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自動販売機の仕様に学ぶ

私は少々あまのじゃく的なところがあって、世の中がAIだChatGPTだと最新の技術動向に目を奪われていればいるほど、レガシーな技術の方に目を向けてしまうところがあります。

レガシーな技術といえば色々あると思いますが、自動販売機もその代表格と言えるのではないでしょうか。自動販売機を目の前にして、ドリンクには目もくれず自販機自体をまじまじと眺める人がいたらそれはもう・・・素質ありますね!!

自動販売機をよく見てみると、おそらく下の方に、機器の仕様が書いたラベルが貼ってあると思います。
今回は、そのラベルに書かれたことを取り上げながら、自動販売機の仕様から色々な理系的なことを学びとってみます。

まずはラベルを見てみよう

これがラベルの一例です。

どんな情報が載っているか、見ていきましょう。

  1. メーカー

  2. 定格電圧

  3. 定格消費電力

  4. 定格周波数

  5. 地球温暖化係数

  6. 年間消費電力量

  7. 冷媒

他にもありますが、こんなところにしときましょう。

あたり前だけど、つくり手がいる

はじめに、メーカーの記載があることを確認しました。今回の場合は、富士電機です。

当たり前ですが、いくら自動販売機がありふれているからといって、勝手に湧いて出てくるものでもなければ、誰も彼もが気安く作れたりするものでもありません。

作れる業者が、作っています。

「あたり前だ、バカにするな」と思われるかもしれませんが、これは結構大事です。

たとえば今回みたいに、もし機器の仕様を確認したくなったら、そのメーカーのカタログなりHPなりを確認すれば、情報が得られます。

また、よくハンドメイドと産業製品を対比させて、「ハンドメイドは作りての思いが感じられて味わい深いけど、産業製品は画一的で無味、機械的で冷たい」と評価する人がいます。

しかし、産業製品とて、裏で支えているのはやはり、人なのです。ただ、それが個人ではなく、多くの人の集合体、組織、企業、団体なだけなのです。

産業製品から面白みや味わいを感じられないとすれば、それは単に修行不足と言わざるを得ません。

その一歩を踏み出す意味でも、まずは作り手が誰なのかということに意識を向けることは、非常に大切です。

定格って、なんだよぅ

定格電圧に定格消費電力、定格周波数。
定格尽くしですね。

さて、定格とはなんでしょうか。
Wikipedia 上の定義はこうです。

定格(ていかく、英語: rating)とは、機器や装置、部品などについて、指定された条件における仕様、性能、使用限度などのこと。

Wikipedia 

今回のケースでは、定格電圧100Vというのは、「100Vで使ってね」ということです。

定格周波数50Hz/60Hzというのも同じく「周波数50Hz/60Hzで使ってね」です。

一方、定格消費電力308/343Wというのは少しニュアンスが違います。この場合は、「電圧100V、周波数50/60Hzで使えばこうなります」です。
まさに先ほどの定義のとおり、「指定された条件における仕様、性能」ということになります。

電圧って、なんだよぅ

電圧という言葉自体は、理系でなくても良く知られてますね。乾電池の電圧が1.5Vというのも、広く知られていることでしょう。

ところで、電圧ってなんでしょう。文字通り、電気に圧をかけること、電気にかかる圧、です。

「圧をかける」というのは日常的にもよく使う表現と思います。ヒトに圧をかけてもテコでも動かない場合があるのと一緒で、電気に圧をかけても電気が動く(流れる)とは限りません。

その一番身近な例が乾電池です。乾電池自身は、新品であれば1.5Vの電圧を持っています。つまり、1.5Vという圧で常に電気を流そうとしています。

でも、乾電池をただそこに置いてるだけでは電気が流れないことは、おそらく誰でも知ってますよね。置き時計に入れたり、おもちゃに入れたり、懐中電灯に入れたり…

要は、乾電池を入れることによって、乾電池の+と−の間に道を作っているのです。そうすると電気が流れます。

乾電池を捨てるとき、セロハンテープで+極か−極を覆うこと、とどこかで聞いたことがあるかもしれません。これも一緒で、要は+と−の間を結んで電気の通り道ができるのを防いでるのです。

