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日中、天然ガスに代わるクリーン燃料技術で連携

日経新聞の記事


「日本と中国は天然ガスに代わるクリーンな燃料技術で連携する。再生可能エネルギー由来の水素を二酸化炭素(CO2)と反応させて都市ガスにする。CO2を原料にするため温暖化ガス排出を相殺できる。両国の企業が協力し、官民でアジア発の環境技術を育てる。

人権問題を背景に中国に対する世界の視線は厳しくなっている。日本も北京冬季五輪・パラリンピックへの政府代表団の派遣を見送る。一方で気候変動のような地球規模の問題では手を握る。

経済産業省と中国国家発展改革委員会などが26日にオンラインで開く国際会議「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」で協力に合意する。日立造船と中国の楡林化学が参画し、実証事業に乗り出す」などと報じました。

詳しい情報

もう少し詳しい情報がないのか検索したところ、いくつかヒットしました。そのうちで一番新しい資料がありましたので、以下に添付します。中国におけるメタネーション技術の導入可能性調査などが報告されています。

その中で、今回の実証事業のコンセプトとして5点が挙げられています。

・化学産業由来の複製ガス(H2/ CO2)の有効利用
・メタネーション反応器の大型化と反応熱の有効利用
・経済区内で消費されている天然ガスを本技術で代替することに
 より省エネ化、排出CO2逓減を図る
・本邦カーボンリサイクル技術と中国カーボンニュートラル政策の
 親和性の訴求
・メタネーション技術導入・展開基盤の構築

知財保護について

中国との協力に反対するわけではありませんが、知財保護などを厳格に行って欲しいと思います。下の図は、産総研の公開資料の一部です。メタネーションについての特許出願数の推移を表したものです。中国が2010年以降突出しているのが分かります。

この特許出願は、CO2からメタネーションではなく、石炭➡合成ガス(CO/H2)➡シフト反応➡メタネーション(CO + 3H2 -> CH4 + H2O)に係る特許でしょう。ガス化炉構造も相当数あり触媒の種類も色々ですから、其々組み合わせていけば、膨大な数の試験をしていることになります。

今回の実証事業では、CO2 + 4H2 -> CH4 + 2H2O  という反応でメタンが生成されます。COに比べてCO2は化学的に安定しているため、化学種を活性化させるために高温、高圧など厳しい反応条件を必要とします。日立造船が優秀な触媒を開発したため、その実現が期待されるのでしょう。

中国は、第12~13次五か年計画で、豊富に賦存する石炭を利用して代替天然ガス(SNG)、メタノール、アンモニアなどを増産しようとしていました。SNGの製造については70近くの事業計画がありました。特に第12次計画では、技術開発も盛んであり、そのため、知財確保という目的で特許や実用新案などが大量に申請されていた時期です。急激な出願数の上昇は、国家戦略を反映したものだと思われます。

なお、70ものSNG事業のうち、実際に稼働しているのは5事業程度です。米国を中心とするシェール革命によって天然ガス価格が急落しました。中国国内で石炭からSNGを生産しても経済性が成り立たず、LNGで輸入した方がコスト的に有利、また、温暖化規制の流れもありました。

優位性調査

かって、技術優位性調査というのを行ったことがあります。途上国などでは、日本よりも中国のプラント案件が受注されやすい。建設費が格段に安いなどの理由はありますが、それは何故か?日本の技術の優位性はどこか?といった背景からの調査でした。

荒っぽく言ってしまえば、日中友好などの名のもとにJVなどを行い、技術協力・技術移転をしてきたという一面も見逃せないと思いながら、そうしたニュアンスも入れレポートを書いたことを思い出します。修正が入りましたが...


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