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金利を上げずに円安を止める方法 - 日韓が連携してドル高是正の声を上げよ

昨日(10/30)のサンデーモーニングを見ていたら、円安のニュースで黒田東彦が記者会見する映像が流され、その中で「何度も申し上げておりますように、金融政策は為替を目的にしておりません」と言い放っているのを耳にして驚いた。それ以上に驚愕し呆れたのは、スタジオに居並んでいるコメンテーターが、誰も、一言も、その暴言場面にチェックを入れず聞き流して放置したことだ。世の中どうなってしまったんだろうと嘆息する。おそらく、10/28 の会見の場に臨んでいた記者たちも、誰も、一言も、この暴言に疑問や反論を入れなかったのだろう。日銀担当のマスコミ記者だから、一応、ブランド大の経済学部卒がアサインされていると想定される。

中央銀行」とGoogle検索してみよう。Wiki の情報が出力され、「通貨価値の安定化などの金融政策も司るために『通貨の番人』とも呼ばれる」という説明が目に入る。「物価の安定と金融システムの安定が責務です」と説明しているサイトもある。物価の安定化と通貨の安定化が中央銀行の使命だ。このことは中学3年の社会科(政経)で習う基本的事実である。通貨が異常に高騰したり下落したりしないよう、安定的に維持することが中央銀行の任務であり、通貨円の安定と信頼を守り、日本の国民生活を守るために日銀の金融政策はある。今、これほど円の通貨価値が暴落し、為替の影響で物価が高騰しているのに、この中央銀行総裁の言い草は何なのだ。

無責任というを通り越している。だれもかれも気が狂っている。10/28当日の夜は、各局の報道番組ともこの暴言事件を取り上げなかった。どうやら野党からも何も批判が上がってないらしい。いつもなら玉木雄一郎とか志位和夫とかが何か口を出し、マスコミ報道の材料になってもよいはずだが、誰も何も言わずに済ましているようだ。この黒田東彦の暴言(詭弁)をそのまま認め、日銀の過誤と不作為を素通りさせた結果になる。この現状に唖然とさせられる。為替の調節が日銀の金融政策の責務ではないという言い分は詭弁だ。黒田東彦は、政策金利に触れたくないためにこんな詭弁を垂れ、ゼロ金利と金融緩和(マネタリーベース異次元増量)を正当化して固守している。

日銀がこの政策を続けているため、円の国際レートは暴落を続け、輸入品が高騰して消費者物価が上っている。円の価値が下がり続け、国民が生活苦に喘いでいる。どの国も、財務相と中銀トップが一緒になって金融政策を舵取りし、自国の通貨を防衛し、自国通貨の安定化に尽力している。だが、日本だけは異なり、財務相は(フリだけにせよ)円の価値を守る発言をして政策を行っているのに、中央銀行総裁はその責任から逃げ、財務相とは逆の矛盾した金融政策に走っている。その矛盾を投機筋に衝かれ、利用され、市場で円が仕手戦の標的になって財務省のドル売り策が功を奏さない。円は売り浴びせられ、円安が一方的に進み、資源と食糧が騰がって国民生活は窮乏化するばかりだ。

なぜ、政府と日銀の金融政策は矛盾したままなのか。なぜ、岸田政権は、日銀に政府と相反する円安政策を続けさせ、通貨円の価値を暴落させるままに放置しているのか。その真相の分析と本質の考察は次に書くとして、今回の記事では、金利以外の別の方法と対策について提案を述べたい。黒田東彦が詭弁で逃げ、マスコミと野党がそれを黙認しているのも、政策金利を簡単に上げられないという点で全員の認識が一致しているからである。金利を上げれば国債の利払いが増える。金利を1%上げれば国債費が3.7兆円上振れするという財務省の試算も出ている。歳出が急増し、予算編成が困難になる。そのリスクがあり、出口なしの事情と前提があるため、全員が黒田日銀のゼロ金利策を傍観しているのだ。

果たして、政策金利に触れないまま、他に円の暴落を防ぐ有効な方法があるのか。一つ考えられる手がある。誰も言わないのが不思議だが、韓国と協調し、ドル高是正を国際社会に訴えるという方策がある。なぜ誰もこれを発案し、問題提起しないのだろう。どうしてマスコミでこれを言挙げする論者が登場しないのだろう。不思議でならない。日本人全員が思考停止していて、グルメとお笑いのテレビ番組に浸り、ツイッターでしばき隊の真似をして誹謗中傷ごっこに耽り、大脳皮質を萎縮させ退化しているように見える。無論、この策で確実に円安が止まるという保証はない。効果測定は絶対ではない。だが、打つ手としてチャレンジする価値のある対策だ。通貨円を守り、国民生活を守るため、打てる手は全部打たなくてはいけない。

韓国ウォンも下落が続いていて、10/12 時点で対ドルで年初比2割下落となっている。日本と同じく資源と食糧の調達を輸入に頼る韓国は危機感を強くしているだろう。韓国には1997年の通貨危機に襲われた深刻な経験がある。現在、中国市場がタイトなコロナ規制のために景気減速に陥っている影響を受け、韓国の半導体の輸出が伸びず、貿易収支が7か月連続で赤字の状態になっている。経常収支も赤字トレンドで進行していて、韓国国民の不安心理は大きいに違いない。ヘッジファンドは今は日本円に狙いを定めたゲームで稼いでいるけれど、標的が韓国ウォンに置き変わった場合、韓国は金融経済のサイズが日本より小さいため、インパクトも激烈で悪影響が甚大になる事態が予想される。

