保育園の法務

 昨年、認可保育園を2つ運営している社会福祉法人の理事長に就任しました。以来、月に1度「管理者会議」と呼んでいる会議に出席しています。参加者は両園の園長及び主任、前理事長、労務を担っている社会保険労務士の理事、そして自分です。

 管理者会議に出席するようになってから、他の法人や保育園はどうやっているのだろう?と関心を持つようになりました。というのも、うちの法人は弁護士である自分が理事長を務めているので、労務や保育事故への対応、損害保険やリースなど各種契約に関することを、議題になったその場で判断してしまえます。いずれも適切に判断するためには、一定の法的知見と情報が必要です。しかし多くの保育園には理事者に弁護士はいないだろうし、まして経営の中心メンバーに弁護士が参画している保育園となれば更に少数でしょう。

 今日の議題の一つにリース契約のことがありました。世間や業者が「リース」と呼んでいる契約形態には実は様々なバリエーションがあり、その「リース」がどのようなものであるかは契約書を読んでみないと分かりません。リース契約の適否を判断するにあたってはリース物件の性能や必要性、金額だけでなく、契約条件の精査も必要です。だから今日の会議でも自分は「契約書を見せてください」と言いました。契約書を見てみないと、それがどのようなリースなのか分からないからです。
 以前、保育園の敷地を出たところでの事故について損害保険を使えるかどうかが議題になったときも、自分は同じことを言いました。「契約書(約款)を見せて下さい」と。損害保険の内容もそれなりにバリエーションがあり、その適用範囲はやはり契約書を見てみないと判断がつかないからです。
 何か課題なり議題なりが俎上にのぼってきたときに、法律家以外にはそれが契約の問題であるかどうかの峻別などつかないし、そもそも契約か否かを検討する思考自体がないことを改めて痛感しました。仮に契約の問題だと認識しても、契約書の内容を読むことには相当のストレスが伴うことでしょう。

 今までも何度か保育園や幼稚園から依頼され、保育事故への対応や労働事件の代理人を務めたことはありました。しかし、それらはあくまで外部の弁護士としての関与です。約款を読んだ上で保険会社との交渉を担ったこともありましたが、それでも上記のように保育園で日常的に法的判断を要することがあるとは考えてもみませんでした。

 理事会や評議員会には様々なバックボーンを持った人々が集っているとはいえ、多くの保育園で日常的に運営を担っているのは保育士である管理者でしょう。そういった人たちも一度管理職となれば、経理や労務その他法務について判断をしなければなりません。

 自分は、保育士である管理職には可能な限りその本来の専門である保育に集中して貰いたいと考えています。その程度が、子どもたちの日々の暮らしと権利保障に直結していきます。
 それを実現するために各園の法務労務は自分が外部弁護士として引き受ける、それによってうちの法人で実施しているのと近い状態を実現する、そういった保育園向け法務支援を来年2月から業務化して提供していきます。
 続報をお待ち下さい。

以上


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