見出し画像

遠回り療法

家にいると不健全になる気がする。かと言って、外に出ていくような場所もない。
なので夜ご飯をテイクアウトすべく横浜まで出かけてみることにした。

みなとみらいにお気に入りの麻婆豆腐のお店があって、普段はお店でランチを食べたりする。
そんなお店が昨今の状況もあってテイクアウトを始めてくれたのだ。

好きなお店の好きなごはんが家で食べられるようになったのはものすごい朗報な気がする。

じゃあそのお店への道中をひたすらに遠回りしてやろうと思った。
もちろんご自慢のカメラと一緒に。

ぼくの中に行ってみたい場所のストックがあったりする。
わざわざそこを目的に行くほどでもない、みたいな場所ストック。

今回、選んだのは川崎の工場エリア。いわゆる京浜工業地帯のど真ん中。
そこに海芝浦というJRの駅がある。
その駅は基本的に一般人が使うことはなく、東芝の社員しか使うことがない。そのために改札から出るには東芝の社員証が必要になるのだ。

駅は埋立地の先端に作られ、ほぼ海に浮かんでいるかのような感覚。

でもそんな駅、何かのついでじゃなかったら行かないし、よっぽど暇じゃなかったら行かない。

駅に到着すると、明らかに自分の住んでいる世界の空気感と違う。
人工感があるのにひとの気配がしない。
とても面白い非日常体験になったが、お店があるわけじゃないし、折り返しの電車が行ってしまうと何もない場所で、ひたすらに次の電車を待たなきゃならないので、15分くらいで立ち去ることにした。

その後、横浜の元町に移動して、お気に入りの服屋を久しぶりに見て

「ああ、やっぱりこのお店の感性が好きだなあ」

と再確認し、中華街を目的もなく歩き、馬車道で冬の足音を聴いて、麻婆豆腐のお店にようやくたどり着いた。

麻婆豆腐をテイクアウトした後、家に帰ろうと思ったら電車が車両トラブルで途中の駅で折り返し運転になってしまい、意図せず遠回りして帰ることになった。

麻婆豆腐は少し冷めてしまったけど、何かと遠回りした1日。

長時間、外の空気にさらされて、いつも通りの日常に3歩くらい近づいた気がする。

明日からもたくさん遠回りしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?