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コピーライターが教える読みやすいメール 〜敬語の使い方〜
毎日送るメールを、思い出してみてください。そこに広がっている光景を。渋滞です。敬語が渋滞しているのです。わたしたちは、無意識に敬語を使いすぎているのではないでしょうか?
敬語の渋滞で、文章は読みにくくなる
ある日、こんなメールが届きました。
よりみちさま
お世話になります。
何度もご連絡、申し訳ありません。
資料を添付にて共有させて頂きます。
次回の提案時にはコピーを入れたものを提案できれば思っておりまして
可能でしたら一度、来週のどこかで打ち合わせさせて頂きたく思うのですが、いかがでしょうか?
ご検討よろしくお願いします。
え? 誰だろう? 一瞬、混乱しました。お世話になります、ではじまったのでてっきり取引先だと思ったのですが、送り主を見ると同僚だったのです。
非常に丁寧に書かれていたのですが、わたしは読みにくいな…と感じてしまいました。その原因は、「お世話になります」「させて頂きます」「させて頂きたく」など敬語がたくさんあること。それに、全体的に文章がまどろっこしいのです。
まず、「お世話になります」。
最初に社外の人かな?と思ったのもこの言い回しのせいですが、手グセで打っている気がします。つまり、メールの相手が誰であろうとお構いなく、無意識に使っている。
そもそも、同僚からのメールで使われると違和感があります。丁寧なつもりかもしれませんが、逆にすごく距離を感じる。一緒に仕事する社内の人にここまでかしこまる必要はあるのでしょうか。
つぎに、「させて頂きます」。
これは爆発的に使われていて厄介なフレーズです。1つのメールに何回も出てくると一文がどんどん長くなり、結局何を伝えようとしているのかわからない文章になります。それでも、みんなとりあえず使ってしまう。
コピーライターの橋口幸生さんは『言葉ダイエット』という著書でこの問題を取り上げています。
ビジネスのメールであれば、「させていただきます」という書き方をするのは、相手にとってイヤな内容を書くときだ。
「納期の前倒しをご相談させていただければ幸いと存じます」
…といった感じだ。
しかし、ビジネスにおいて「嫌われたくない」という気持ちが強すぎるのは問題だ。相手にとって嫌なことを伝えなくてはいけない場面は、どうしても出てくる。「させていただけないでしょうか」を連発する人は、一見礼儀正しいようで、ビジネスより嫌われないことを優先しているのだ。
仕事では、相手にシビアなお願いをすることもあります。
そんな時に「させていただきます」「させていただけないでしょうか」を多用してしまう人は、相手にシビアな対応を求めながら「失礼だと思われたくない」「嫌われたくない」という自分本位な意識があるのです。
敬語の使いすぎで、顔が見えなくなる
「ビジネスメール マナー」などで検索すると、驚くほど過剰な敬語で塗り固められた例文がバンバン出てきます。どれも「こうすると失礼」「この言い方はマナー違反」など、ミスする恐怖を煽っているように見えます。
なんだかなぁ…。
コミュニケーションは自分が相手との関係をしっかり認識してから生まれるものなのに、この手のサイトにはルールだけがあり、わたしはちょっと気味が悪いです。
法政大学の椎名美智教授が、ある記事で興味深い指摘をしていました。
椎名:「させていただく」を使いすぎると、その人の「顔」が見えにくくなります。今、「させていただく」は「私は丁寧でちゃんとした人です」ということを示すマーカーのようになっていて、皆がマーカーを掲げて、安全な「させていただく」シェルターの中に入ってしまう。喋っている人の顔が見えなくなるくらい奥深く入り込んでいるように感じますね。」
先ほどの同僚からのメールに混乱したのも、文面から「顔が見えなかった」からなのです。
敬語の渋滞、今すぐ解消しよう
のっぺらぼうメールにならないため、そして読みやすさのため、敬語の渋滞を解消してみましょう。
冒頭に紹介した社内あてのメールを例にやってみます。
(元メール)
よりみちさま
お世話になっております。
何度もご連絡、申し訳ありません。
資料を添付にて共有させて頂きます。
次回の提案時にはコピーを入れたものを提案できればと思っておりまして
可能でしたら一度、来週のどこかで打ち合わせできたらと思うのですが、いかがでしょうか?
ご検討よろしくお願いします。
↓
(改善メール)
よりみちさん
資料を送ります。
これを参考に、コピー案を書いてほしいです。
来週打ち合わせたいので、空いている時間を教えてください。
ここがポイント
・要点以外は削る
・敬語を使いすぎない(です・ますにする)
どうでしょうか、内容がスムーズに頭に入ってきませんか。それに元メールよりクリアに理解できるはずです。短すぎて最初は不安かもしれませんが(笑)慣れれば大丈夫です。
です・ますなどの丁寧語は、その名の通り丁寧な言葉遣いなので失礼にはあたりません。同僚に送るメールなら充分です。
もちろん、敬語禁止!と言いたいわけではありません。メールやテキストを送る相手が誰なのか、同僚なのか取引先なのかお客様なのかで文章は変わるものであり、自分とどういう関係なのかを考えてから使いませんか、ということです。
それが本当の意味で相手を「敬う」コミュニケーションになるとわたしは思うのです。
今回のまとめ
✔︎敬語が渋滞すると文章は読みにくい
✔︎敬語を使いすぎると顔が見えなくなる
✔︎相手との関係を考えて敬語を使おう
読みやすいメールの書き方については、「ダメな例」を使って解説したこちらの記事もぜひ参考にしてください。
文:シノ
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