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くんくんの小説

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とほほ、あの頃は

 私は幼い頃から現在に至るまで東京都のK市に住んでいる。というと、東京って区じゃなくて市もあるんすか、みたいに聞かれることがたまにある。自己紹介する際にも、ほとんど埼玉のような立地で、とあらかじめ説明することが多い。

 大学受験の浪人の期間にK市のT丘から、同じ市内でU園に引っ越した。T丘の家は都営の集合住宅、まあ団地で、そこには小学校の同級生もちらほら住んでいた。同じ場所から同じ学校に向かい、

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ピータードイグ展/小説「正解の音、卓球の台」

ピータードイグ展/小説「正解の音、卓球の台」

ピータードイグ展に行きました。

自分がやりたかったことはこれだったんだなと、大変悔しく思いました。とても素敵な作品の数々だったので、皆さんも行くといいと思います。

細かくこの絵にはこう思ったとか、そういう感想を書こうと思ってメモしながら回ったのですが、そんなことをしても虚しいので、見た絵の一枚を元にお話を書きます。

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私は酒に酔っていた。

今日は私が留学に

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小説短編1:「電柱」

小説短編1:「電柱」

 「私は本当のことを知っている。」彼はそう断言したうえで、こう続けた。「なぜキジバトの鳴き声は中途半端に終わるのか。あのガスタンクは本当にあんなに丸い必要があるのか。なぜ蟻には一定の割合でサボるやつらがいるのか。答えは全てある一点に収束する。」

 私が彼と出会ったのは、実家から歩いて20分ほどの場所にある「図書館」だった。
 あの時私は、自宅に篭りきりの生活についに耐えかねて、梅雨の時期に傘も持

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