【第一の人生】50の章:先生と呼ばれる人だから偉いって訳じゃないよね
*登場人物*
萬里→普通の主婦(まだ自分の能力自覚なし)ダーリンの治療についていってる・ダーリン→萬里の夫(足の治療のため、うっち先生や裏先生にお世話になっていたが、やっとその怪しさに気がつき始めた)観察力がない
うっち先生→大分の整骨院の先生(氣を操る事ができるようになった途端カリスマ的人間になったらしい)萬里はこの人間性が嫌い
裏先生→奇跡を起こすカリスマ気功師(うっち先生はこの方から氣を習った)萬里は催眠術師だと思う
『氣』『気功』と称したパフォーマンス
実際見ても、
やっぱりテレビで観たのと
同じような感覚
「うっそだ〜!!」としか
言いようがない
これが本当に『氣』なのだろうか?
なんかいまいち『気功』自体が
まがいものにしか思えない
裏先生のやってることは
やっぱり確実に催眠術だと思う
これを混同して
『氣』だと思ってる人達が
全国にたくさんいる
これで助けられた!
これで治った!
という人々はたくさんいるのかもしれないけど
本当は
これは恐ろしい事ではないのか?
と萬里は思った
裏先生の口からは、
『遠隔』で氣を飛ばすという話も出ていた
『遠隔』に関しては、
村さんからダーリンの浄霊を
してもらったこともあったので
実際にあることだとは思っている
だけど裏先生の言う遠隔は、
「毎日みんなのために
一人一人に向けて氣を飛ばしています、
その瞬間
私の意識があなたの元へ行き、
それを示すかのように
線香の香りが漂うので
私が氣を飛ばしていると
皆さんにもわかるんですよ!」
んなもん、わかるかぁ!
今回の講演&治療会でも
何も分からんかったのに、
遠隔で氣を飛ばされたところで
線香のニオイがしたからといって
それが何になる?
お金のためにやってる人が
毎回集まる50人全員のために
毎日丁寧にやってる訳が無い!
そんな大きな口叩くから
余計に嘘くさい
裏先生武勇伝として聞いた話、
骨折した車いすの人が
先生の治療で
その日のうちに歩いて帰った・・・
裏先生のやり方だと、
意識をコントロールしただけで
物理的に実際の骨折部分は
つなぎあわされているはずがない
脳を騙せたとして
意識では歩けるつもりになって
痛みも感じず、
普段通りに過ごせたとしても
物理的な不具合も騙せるものなのか?!
それは疑問
後々状態が悪化しても
いつでも駆け込める病院とは
違うから、裏先生は
全国飛び回ってると言えば
どうにでも逃げられる
その場、その会場では
ダイナミックなパフォーマンスではあるが
無責任な気がする
これはあきらかに
催眠術による金儲けの詐欺師だ!
悪坊主の『ツル先生』とも
重なるものがある
人の為ではない、
人の為と称して自分の為でしかない!
萬里はそう思う・・・
それからも月一で
沖縄での治療会が行われるように
決まっていた
ダーリンは毎月
確実に1~2泊して沖縄まで通っている
信じるものは救われる?
