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パンみみ日記「チケットを2枚買っても一緒に行く誰かがいるということ」


日々のできごとをかき集めました。パン屋に置いてある、パンの耳の袋のように。日常のきれはしを、まとめてどうぞ。5個くらいたまったら店頭に置きます。



5月14日(日)
親友のミネくんと夜ごはん。ミネくんと会うときは、もう1人ゲスト的な人を呼んで3人でごはんを囲むことが多い。ラジオ的なシステム。

今日のゲストはヤンコ。ヤンコは前の会社の東北の同期。ぼくが福島にいた頃、よく遊んでいた。

ヤンコはおしゃべりなのに聴き上手で、いつも人を褒めてくれる会話のスペシャリスト。一緒にいるととても居心地がいい。

ぼくとミネくんでゲストを呼んだときには、なるべくゲストが「今日のおしゃべり楽しかった」と思って帰ってもらえるように励む。ときには、ごはんのあとにミネくんと2人で「楽しんでもらえただろうか…」と反省会を行う。

今日もヤンコを笑顔にしたかったのだけど、彼女の相づちが心地良すぎて、ついつい自分たちの話をしてしまう。

この現状にミネくんが気がついた。

「まずいぞ、よさく!俺たちの話ばかりしてる!せっかく東京に来てくれたヤンコの話を今日は聴くんだ!聴き上手すぎるからって負けるな!」

はっ。危ない。気持ちよく話しすぎていた。ヤンコに質問を投げかけるんだ。

しかしヤンコのターンになっても、いつの間にか話題のボールを綺麗に渡されて、うかうかと口を開いている。意識を強く持たないと、楽しまされる側になってしまう。無限列車の炭治郎くらい意思が強くないとダメだ。

楽しい食事も、ヤンコの新幹線の時間が近づきお開きに。ヤンコを改札まで見送り、ミネくんと手を振る。

今回は完敗だった。向こうの会話パワーが強すぎた。あの子みたいに、気持ちよく人におしゃべりさせて幸せにできる魔法がほしい。



5月15日(月)
会社の後輩とランチ。後輩が、ぼくの上司であるサトイモ課長と飲んだらしく、その話に。

「サトイモ課長が酔っ払いながら、よさくさんのことめちゃ褒めてましたよ。仕事うまくやってくれるって。相当気に入られてますよ!」

まじか!サトイモ課長は気分屋のところがあり、ぼくのことを実際どう思っているのかよくわからなかった。結構意外だったので、すごく嬉しい。ホクホクした気持ちでオフィスに戻る。

早速、サトイモ課長に呼び出された。(あらあら、こないだぼくのこと褒めてくれたんでしょ〜)と浮き足立ちながら課長の隣へ。

すると、先日とある目標を達成してないことを冷たく指摘された。

「これ、今月はマジでやってね」
「…わかりました」

(え、私のこと好きだったんじゃないの!?なんでそんなこと言うの!?もうヤダ!キライ!)

心の中に住んでいる、めんどくさい恋人みたいな存在が出てきてしまった。今度は見返してやるんだから!


5月16日(火)
仕事終わりに図書館へ。前回借りた「独学大全」を返却する。独学大全は800ページ近くある辞書のような本で、表紙も黒くてイカつい。ピストルで撃たれたときに、「コイツのおかげで救われたぜ…」と胸元から出てきそうなほど分厚い。

学習についてのあらゆるノウハウがつまっており、何かを学ぶべき全ての人へ送る名著。しかし、正直この本はぼくにはまだ早かった。

漠然と何かを学びたい状態だったので、何か極めるべきジャンルを定めてから、またこの本を手に取りたいと思った。

少しソワソワしながら返却口へ。独学大全を借りたとき、司書の人に「ここで借りるのは初めてです!」と謎の宣言を行い、返却期限を伝えられたときには「そんなに借りられるんですか!!」と盛大なリアクションをしてしまった。

ゆえに顔を覚えられてしまっている可能性があるのだけど、返すときも同じ司書の人だった。

そして独学大全を返却しつつ、次に借りようとしていたのは吉本ばななの「キッチン」。鈍器のような本を左手に、素朴な文庫本を右手に。

司書の人に「こいつ、独学大全読みきれなかったんだろうな…」と悟られないか不安になる。完全にお口なおしとしての「キッチン」であることがバレる。「こちらの本、いかがでしたか?」とか聞かれたら終わる。どうしよう。

そんな不安も空振り、当たり前だけど淡々と返却と貸出手続きが終わる。

考えすぎた。とりあえず、帰り道のリュックはすごく軽くなった。


5月17日(水)
仕事終わりにLINEの着信。親友のミネくんからだ。彼が仕事終わりにぼくの最寄駅を通るらしく、よければ合流しようとのこと。

元々はお互い全国転勤で、社会人になってからはずっと違う都道府県に住んでいた。今は2人して東京勤務なので、こんなことができてしまうことを不思議に感じる。仲が良い人が近くにいるって、すごいことなんだね。

ミネくんが「パフェを食べたい」というのでファミレスへ。

ぼくは最近「佐藤ミケーラ倭子」(通称ミケちゃん)というYouTuberにハマっていて、とうとうファンミーティングのチケットを買ってしまった。しかも2枚。

事後報告でミネくんに一緒に行こうと伝えると、ミケちゃんの動画も観てないのに二つ返事で「いいよ」と言ってくれた。

思わずチケットを2枚買ったのに、一緒に行ってくれる誰かがいるということが、ぼくにとっての幸せのひとつなのかもしれない。

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