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『夜のデザートを、ひとくち。』

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『夜のデザートを、ひとくち。』


その世界はない。存在しない。けれども、わたしの中にはある。あんなキラキラした写真に映るあれが現実にあるわけない。この世界のどこにだってない。ないのに、あの人もあの人もあの人も、わかってくれる。その世界はないはずなのに、たしかにここに存在している。ふれることのできないデザート。ひとくち。それは思い描くだけで、ふわふわしていたってあまったるくたっていい。レモンピールのようなアクセントに気取ってるなんて一言で片付けるやつは何も食うな。端と端をつなげたって、見えないんだから意味がない。大切な真ん中の丸があるはずなのに、他のところばかり映し出されて、何も掴めないなら何も見えていないとおんなじだ。見えないからっていって、ないことになるのはそっちの世界だけで、こっちの世界ではいまもむかしもあるままだ。むかしから、ずっとあるんだ。



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