見出し画像

『フレーバー味覚麻痺』

『フレーバー味覚麻痺』


手にしたチューインガムを伸びに伸ばして
きみは手を子招きしてさ
「ここを渡ってご覧」
なんて言うんだ
「簡単だろ」って。

目が覚めたら
何もない誰もいない果てしない
砂漠に一人
温度を感じずに崩れたまま
手をついて見渡していたんだ

声だけ聞こえてさ
"ほら きみには なんにもなかったんだよ"
なんて頭が痛むほど響くんだ

空はきれいな青空なのに
とくべつ平坦で平筆で描いた
レタリングみたいだ
飛行機雲が走ったかと思えば
よく見ればペンキの塗り重ねた跡で

手を伸ばしたら
剥がれたんだ
ボロボロと音を立てて
君のきれいな外側みたいだ
あぁ見たくなかったな


ほんとうは覗きたかった
君がどうやって
筆の端を噛んでるのかなとか
一生に使った
雑巾の数なんかをさ


そんなこと考えたからだよ
きみに高層ビルから
飛び降りることを勧められるなんて
そんなうれしそうな笑顔

見たことないよ










この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,255件