非営利と営利の違いを追求すると、自分が組織のアキレス腱だという事実に行き着く
こんにちは。認定NPO法人フローレンスの米澤です。
前職では認定NPO法人ブリッジフォースマイルで理事と企業渉外の責任者をしておりました。
NPOからNPOに転職したからか、NPOってそんないいの?とか
営利と非営利ってぶっちゃけ何が違うの?
とかって聞かれたりします。
よく言われるのは、営利企業は利益を追求して、非営利は社会貢献をする法人なんでしょ。って言われますが、
違います。
まず、営利企業も社会貢献をしています。もっと言えば、初めは、社会に必要なこと、もしくは、困っていることを解決する為に始めた会社も多いです。
例えば保険は、誰かが病気で困ったときにみんなで支え合う仕組みです。配達だって、乗り物だって多くの課題を解決しています。救えている命も沢山あります。
じゃあ何が違うのか?
営利と非営利の違い
それは、受益者からお金が取れるか取れないかです。
受益者とは、その事業から、メリットを受け取る人です。
例えば、お菓子が欲しい人からお金を取れるので、商売が成立しています。
これが、児童養護施設の子ども相手に、その子どもの為になるようなことを提供したいと考えても、受益者からお金はもらえません。
子ども相手ではなくても、貧困の方からお金をもらうビジネスは難しいことになります。
ではどうするのか?
本当に必要だということを世の中に伝えます。行政にも伝えます。
そこで、行政受託といって、国や自治体からお金をもらい、児童養護施設の子どもたちに必要なワークショップやセミナー、体験などの機会を提供します。賛同して下さった人から寄付ももらいます。
受益者からお金をもらえない=非営利
受益者からお金をもらえる=営利
こういうことを話していると、鋭い人から、ここで突っ込みがきます。
「じゃあ株式会社の形態を取っているソーシャルビジネスって何?」
ソーシャルビジネスとは?
株式会社の形態を取っているソーシャルビジネスは、寄付ではなく、事業収益で社会課題の解決をしている法人になります。
例えば、貧しい国の女性に服やカバンや雑貨などを作る仕事をしてもらい、それを先進国で売れば、その国の女性に仕事を作ることができて、その商品を素敵だと思う人がいれば、喜んで購入してくれます。通常繋がらないものを繋ぐ仕組みを作ったり、受益者を組み合わせたりするモデルが比較的多いです。
そう話すと、大体、また突っ込まれます。
「え、ソーシャルビジネスと営利企業って何が違うの?」
ソーシャルビジネスと営利企業の違い
営利企業は、ゴールが利潤の追求となり、自社にどれほどの利益をもたらすのか?という価値基準になりますが、ソーシャルビジネスだと、それで誰の何の問題を解決して、利益が出せるのかという判断基準になります。
利益を出せたとしても、社会課題の解決になっていないと、意味がないという価値基準です。
そうするとまたまた突っ込まれます。
「綺麗ごとじゃない?株式会社の形態で両方っていうのは、意思決定の優先順位ってどうなるの?利益?社会課題?」
一般的な回答としては、利益です。株式会社の形態をとっているので。
ただ、個人的な答えは『トップによる』です。
その答えに尽きると考えています。
最終、例えば発展途上国の為のビジネスをやっていて、その立場の人にとってメリットのある判断をするのか、社員を守る判断をするのか、株主を守る判断をするのか、トップによります。
そういうと、今まで黙っていた人から大きな声で突っ込まれます。
「そんなわけない!!」
ソーシャルビジネスといっても、株式会社なら、最後は出資している人の判断になる。そう言われます。
もちろん、株式会社なので、その判断が一般的です。でも出資を同じ理念の人だけにしていたら?トップがほとんど出資していたら?
なにより、利潤追求するソーシャルビジネスの存在意義ってあります?
ソーシャルビジネスに賛同している出資者や社員に支えられていることも事実です。
なので、ソーシャルビジネスを定義すると
『組織の最終判断を利益追求の為には行わない可能性があり、受益者からお金をもらえるビジネスモデルがメインの組織』
になるんだと思います。
「そんなわけない!!甘い!」
そんな声が聞こえてきそうですが、上場している株式会社で、利益よりも企業理念を大事にすると、株主総会で言っている会社が存在しています。
サイボウズ株式会社さんです。青野社長は、はっきり
「売上、利益、株価よりも理念を大事にしたい」って言っています。
引用:https://finance.logmi.jp/337118
そして、その企業理念を株主総会で決めています。株式会社なのに、利益の最大化を意思決定の最優先事項にするのではなく、「世界のチームワークの最大化」という企業理念をファーストにしたい、もちろん利益も大事にしますと言ってます。
引用:https://finance.logmi.jp/376890
それって、もはやソーシャルビジネスと同じですよね。「世界のチームワークの最大化」が、一般的に社会課題と言われていないだけで。
つまり、営利・非営利・ソーシャルビジネスを分類すると、こんな感じです。
※非営利の中でも受益者からお金をもらうモデルはあります。占める割合が多くなかったり、無・低利益と粗利MIXさせてたりします。
NPOを正しく定義すると
まだ無償でやっているNPOもある中、フローレンスは、NPO業界で働く人の社会的地位の向上を目指して、処遇改善をしましたが、(労働人口が減少する中、社会的課題を解決できる優秀な方々を確保するのに処遇改善はNPOに付き纏う高い壁だと思います)
どれだけ処遇改善をしても、当たり前ですが、最終的には、利潤追求の為でも、社員の為でもなく、社会的課題の解決。それが非営利の組織です。
ソーシャルビジネスと非営利の本質
つまり、NPO業界で働く人は、最終的に株主の為に捨てられることはないけれど、社会的意義を優先する為に捨てられる可能性はあり、ソーシャルビジネスは、いい意味でも悪い意味でも社会的意義から逃げられる形態をとろうと思えばとれる。イコール、非上場の営利企業と同じく社員を守ろうと思えば守れる。
言うなら、ソーシャルビジネスだと名乗っている株式会社のアキレス腱は、意思決定の判断軸で、非営利組織のアキレス腱は社員。そう考えると、
ソーシャルビジネスの場合、出資元や最優先事項は何かということで、非営利は、社員のことをどう言及し、どう扱っているのかで、その法人の本質に触れることができるんだろうなっていう話しに行き着きます。
非営利は社会的意義を何よりも優先させながら社員をどこまで大切にできるかに苦しみ、ソーシャルビジネスは社会的意義と利益をどう両立させるかに苦しむ。
しっかりしなきゃなって思わせられます。