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パンみみ日記「北海道は思っていたより、あたたかい」

好きなnoterさんたちに憧れて、日記を始めました。いつもは明確に書きたいことが浮かばないと文章にできない。それなりに中身がないと投稿できない。

けれど、日々のできごとをかき集めたのなら。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。名付けて「パンみみ日記」。

10月11日(月)
出社すると、後輩がいない。どうしたんだろうと思っていると、会議のときに上司から発表があった。どうやら休日にしたフットサルでケガをしたらしい。半月板損傷で手術が必要なレベルとのこと。

仲の良い後輩なだけに、心配だ。しばらく会えないのは寂しいなぁとぼんやりしてしまう。すると、見かねた上司が声をかけてきた。

「よさく、どうした?」

普通に「いやぁ、めちゃくちゃ心配で」とか言えばよかったのだけど、なぜか必要以上に心配がるのが恥ずかしくなった。少し、間を置いて口を開く。

「いや、ちゃんとケガしたときの保険とか入ってたのかなぁって」

心配しているようで、金の心配しかしてない発言になってしまった。会議は微妙な雰囲気になった。

10月13日(水)
最近、「今の俺、サラリーマンっぽいなぁ」と思うことにハマっている。

仕事終わり。「メシ行くか」と2個上の先輩が誘ってくれた。「うまいラーメン屋あるんだよ」と教えてくれて、2人で暖簾をくぐる。向かい合ってズルズルと麺をすする。

上司の愚痴をこぼしたり、このラーメン美味いっすねって言ったり、でも頑張るしかないんだよなぁって励ましあったり。

サラリーマンっぽいなぁ。

10月14日(木)
会社のエレベーターに乗った。壁にけろけろけろっぴのシールが貼られていた。ごりごりのオフィスビルなのだ。けろっぴがどこから現れて、どんな経緯で貼り付けられたのか気になってしょうがない。

けろっぴinオフィスビル


10月15日(金)
退職する先輩の送別会があった。家庭がある先輩も多いので、一次会でほとんどの方が帰宅。ぼくも「夢をかなえるゾウ」のガネーシャが「まっすぐ帰宅する」というアドバイスをしていたのを思い出し、そそくさと帰ろうとする。

すると、飲み好きな後輩が退路に立ちふさがる。

「よさくさん、なに帰ろうとしてるんですか」
「いや、今日チャリで会社来たからさ。土日使うから、チャリ持って帰らなきゃいけないんだよね」
よくわからない言い訳で応戦する。

「大丈夫です。私がよさくさんの自転車乗って、家に送り届けておくんで。大丈夫です。自転車の色とカタチを教えてくれますか?」

謎の対抗話法が飛び出してきた。思わず笑ってしまった。押し負けて二次会に行った。なんだかんだ楽しかった。

二次会が終わる。会社に自転車を取りに行こうとしたら、引き止めた後輩が「私も歩きたいんで」とついて来てくれる。

色んな話をした。ヨーグルッペってやっぱり美味しいよね、とか。そろそろみんなで鍋をやろう、とか。私が半月板損傷したらお酒が飲めなくなるのが嫌です、とか。

後輩を家に送り届けて、手を振る。

すっごく寂しくなった。実は、今転職活動をしている。毎日のように会っていたのに、会えなくなる。

今の業務内容と上の方針が、自分にマッチしていないことが転職理由だ。でも、会社の先輩や後輩は大好き。なんでこんなに素敵な人とお別れしなきゃいけないんだろうって思う。自分で転職を選んでるんだけどね。勝手だよね。

ほろ酔いで自転車を押しながら浴びる夜風が、いつもより肌寒かった。

10月16日(土)
テニススクール。いつもはいないおじさんが、振替で来ていた。なかなかの腕の持ち主で、熱いラリーを交わす。

コートの脇でおじさんとすれ違うとき、「君、いいフォアハンドだね」と不意に声をかけられる。「えっ、いや、えへへぇ〜」と絵に描いたような照れ方をしてしまう。

レッスン終了後、トイレでおじさんと遭遇した。また声をかけてくれる。

「君、普段はどのクラスにいるの?」
「中上級です」
「そんな!君ならすぐに上級、いやエキスパートに来れるよ」
「いやいや!普段どのクラスにいらっしゃるんですか?」
「エキスパートだよ。ただケガをして、リハビリで中上級のクラスに来たんだ。さっきコーチにも話していたんだ。彼はもっと上のクラスのはずだって」

なんかよくわからんけど、おじさんに認められた。確かによさこい優先で振替ばっかりしてたから、全然クラスあげてもらってない。

これあれだ。少年漫画だったら、「主人公の実力が垣間見えて、ハイクラスの闘技場にランクアップするやつ」だ。実力者から「俺は高みで待ってる。お前も早く来い」って言われるやつだ。

ワクワクするぜ。


10月17日(日)
よさこいのイベントに出場。今日は大学の文化祭に、ゲストチームとして呼ばれた。この辺りの地域はよさこいが盛んなので、大学のチームが学祭で踊るとなると、色んなチームも呼ぶのが普通らしい。

そんなわけで、学祭に出演するという久々の体験をした。黒板アートに驚いたり、出番が近づいてソワソワしたり、出店の焼き鳥をほおばったりと、学生らしいことを一通りした。満足。

自分たちの出番の後も、他のチームの披露を見た。お決まりの掛け声があったり、観ている人も参加できるフリがあったり。そこにいる人たちがギュッと一つになれる瞬間がある。瞳が引き込まれ、心が吸い寄せられる一瞬がある。よさこいってやっぱりいいな。

イベント後は、メンバーの家でミーティング。来年の方針や役割について話し合う。その中で、自分は転職を予定しており、今月でチームを抜けることを伝えた。

チーム決算の10月がキリがいいから、という理由だった。けれど、みんなが想像以上に引き止めてくれた。転職するギリギリまでいてほしい。なんなら北海道出ても、メンバーでいられるんじゃないか。

ぼくが北海道に来た今年の1月、こんな人たちに囲まれているなんて想像つかなかった。誰も友達がいなくて、大雪に見舞われて、塞がれるような気持ちでうずくまっていた。

いつの間にか雪は溶けた。お祭りが始まった。共に踊る人たちが隣にいた。北海道は思っていたより、あたたかい場所だった。

隣にいる人たちのために、もうちょっとだけ踊ってみようと思う。

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