そういうわけで、電圧というのは「電気を流そうとする圧」です。

消費電力と消費電力量って、なんだよぅ

もっと厄介なのは、消費電力です。
消費電力という言葉自体はよく耳にすると思います。家庭用の電子レンジを見ると、500Wとか600Wとか書いてありますね。あれです。

消費電力は文字通り消費している電力、と理解できますが、そもそも電力ってなんでしょうか?これが実は、多くの人はわかっているようでわかってないのではないでしょうか。

細かいことを抜きにして雑なことを言うと、電力というのは「電気の持ってるエネルギー」です。

どの辺が雑かというと、正確には「電気の持つ単位時間あたりのエネルギー」だという点です。

この辺は電子レンジで考えるとわかりやすいでしょう。500Wで1分間レンチンするのと、5分間レンチンするのとではワケが違うのは明らかですね?何が違うかというと、与えてる熱の量(熱量=エネルギー)が違うわけです。でも500Wというのは同じ。500Wって何?っていうと消費電力です。

消費電力は同じだけど、レンチンの時間が違うと与えるエネルギー(熱量)は違う。つまり消費電力というのは、同じ時間で消費する電気エネルギーということになります。具体的には、1秒あたりに消費するエネルギーと決まっています。

これが「単位時間あたり」ではなく、単純に「消費した電気エネルギー」となったものが「消費電力量」です。たとえば1kWの消費電力の機器を1時間使った場合の消費電力量は1kWhと表します。

周波数って、なんだよぅ

周波数とか高周波とかいう言葉も、聞いたことのある人は多いことでしょう。で、周波数って何?って話です。

英語でいうと周波数はFrequency です。これを逆に和訳すると「頻度」になります。

周波数を一言で表すと、「頻度」ということに尽きます。50Hzというのが何かと言うと、「1秒間に50回」という意味です。60Hzも同様です。

電気界隈でよく聞く単語かもしれませんが、実は周波数というのは電気現象に限って使われる用語ではありません。このことを知っているだけでも、ちょっと理系っぽいでしょう。

たとえば1秒間に2回揺れる地震であれば、2Hzの振動なんて言うこともできます。

電力の世界で言う周波数50/60Hzは何でしょう?これは、電気(電子)が行ったりきたりする繰り返しの頻度が1秒間に50/60回あるということです。

電気には直流と交流があるというのは聞いたことのある人も多いかもしれません。この交流というのが「行ったり来たりする電気」で、日本含め、電力の大半は、この交流という方式で発電所から家庭にま送られてきます。

なんで行ったり来たりするのかというのは、発電所での発電の仕方によるところなのですが、詳しいことは今回はスキップします。交流にすることで、電圧を上げたり下げたりするのが簡単になるというメリットがあります。

地球温暖化係数って、なんだよぅ

地球温暖化係数というのは

二酸化炭素を基準にして、ほかの温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるか表した数字

全国地球温暖防止活動推進センター

です。

上記の自販機はこの係数が4ということなので、二酸化炭素の4倍は温暖化効果があるということになります。数値が小さい方が環境に優しいということですね。

何の地球温暖化係数?という話ですが、「冷媒」が、です。
冷媒というのは漢字から察せられるように、自販機の飲み物を冷やすために使われる物質です。
この冷媒を膨張、圧縮させることで、自販機の内外で熱の移動を行っています。

冷媒の膨張、圧縮による熱移動を利用して加熱冷却を行う機器をヒートポンプといいます。

冷媒は通常は外に出てくるわけではないので、その限りでは環境に害を与えるわけではありません。あくまで、漏出した場合に問題になるということです。以前使われていたフロンガスは、地球温暖化係数が数十〜一万程度あったので、4という数字は圧倒的に改善されたものだとわかると思います。

まとめ

以上、自動販売機の地味なラベルから、理系的な小ネタを色々引っ張り出してみました。

今回取り上げたキーワードは、決して自動販売機だけに通用するものではなく、エンジニアの世界ではごく一般に使われるものばかりです。

これらを押さえておくと、理系沼にまた一歩、近づくかもしれませんね。

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