今まで仕事に支障が出るほどだった
足の痛さは回復しているという
信じてる間は
何を言っても無駄だし
信じてる間は効果も大きいのかも
この頃はちょうど、
萬里の叔父さんが原因不明の病気で
闘病してて、
いろんな治療法を試している時でもあった
藁にも縋りたい時だったから、
ダーリンは叔父さんとその息子を
裏先生の治療会へ連れていった事もあった
沖縄だし
気分転換にもなって良いし、
もしかしたら
叔父さんには何かしらの効果が
あるのかもしれない
という期待もあったので
黙って見守ることにした
(このおじさんの話も後ほど)
ただ気になっていたのは、
その会の参加費と
毎回の個人治療の費用
萬里は、
金額を一度も聞いたことがない
うっち先生のとこでの治療も併用しているが
沖縄治療会以来、
その回数は減っている
なぜなら、沖縄へは毎回
うっち先生も通っているから
うっち先生は、
この『氣』を極めるつもりで
裏先生に弟子入りしてるようだ
それから1年ほど経った、
まだ暑さが残る頃
その日も
ダーリンは沖縄へ行っていた
ダーリンの誕生日が
ちょうど治療会の日
萬里は自宅で深夜までテレビを見ていた
毎度、打ち上げで
ダーリンから報告の電話は
夜遅くにあるから
その時に「おめでとう!」を
伝えようと思ってた
相変わらず、
まともに寝れない萬里は
いつものようにニュースを
ボーっと眺めてたんだけど
急にゾワーっと
寒気と鳥肌に襲われ
「何事!?」と思うと同時に
突然切り替わったテレビ画面
9.11の瞬間
目が釘付け、
恐怖感と圧迫感
なんともいえない感情で
胸が締めつけられた
それから数か月
その感覚は後を引く
この時、この感覚が
何なのかはわかっていない、
単に見た事のない
衝撃的な映像で何かしなきゃと思いつつも
何もできない自分が
もどかしくなったのだと思っていた。
世界が大きく動く出来事を観て
これに比べれば
萬里が出くわす出来事なんか
小さなことだと感じる
萬里の視野も、
萬里がいる環境も
とても小さな世界
ちょっとした
死ぬかもしれない出来事が
萬里に起こったとしても
それで世界が変わることはない
萬里は
簡単に死なない気はするけど・・・
じゃあ、
その死なない自信を基に
世の中のために何ができるか?とか
9.11の一部始終を
映し出す画面を観ながら
何かしなければ!と
焦ったのを覚えている
萬里って
大したことない人間だ
なぜか
9.11を境に
沖縄行きがなくなった、
そのいきさつは知らない
沖縄以来
萬里はうっち先生には
会っていないが
久しぶりに
ダーリンに誘われて
うっち先生の整骨院へ付いて行った
萬里はもう
治療を受ける気はない
大分へ行く道中、
うっち先生の整骨院は
保険適用をやめて
自費払いに変えてしまったと
聞いていた
なので、久しぶりでも
予約の受付のみで
保健証は出す必要がない
が、待合室にいると
やはり、
保険が使えなくなったことを
知らない年配の患者さんが
次々にやって来る
受付のおばちゃんが
必死で対応する中、
次々と来院する患者さん達
同じことで繰り返す対応に
イラついたのか
うっち先生が受付に出てきた
患者に向けて
うっち「うちはもう保険は使えんと!
金がなくて保険使って治療したいんなら、
他の治療院当たってくれ!
自費でいいなら
予約入れてから来んね!」
は?前にも増して上から目線
そして露骨に
『金』という言葉を吐いた!
なぜこんなに偉そうなんだ!?
今までうっち先生を慕い
ついてきた患者さんたち
お年寄りの
しょんぼりした後ろ姿を見て切なくなった
こんな言われたのが萬里だったら
どんなにショックだろう・・・
沸々と怒りが湧く
が、
萬里は一応大人なので
ひとまず平静を装う
一体、なぜうっち先生は今まで以上の
酷い奴になったんだ?!
偉そうに大声で喋る
うっち先生の顔に吐き気がする
うっち「大金はたいて
裏先生の所で氣を学んだ。
自分は『氣』を使いこなして
身体を治療することが
出来るようになったから、
もう汗だくになって
人をマッサージする必要もない!
ただ身体に手を当てて氣を流せば
悪いとこはすぐ良くなる。
だから、貧乏人の相手はやめて
ある程度私の価値がわかって
出し惜しみしない納得してくれる患者しか
私は診ない!!」
は?結局は金?
あ~もう、全てが
どんどんおかしくなっていく
そして、うっち先生自ら
整骨院に顔を出して
直接手技を施す日は
週に3回となった、
他の日は弟子が診るらしい
うっち先生直々の
治療を受けられるのは
レアなことであって、
VIPな金持ちしか可能ではない
ということか・・・!?
いつの間に弟子が出来たんだ?!
いつの間にこんなに偉くなったんだ?!
この日の患者さんに対する
対応を目の当たりにし
裏先生の如く
『氣』を語りだしたうっち先生に
やっと不信感を抱きだしたダーリン
気づくの遅い・・・
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