメラのRGBとなる(このRGBはCIEのRGBと違います!)。

 カメラのRGBセンサの感度を直接測るのは結構大変なので、機械学習で間接的に求める方法もあります。多くの色に対し、色彩計でXYZを測り、同時にカメラで撮影しRGBを求める。この大量のペアデータから機械学習で変換行列を求め、それをx(λ)y(λ)z(λ)に掛けると、センサ感度が求まります(感度を求めてわざわざ積分計算しなくても、カメラのRGBからXYZにダイレクトに変換できる)。

 これは、色を科学する その③ 数学的に生み出されたCIE XYZで書いた内容↓とおなじことです。

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 この時、下記のような色空間を網羅する「多くの色」がセットになった色票セットを用いることが多いです。ターゲットが肌の色なら、ここに肌色のバリエーションを追加し、肌の色に最適化するといった実務上のテクニックもあります。ZOZOGLASSの色票には肌の色のバリエーションが多いので、これやってますね、、、

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↑色空間を網羅する色票セット例


 また、実際に測色する際は、センサ感度を求めたときと照明が異なったり、同じであっても経年劣化で特性が変化しているといった可能性があるので、いつも同じモノ(例えば、上記色票セットから何色か抜き出したもの)を写しておくとよい、という実務テクニックもあったりします。例えば↓とか。

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フナコシ社Webサイト(https://www.funakoshi.co.jp/contents/7495)より引用


スマホでやるとムズイ!

 スマホにもカメラがついているので、上記のカメラで測色をやればいいだけなのですが、これをスマホで、特にユーザのスマホでやるのは難しいのです。

 なぜなら、カメラがバラバラだからです。研究レベルでは、カメラを1つ決めて、それに対し感度を求めればよかったのですが、ユーザのスマホでやるにはそういうわけにはいきません。いろんな機種があり、更に毎月にように新機種がはつばいされているので、事前に全部やっておく、なんてことは事実上無理です。

 あと、カメラから通常の画像として出力されるRGBは、センサーの生の出力(RAW)でなく、かなりいろいろ「絵作り(好ましい色に変換するなど)」されているので、そこでも誤差が生じます。一眼レフだとRAWを出力できるのですが、スマホだとほぼ無理なので。

 じゃあ、色票セットを渡してユーザ自身に撮影してもらい、各カメラセンサの感度を求めればいいのでは?となるのですが、これにも以下の課題があります。

①色票セットをどう渡すか? コスト負担はだれ? 物流どうする? そもそも認知されて欲しいとならないと送れない、、、など

②色票セットをどう使ってもらうか? 撮影時、影になっていたり、逆にハイライトが入っていると正確に測れない。また、照明から見て、顔と同じ距離に置かないと明るさがずれる。平均的な感度で代用する方がマシなくらい結果が破綻するんです。あと、そもそもめんどくさいのに、更にちゃんとやってと言われると、、、

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↑色票セットにハイライトや影が入ってしまった例


ZOZOGLASSスゲー!!!!

 そうです、これらの課題を解決したのがZOZOGLASSなのです!

 ①の課題はZOZOの十八番ですね。なのでスゴイのは②です!一般ユーザーに「影やハイライトが入らないように、顔と同じ位置に色票セットを置いて(or 持って)ください」とするのは無理です。

 そこで、色票セットをメガネにした!これにより顔と同じ位置になり、照明に対し垂直になるので、影やハイライトが入りにくい。言わずもがなですが、いつも同じものを一緒に撮ることで、照明光の補正にもなる。

 そして、何より、色票セットを一緒に撮ることを楽しくした!これが大きいです。カラフルな色票がいっぱいついたメガネがカワイイ!むしろ撮りたくなる、SNSにアップしたくなる!

 悔しいけど、このアイデアは今まで全く思いつかなかった。真剣に仕事としていろいろ考えていたのに。。。完敗です。すごいUX!

 ZOZOSUITの時のノウハウなんでしょうね。あの時も、あの水玉スーツがシュールでみんな楽しんでやってましたらかね。


ZOZOGLASSやってみた

 ちなみに私の結果は↓でした。「やや濃いめ」と「ブルべ・冬」は合ってます(パーソナルカラーは以前プロに診断してもらった)。が、なぜおすすめのファンデーションがベージュオークル20なんだろう、、、オークル30のような、、、

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