見出し画像

途上国ベンチャーで働いてみた:部門別業績を可視化する(通算10日目)

2019年6月、バングラ駐在が始まって10日あまり、まず最初に私が取り組んでいたのは、現場の業務内容を数値で可視化することだった。

私が赴任する1ヵ月ほど前から、毎月10日に営業会議が開催される決まりとなっており、それまでに各部門のリーダーが収支計画と実績、そして次の1ヵ月のプランを資料にまとめて発表することになっていた。
よくよく話を聞いてみると、どうやら現地CEO鶴の一声で始まったらしいこの仕組みについて、各部門リーダーの現地職員6名は意図を理解できておらず、とまどいながらも一生懸命慣れない資料づくりをしていた(写真はリーダーの一人、Urmi)。
が、その資料を見せてもらうと、どこからやってきたのかわからない数字の羅列、根拠不明な達成目標、売上と費用のダブル計上など、実態から離れた数字が独り歩きしていた

そもそも、バックオフィス担当(特に財務経理)として派遣された私は、到着直後に現地CEOから「この7ヵ年事業計画数値を見て、問題がないかどうか教えてください」とExcelファイルを渡された。
私はバックグラウンドが銀行員なので、事業を数値化する/数値から事業状況を予測することはできるが、経理業務は門外漢な上に、事業内容も理解していないのに数字を見て問題があるかどうかを判断することなどできるわけもなかった。決算資料をみておかしな点がないか確認する監査業務というものはあれど、それはまた目的が異なる業務である。この辺りは、営業やマーケティング、IT出身の人たちからするとやや理解されづらいところらしいが、領域横断の人材が集まって事業を推進する場合、いずれの分野であっても何を目的とした業務を頼みたいのか、ということが常に明確でなければ、活かせる人材も活かせないのだなあ、、ということを、この後駐在中の2年間継続して実感することになる。

ともかく、足下の事業内容をしっかりと把握することが先決と考えた私は、各部門のリーダーやメンバーから詳しく日々の業務についてヒアリングをはじめ、自分なりに直近数ヶ月の収支実績と予測を立ててみた。ここで直面したのは、まず、リーダーの多くが簡単な算数ができない、という大きな壁だった。ヒアリングの内容と彼らが作った資料の内容が合わないので、一つ一つ認識のギャップを埋めていき、計算の背景にある考え方を説明したのだが、変数がどこにあるのか、ということを理解してもらうまでにかなり骨が折れた。

また、管理会計と財務会計のギャップ、そして収支の実態を現地社員につまびらかにすることは避けなければならないという途上国特有の考え方とどのように折り合いをつけるかという難しさにも直面した。

要するに、

① 現地の財務状況を把握して本社にレポートする立場としては、正確な財務会計資料を作らなければいけない
vs
② 事業実態を把握するためには正確な管理会計の考え方を導入しなければいけない
vs
③ 従業員には営業目標としてぎりぎり達成できそうな数値を自分で設定させることが目的で、事業全体の収支を把握させると強気な給与交渉をしてくる者や将来性に不安を感じて離職する者が出てくるため、うまく丸めた数字を見せなければならない

という、日本本社と現地CEOの異なる目線からの要求がごちゃまぜな状態であった。

さらに、毎月どころか半月ごとに新しいオペレーションが導入されたり既存のオペレーションを廃止したり、現地のリソース上継続できそうにないプランの検討も次々と降りてきて、予測はおろかタイムリーな実績把握だけでもかなりの困難を極めた

結論として、展開の早い途上国ベンチャーにおいて数字を整理する際には、以下のステップを踏むのが良いのではないかと思っている。

財務/管理会計

- まず事業全体の収支、売上明細、費用明細を少なくとも直近3か月分細かく書き出す
- 部門が新たにできたり消えたりするので、全体の収支把握に集中する
- 費用明細の内訳を部門別にヒアリングして分類化を進めつつ、オペレーションが安定するのを待つ
- オペレーションが安定したら、Quick Bookなどクラウド会計システム導入を検討する

業績管理

- まずは売上実績のみ部門別に数値化し、目標数値を立てる
- 部門別収支(利益)の把握はマネジメントレベルの管理会計に任せ、現場リーダーの目標数値とはしない(マネジメントが各部門の売上目標設定において最終責任を持つ

なお、クラウド会計の導入にあたっては、経費入力を担当する信頼できる現地職員が最低1名は必須である。また、小口現金管理と仮払金申請フローの構築については分けて考えないと混乱することになる。
このあたりについては、別途また書きたい。

(続)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?