ここで注目すべきポイントは、韓国中央銀行は必死で利上げを繰り返し、米FRBと同じテンポと上げ幅で金利上昇を行っているのに、ウォンの下落が一向に止まらない現実だ。米国やEUと連動して政策金利を上げているのに、その効果が為替レートに現れない。利上げが歯止めになっていない。このことは、日本でも、円の金利を上げればただちに円安が止まって円高に振れる保証がないことを直観させ、類推させる。現在の円安は、日米の金利差が主な要因であり、それが投機筋が円売り浴びせを合理化する根拠となっていて、一般が円安の必然を納得し了解する状況となっている。それは確かな事実なのだけれど、それだけが絶対的な要因ではないのだ。他に根本的要因があるから、ウォンは金利を上げても下落が続くのである。ユーロも同様。

それでは、他の要因とは何か。それはアメリカの動機と思惑である。アメリカがドル高維持の姿勢を強固に貫徹しているから、市場がドル高に動くのだ。先週(10/25)、イエレンが日本の円買い介入について「知らない」と冷酷に突き放した。これはアメリカの政策意思を示すもので、アメリカの金融政策が端的に現れた発言である。日米の通貨を安定的な線に協調して収めようという発想がない。つまり、もっとドル高・円安にキャリーしてもよいという判断を示唆している。このイエレンの発言をお墨付きにして、投機筋は安心して円売りに拍車をかける行動に出るのである。イエレンはドル高歓迎で、円安・ウォン安・人民元安歓迎の態度なのだ。それはなぜか。輸入物価を低く抑えることが第一だからである。インフレ退治が最優先の課題だからだ。

アメリカは巨額の貿易赤字を常に計上している国である。アメリカにとって輸入超過の相手は、中国、EU、メキシコ、日本の順番に並ぶ。人民元とユーロと円がドルに対して値を下げることは、輸入物品の低価格化を促進し、すなわちインフレ抑制策となる。インフレ抑制の妙案として、イエレンとパウエルはドル高政策に狂奔しているのであり、投機筋の金融資本はそれを市場でサポートしているのだ。始めにアメリカの利害と目的ありき。円安ドル高は機械的自動的な市場変動プロセスで単純に決まっているのではない。当局の意思が動かしている。アメリカは、国内の輸入品を安くするためにドル高のアクセルを踏み続け、他通貨が下落する方向に為替市場を誘導しているのである。つまり、過剰で激越な円安(ユーロ安・人民元安・ウォン安..)の根っこにあるのはアメリカのインフレ問題だ。

私が総理大臣なら - という仮定法でしか立論できないが -日韓の財務相・中央銀行総裁会議をコールする。その場で「現在のドル高は極端で行き過ぎであり、各国経済と国民生活の混乱要因となっていて、是正の必要がある」「日韓は通貨安定のために連携協調して動く」という共同声明を発表する。「1年前の対ドル為替水準を安定ラインとして目標設定する」というメッセージも打ち出す。同盟国の日韓がこうして足並みを揃えれば、米国政府もFRBも市場も無視できないだろう。G7に韓国を招いて討議しようという方向になる。歯止めがかかり、一方的なドル高暴走はできなくなる。投機筋も動きが止まる。アメリカにとって同盟国の結束は重要で、日韓が共同して声を上げれば、通貨安の犠牲の無理強いはできない。

今、世界の多くの国々は自国通貨安に直面して困窮している。自国通貨安をアメリカと市場に強いられるという図は、資源や食糧を買う購買力を強制的に切り下げられるという意味である。資源や食糧を輸入に頼り、輸出工業力の弱い国には耐えられない苦痛と打撃に違いない。フィリピンがイメージに浮かぶ。アジア、中南米、アフリカの新興国と途上国はそうした国々ばかりである。G20会議は、本来、国際経済会合であり、中国やインドやインドネシアやブラジルや南アフリカが新興国・途上国の声を反映させる場でもある。ここで中国が代弁者になり、BRICSで纏まってアメリカにドル高是正を要求し、G20が先進国(アメリカの子分組)と新興国に割れて対立する構図となっては、アメリカにとって具合が悪いだろう。

そうなる前に、日本と韓国が連携してアメリカに是正を求めればいい。以上が結論である。それにしても、われわれは、隣国である韓国や中国のことをあまりに知らず、関心がないことに気づく。韓国の中央銀行総裁が誰か、今回の作業で初めて知った。韓国の中央銀行(韓国銀行)の建物が、日銀の意匠や景観に酷似している事実も、あらためて知って驚いた。何でこんなに近い国同士なのに仲良くしていないのだろう。金融経済政策で手を握り合えば、大いに WinWin の国益実現が可能なのにと、溜息が出る。日本も韓国も、アメリカの方ばかりを向き、アメリカに阿って媚び、アメリカの前で二国が喧嘩する様を見せてアメリカを喜ばせている。日中韓はアメリカによって分断され、いがみ合い、国益を失いながら、日韓はアメリカに尻尾を振っている。

われわれ日本人は、アメリカと英国の政治や政策の情報ばかりマスコミから伝えられて知っている。まるで英国が隣国であるかのように。中国と韓国については知らない。不幸なことだ。

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