ネガをポジに変えるネーミングの力
先日、東京都が「育休」の愛称を「育業」に変えると発表しました。
賛否両論ありますが、個人的にはいいね!の気持ちが強いです。
コピーライターの視点からも、名前を変えることは一定の効力があると思っているからです。
広告では商品やサービスに名前をつけることを「ネーミング」と言います。
良いネーミングは、ネガティブな印象をポジティブな印象に変える力を持っています。
「育休」への違和感
私は「育休」という呼び方に違和感を持っていました。
その違和感を紐解いてみると、以下のようなことが考えられます。
・育児は休んでいる状態ではないこと
・休むというのは企業視点の言葉であること
企業側からすれば「会社で働いていない状態=休み」になってしまうけど、育児をしている人からすれば、職場を離れても家庭で子どもの面倒をずっと見ている。
ここにギャップがあったのです。
「育業」になって何が変わるのか?
「休」を「業」にすることで、育児をする人の立場に言葉が置き換えられました。
そして、「育児は仕事である」とはっきり表現されたのです。
家事や育児は「シャドウワーク」とも呼ばれ、生活に必要不可欠なものでありながら、報酬を受けない労働です。
労働でありながら、仕事と認識されない。今までは「育休」という言葉が、シャドウワークの側面を強くしていた可能性があります。
だからこそ、「業=仕事」という言葉が効いてくるんじゃないかと思っています。
会社に対しても社員が「休んですみません」という姿勢ではなく、「家庭で働きます」という意思表示ができるので、男性の育業取得のハードルも下がるのではないかと期待しています。
「育業」の前にある「イクメン」の存在
今から15年前、2007年ごろに「イクメン」という言葉が生まれました。
新語・流行語大賞にも選ばれて、育児をする男性のイメージアップにつながりました。
「自分の子どもを育てるのに、イクメンってなに?」
「女性は当たり前にやってきたことなのに、男性だけ褒められるのはおかしい」
といった意見もあります。
たしかにそう。私も「イクメン」に違和感がないわけではありません。
しかし、「男性も育児をして!」という正論だけではなかなか刺さらなかったりする。今までなかった習慣を定着させるのは、育児に限らず難しいもの。
「イクメン」というキャッチーな言葉ができたことで、さまざまなメディアで取り上げられ、世間に「育児する男性っていいよね」という1つのポジティブな価値観が増えたと言えます。
それは男性が入りにくかった家庭への一歩を踏み出しやすくする。「男性も育児をしていいんだ」という気持ちにさせた点では、とても効果的だったと思います。
15年前と比べて、今では男性がベビーカーを押している姿をよく見かけます。育児は男性と女性のどちらがしてもいい。
「イクメン」という言葉が役目を果たしたかのように、「育業」にバトンタッチしていく。
「育業に励む人」みたいなフラットな言い方も、今後できるようになるんじゃないかと思います。
名前から変えていくのって悪いことじゃない
改称は表面的に見える試みではあるけれど、呼び方を変えることで今までの言葉の刷り込みが薄れて、社会の意識が良い方向に変わっていく可能性は十分にあります。
なぜなら、言葉のイメージって強いから。
私たちは言葉を通じてコミュニケーションをしています。何気なく使っている言葉が、ネガティブな刷り込みを助長させること、新しい価値観を妨げたりすることはよくあります。
「名前だけ変えたって意味がないよ」という人もいる。
一理ありますが、名前から変えていくのって悪いことじゃない。形ができれば、中身がついてくることもあると思うから。
ネガをポジに変換できると、新しい見方ができて、よりみんなが生きやすい社会になると思います。些細なことでもそういう変化に気づいていきたい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
他にも言い換えたらいいなという言葉があれば、コメントお待ちしています〜!
文:ハギ
@よりみちコピーライター
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