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Vol.4_『No.1』ってどうなん??

我社は来年から新しい中期経営計画の期間に入ります。

策定プロジェクトの事務局を仰せつかっていた私は、まずは素案づくり...ということで、現中期経営計画の振り返りや今後の経済環境・業界動向などを確認しながら、経営陣で『目指す姿(ビジョン)』と『全社戦略(事業戦略/組織戦略)』の策定を進めてもらいました。

紆余曲折ありながら、ようやくまとまりかけているのですが、『目指す姿(ビジョン)』の中に、”貢献度No.1企業を目指す”という文言が入っていて、それに関してちょっと考えさせられることがありましたので、今回はそのお話をさせていただこうと思います。

※貼り付けた写真はドライブに行った先々で写したものですが、特に意味はなく、本文とはなんの関係もありません。


1.経緯

貢献度No.1企業を目指す”と社長から聞かされた時、私が真っ先に思ったのは、果たして、社員に受け入れられるのか...?社員は共感してくれるのだろうか...?ということでした。

経緯はこうです。

中期経営計画の策定が始まる少し前、幹部社員から次のような話が出ました。

新しいことをすることに社員には拒否反応があって、そういう話が出るたびに『また何かをさせられるのか...』とうんざりしている。

大きな負荷がかかる活動ではなくても、何かをするという事をお知らせするだけでそういう反応をしてしまう状態だとのことで、つい先日も、「そういう反応があるならば、活動内容を社員に知らせずに管理職だけで取り組むことにしよう」としたことがあったばかりだったのです。

プラスアルファの負荷がかからない活動をお知らせするだけで拒否反応を起こしてしまう...こんな状態なのに”No.1を目指す”なんて言おうものならどんな状態になるのか...?

ということで、社員に受け入れられるのか...?社員は共感してくれるのだろうか...?ということを心配するに至ったのです。

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2.経営への投げかけ

このように心配していることを、当然経営にも投げかけました。

『つい先日、組織の状態を危惧して、社員へはお知らせしないという対応をした案件があったはず。今回の目指す姿(ビジョン)においても同様の心配があるが、それはどのように考えるか?』

これに対して経営は、”No.1を目指す意義や必要性”を丁寧に説明してくれました。しかし、心配される組織の反応をどのように考えるのか...に話が及ぶことはないのです。こちらとしては、No.1を目指す意義や必要性を理解していないのではないのですが、回答はいつも「いや、No.1を目指さないといけない」という内容なのです。

心配される組織の反応に関して、これをどのように乗り越えるのかについては、やはり経営者の断固たる決意と、組織のキーパーソンの取り込みと、具体的なアプローチのアイデアが必要だと思うので、何度も話し合いをしましたが、ついにそういう類の話にはなりませんでした。

この時、ものすごく強い違和感を覚えたのです。

なんでだろう?なんでNo.1の意義や必要性の話になるのだろう?そこには疑問はないと言っているのに...

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3.No.1の呪縛

しばらくの間、「なぜだろう、なぜだろう」と考えていたのですが、2年ほど前の事を思い出しました。当時、社内の管理職2名に半年間コーチングを受けてもらうと社長から聞き、私も加えてもらったのです。

コーチングの初期の段階で、チームをどういう状態にするのかを決める時でした。私が設定したものがいまいちだったのか、コンサルタントから「國松さん、ビジョンは皆がワクワクするものじゃなければいけません。目標は"総務部を日本一働きやすい職場にする"でどうですか?ワクワクするでしょ?」と満面の笑みを浮かべて言うのです。

正直なところ、私は自分のチームが日本一かどうかには一切興味がありませんでした。なので全くワクワクもせず、どちらかと言うと胡散臭さを感じ、これを示した日にはメンバーは「きょとん」とするのではないかと思いました。

このコンサルタントも然り、私達は、"No.1"を当然「目指すべきもの」だと考え、当然皆が勇気づけられると思い込む傾向にあるんじゃないでしょうか?そして、社員はそれを目指さざるを得なくなる...

まさに『No.1の呪縛』と言っていいと思います。

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4.見せるべきはNo.1の"向こう側"

”No.1”は有効な戦略になりえるでしょう。特にシュリンクしていく市場ではパイの奪い合いになるわけなので、分け前だけをもらうようなやり方では段々とやせ細っていくのは目に見えています。圧倒的なNo.1が理想的でしょうが、条件付き的でもNo.1の位置を目指すのは有効な戦略だと思います。

しかし、No.1を目指すことの有効性を説くことだけでは、目指す姿(ビジョン)への理解を深め、それに向けて意欲的に取り組む組織にしていくことには充分ではないと思います。特に状態が落ちている組織では、肯定的に好意的に捉えてもらうことが期待できませんので、戦略の理屈だけでは難しいと思うのです。

もっと言えば、"No.1"が単なる売上・利益の拡大のためでしかないと思われたら最後、社員は白けその心は会社からいっそう離れていってしまうのではないかと思うのです。

やはり、No.1を目指す過程で実感できる仕事のやりがいや実現する環境整備、実現したときに得られる経済的利益だけではないなにか、を経営者自らが語り、厳しく苦しい時でも逃げずに陣頭指揮をとる決意と、社員と苦労を共にすることを示すことが必要だと思います。

かつ、これらを話したからと言って即座に理解されるものではないことも理解し、ことあるたびに繰り返し語り、実行して見せ続けることが重要だと思うのです。

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5.掲げるべきはNo.1なのか?

そこまで考えると、目指す姿(ビジョン)に”No.1”を掲げるべきなのか?という疑問まで浮かんできます。決して皆を魅了するものではないし、見せるべきはNo.1の向こう側だし、掲げることによって拒否反応まで心配される状態。掲げることになにかメリットがあるのか?

経営としては、社員や組織の最大限の力を結集して売上と利益を増大させ、企業が拡大・成長する事を目指すわけです。そう思うと、上場企業でもない我々は何もNo.1を目指す(約束する)ことを公言しなくても全然構わない。社員や組織が最大限の力が出せるような状態とはどういう状態なのかを考え、それを目指す姿(ビジョン)にすることで良いのではないか?

で、結果的に『No.1』になる。

企業の風土にもよると思いますが、組織の状態が落ちている当社では、そんな経営の仕方の方が実は合っているのではないかと思うようになっています。

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6.まとめ

今回もつらつらと思うに任せ書き連ねてしまいました。

今、どうやって組織をまとめベクトルを合わせていくのか、組織運営の難しさと企業経営の難しさを痛感しています。

最近、組織開発(Organization Development)について耳にする機会が増えてきたように思います。みなさんの投稿で勉強させてもらいながら、実際の現場で組織開発についての理解を深めていきたいと思います。

今回はここまで。

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