見出し画像

神頼みの謙虚さ

稽古場での最終稽古を終えた。
いよいよ劇場入りし、本番を迎える。

今回通っていた稽古場は上野にあって、歩いて行ける距離のところに“小野照崎神社”という神社があった。

その神社の有名なエピソードで言えば、俳優の渥美清さんが「タバコをやめるから売れさせてくれ」と神様にお願いしたところ、寅さんの役に抜擢されたというものだ。
渥美さんは寅さんを演じている最中も小野照崎神社の御守りをぶら下げていたとかいないとか。

その逸話を聞いてすぐ、ぼくは小野照崎神社を訪れ「モテたいという気持ちを捨てるから売れさせてくれ」とお願いをしにいった。(願いはまだ叶っていない)

せっかく近くで約一ヶ月間稽古をしていて、その神社を訪れないのは勿体ないし、舞台の成功を祈願しておこうと思ったのだ。

今回の座組はさまざまな出自の俳優たちが揃っている。
共通言語はないし、それぞれの芝居スタイルも全然違う。
そんな集団をまとめきった演出家を尊敬するし、演出家という職業に対しても頭が上がらない。

そんな中でぼく自身、ものすごくワガママを許してもらっていた。
自分のやりたいことをやって、勝手に整合性をつけていく。本当に自由だった。

もちろんその自由さをただ謳歌するわけにもいかず、自分を律することに重きは置いていたとは思うけど。

そうなったときに、気づくと謙虚さが失われていたりする。
ちょっとした挙動や言動に棘が出ていたり、穿った物の見方をしていたり。
正直、“狭い”ところに入っていっている自分自身に気づいていた。なのにどうしようも歯止めが効かなかった。

きっと稽古場の近くに小野照崎神社があったことは必然だったのだと思う。

ぼくは謙虚さを失ったと思ったとき、神社を訪れるようにしている。
以前は出雲大社まで行って、謙虚さを取り戻せるように神様にお願いした。

「謙虚に、ことばを大切に、頑張らないことを頑張る」

出雲大社でお願いしたことだ。

今回、小野照崎神社の芸事の神様にお願いしたことは

「謙虚になります。そして自分のエゴを捨てます。なので公演を成功させてください。」

ひたすら謙虚に、怪我なく、あわよくばもう少し大人に。
どうか神様、よろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?