カフェラテ夫婦
今回のnoteは、1年前の育休中に書いた日記です。
私は、1日に5杯は飲むコーヒー党。
「コーヒーに不純物はいらない」と硬派なブラック党を通しているが、その割には豆や煎れ方には詳しくない。手間いらずなインスタントコーヒーが最高と思っている、基本めんどくさがりな性格だ。
一方で、夫は無類の牛乳好き。スーパーの買い物カゴには、いつもこっそりと牛乳を忍ばせてくる。
(私は、牛乳が苦手で全く買わないので)
ちなみに、コーヒーはまったく飲まない・・・はずだったのだが。
* * *
ヴィィィィーーン、ゴゴゴゴゴ・・
とある休日の朝、キッチンのコーヒーマシーンの音で目が覚めた。友人からもらったバリスタは、私の専用機だったはずだ。
「おはよ。カフェラテ作ってたけど飲む?」
キッチンを覗くと、ホカホカと湯気をたてたマグカップを手にした夫が、そう言った。
「バリスタでつくったの?」
「そう。最近、会社にエスプレッソマシーンが設置されたから、試しにカフェラテつくってみたらハマってね。ちょっと家でも作ってみた。ヨリの分も煎れようか?」
「・・じゃあ、せっかくなので」
たまには、カフェラテも良いかなと一口飲んでみると、確かにおいしい。
「牛乳とコーヒーのバランスが難しいんだよね。会社のマシーンでちょうどいい牛乳の量を研究したんだ」と自慢げに語り始める夫(仕事をしろ、仕事を)。
以来、20年ちかくブラック党だった私は、次第に自らカフェラテを作るようになった。
いつもは「コーヒーを買ってくる私」と「牛乳を買ってくる夫」
だんだんと、これまでの均衡がくずれ、私も牛乳を夫もコーヒーを買うように・・
* * *
3連休最終日の朝。
体が重く、どうしても布団からでることができない。
2人の子どもはいつも通り6時すぎに起きだし、布団の上で遊びはじめている。が、そのうち「お腹すいたよ、遊んでよ」となるだろう。うーん、まだ眠いのに・・
と、グズグズしていると、そのうちに夫が起きて子どもたちをリビングへ連れていった。
「ありがと」
まどろみながら心の中で夫にお礼。そして、「ごめん、もう少し寝させて」
つぎに目が覚めたとき、部屋のなかはとっくに明るくなっていた。
あれから1時間以上も寝ていたようだ。
私もリビングへ行くと、夫が子どもたちにご飯を食べさせている。一人で朝ごはんの準備をしたり、オムツを替えたり...ゴメン、大変だったよね。
「おはよう。あと、ありがと」
そう言って、私は台所に残されたフライパンや使った食器を片付けはじめた。
お皿を洗いながら、ぼんやりとつかみどころのない思考が頭のなかを漂う。
平日の朝は、私がワンオペ育児。
「私はいつも、これを一人でやってるのに」
「夫はいいな、途中でこうやって手伝いしてくれる人がいるんだもん」
・・あ。まずいまずい。今、ブラックモードになっているな、自分。
その日の午後は、家族で近場のショッピングセンターに出かけた。
店に到着すると、いつものトーマスの絵柄が描かれたカートに乗り込む3歳上の子。1歳下の子は夫に抱っこされている。
すると、突然、夫が私のほうを振り返って言った。
「1人でスタバでも行ってくる?」
「え。大丈夫?」
「いいよいいよ。2人とも機嫌いいし、このまま少しプレイジムで遊んでくるから」
というわけで、降って湧いたお一人さま時間。
今日は、本も持ってきてないし、少し手持ち無沙汰のままテラス席で道行く人を眺めながら、まだボンヤリと考えごと。
「たぶん、夫は、最近機嫌がわるい私を気づかってくれたんだろうな」
ふと、スタバで注文したカフェラテが目に留まった。
「私はいつからカフェラテを頼むようになったんだろう…」
そういえば、私はずいぶん前からブラックコーヒーを飲まなくなっていた。
習慣はゆっくりと変わっていく。長い時間を一緒に過ごす人に影響されて。
私の「自分ばかり頑張っている」と思い込むブラックな一面も、少しずつ牛乳で薄まっていけば良いのに。
夫のさりげない気づかいとか、温厚でどーんと構えた性格とか、今までずいぶんと救われてきた。
そんなことを考えながら、あらためて今日の夫に感謝するのだった。
* * *
「どうして急にコーヒー飲むようになったの?」と夫に聞いてみたところ。
「うーん。べつにコーヒーが飲みたいわけじゃないんだ。・・気づいちゃったんだけど、じつは『カフェラテ』って、いちばん牛乳が美味しく感じる飲みかたなんだよ」
あたかも世紀の大発見かのように、夫はコッソリと教えてた。
「カフェラテにすると牛乳の甘さが引き立つんだ!」
・・あくまで牛乳メインな夫でした。
混ざり合ってもっと美味しく。なれるといいな私たちの関係も
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