見出し画像

文学フリマで受けとった本と勇気


はじめて文学フリマに行ってみた。

文学フリマ自体の存在は一昨年知った。けれど東北に住んでいたので「都会人の遊びだ」とハンカチを口に加えながら「キーッ!」と眺めるのが限界だった。

そんなぼくも東京へ。知っている出店者の方は少なかったのだけど、雰囲気を味わいたくて足を運んでみた。

結論、すごく感性を研ぎ澄ます1日になった。買った作品自体に魅力を感じるのはもちろん、「こんなにもたくさんの人が自分で作ったものを店頭に並べ、誰かに伝えたいというエネルギーを持ってるんだ」ということに勇気をもらった。

ということで、文学フリマ体験記と買ったもの紹介をしていきます!


お買いものまで

12時開場ということで、11時50分に物流センターへ。めっちゃ人いる。すごい並んでる。この人たちに片っ端から「文学がお好きなんですか?」と聞いても全員「YES」と返ってくるのを想像したら、なんかワクワク。

会場がオープンし、ぞろぞろと人が流れていく。「このブースに行ってから、次はこのブースに」など作戦を立てている人が多い(気がする)ので、シャシャシャと澱みない動きが生まれていた。みんなすごい。

一方のぼくは、事前に行きたいと思っていたところは3つで、リサーチも少なかったのでいったん適当にぶらぶらした。

店頭にはいろんな方々が。立ってチラシを巻いている方。座ってニコニコ「こんにちは」と挨拶してくれる方。歌って注目を集めている方。ジーッと人の流れを見ている方。

様々なカタチがあるけれど、自分の心を切り取った作品を、手に取ってほしいと考えている人たちが集まっている。そのエネルギーだけで、体温が上がるのを感じた。

買ったもの

◾️つるるとき子書店
「春夏秋冬、ビール日和」「なけなしのたね」

文フリで最も会いたかったつる・るるるさんとき子さん。一昨年の年末からnoteで拝見し、以降ずっと記事を楽しみにしてきた。

そんなお二人にはじめてお会いできるとあって、心臓バックバックだった。いざ対面して、心の中の自分と、口から出てくる言葉が全然違くてびっくりした。はじめてのデートかな。

実際のお二人は、文章から抱いたイメージそのままというか、人柄のよさがにじみ出ていた。笑顔がとっても素敵。

noteで拝見していない記事が多そうなので、既刊のエッセイを購入。つるるさんからお釣りを受け取るとき、「手、冷たいですね!寒かったですか?」と心配していただいた。お気遣いが嬉しい。末端冷え性の極みなんです。


◾️寅の子すて〜しょん
「WEEKEND CITRON VOL.1」

寅年生まれの女性お二人が雑談をするPodcast番組。

文フリのWebカタログを見ているとき、「ポッドキャスターが出ている!」と親近感を感じてエピソードを聞いていた。お二人のワードセンスに惹き込まれ、お会いしたくなった。

「Podcast、カタログきっかけでちょっとだけなんですけど聴きました!」と伝えると「Podcast聞いて来店した方、今日はじめてです!」と喜んでくれた。

そして声だけでどっちが窓辺さんで、こなものさんかわかった。Podcastあるある。

ひとつひとつの作品に愛が込められているのをひしひしと感じる。2人ではじめてカタチにしたというZINEを購入。あとでステッカーも欲しくなってもう1回行った。

2人で文化祭みたいに準備して、青春してるな…。お兄さんもそういうことまだできるかな…。と勝手にOBの気持ちになった。


◾️大漁海屋敷
「大漁」

(魚が、メイド服?を着ている…!)と気になってそろそろとブースに近づいた。シンプルにお魚が好きというのと、色合いが好みだったのでジャケ買い。

購入するときに海屋敷さんが「はじめての出店だったので、すごく嬉しいです」と言ってくださり、こちらもホクホクとした気持ちに。

「手に取ってもらって、それが買ってもらえるかとかすごく不安で」とおっしゃっていたので、食い気味に「絶対そうですよね!」と共感してしまった。ぼくが出店者ならメンタルトレーニングから始めなければならない。

エッセイの「こたつ布団を圧縮袋に入れようとして、洗濯しなきゃと気づき洗濯乾燥するも、内側に乾いてないところがあって全部ほったらかしにしたくなる」というエピソードに激しく共感した。あれだけアウトソーシングしたい。


◾️くすみず
「餃子・頭痛・家」

表紙が薄透明で、優しいオレンジの表紙にビビッとくるものがあり立ち止まった。

そして作品のタイトル。「餃子・頭痛・家」。なんだろう、このなんでもなさそうであり、なんでもあるような引力は。表紙と合わさると、美術館の企画展ポスターのような佇まいじゃないか。

中に出てくるイラストもかわいい。餃子は王将のエピソードだったのだけど、日常の流れてしまうような風景を文字で切りとっている。デザインも含めて素敵な作品でした。


◾️もぐらのしはらとbar bossa林
「恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる」

noteを毎日読んでいる林さん。ご本人から買うことができるなんて…!

ブースに近づくと、林さんが「こんにちは。私、渋谷でバーテンダーやってまして。小説はこんな恋愛ものを書くんですけど」と丁寧に紹介をしてくださった。

(めっちゃ知ってる〜!!)という心の声を片耳に、「note毎日読んでます!ファンです!」とお伝えするとすっごく紳士的に喜んでくださった。

新作の紹介も「妻が書いた手書きの料理レシピも挟んであるんです。いい歳してるのに、こんな子供みたいなことしちゃってすみません…!」と照れながら紹介していた。なんと愛らしい。

元々買おうとしていた文庫本を購入。本人からの手渡し本、大事に大事に読もう。


◾️つるるとき子書店(二度目)
「羽ばたく本棚」「にじいろのはなじ」

(つるるさんととき子さんにお会いできるの、もうそうそうないよな…やっぱ新刊買うべきだよな…!)とおかわりを決行することにした。

再びブースに行くと、とき子さんが「あら〜!またもらってく?」と笑顔でチラシを渡してくれた。顔を覚えてくれて嬉しい。

新刊も購入することと、「ちょっと推しの気持ちをさっきは伝えきれなかったので…!」とお二人が書いた好きな記事の話をした。緊張して全然上手く伝えられなかった。なんでや。仕事のプレゼンのときの自信どこにいった。

つるるさんが「たくさんお金を使わせてしまって…申し訳ないです…」と言ってくださった。申し訳ないと思わせてしまって申し訳ない。好きで買っております!


終わりに

文学フリマって元々知名度があったり、人気の方々が作品を売ったりする「神々の遊び」だと思っていた。自分なんかとは別の世界だって。

でも、文学フリマを通じて知ってもらえることってたくさんあるんだと感じた。ぼくも知らなかった作者の方々との、かけがえのない出会いがあった。

有名じゃなくても、1人でも多くの人に知ってもらう機会を作ることができる。むしろ有名じゃないからこそ、出店する意味がある。

気がつくと、購入者じゃなくて出店者側の気持ちになっていた。そっか、ぼくはこの世界を見てしまって、憧れているんだ。

自分がひねり出した言葉たちを、直接誰かに受け取ってもらえる。目の前の人に届けられる。そんな出会ったことのない感情を味わいたい。

いつになるかわからないけど、文学フリマに出店したい。今回受けとったエネルギーを、未来の自分に託そう。いつか手に取ってもらえる、誰かのために。

この記事が参加している募集

#休日のすごし方

53,996件

#文学フリマ

11,623件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?