【詩】余波
余波
書き上げたばかりの小説
誰にも見られないように 川に捨てた
踊るように流れる小説
誰にも見られないようにしてたのに 猫は見てた
水に溶けるような言葉
知られずに消えてゆくのか
さよなら さよなら そう言って 手を振って
さよなら さよなら そう言って 帰宅する
忘れ去られたあの小説
誰にも読まれることなく 川の底へ
新しい言葉を探す
時に何かを切り捨てながら
さよなら さよなら そう言って 手を振って
さよなら さよなら そう言った僕は誰
もうこの部屋には何も無い
あの日流れてた小説も
もうこの部屋には何も無い
淋しい気持ちも束の間 猫が見てた
さよなら さよなら そう言って 手を振った
さよなら さよなら あの日の僕にさよなら
さよなら さよなら そう言って 手を振った