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「DX」×「人材育成」リアル最前線レポート vol.2~デジタル人材とアナログ人材の分断に気をつけろ!~

約2年間で100社を超える企業の方々とお会いさせていただきながら取り組んでいる「DX」×「人材育成」のテーマ。

今回も現場の最前線で自分自身が得た知見や実状をできるだけリアリティをもってnoteにまとめていきたいと思います。

第1回では「自己開示」と「Being(ありたい姿)」の関係性についてまとめました。

そして今回、第2回は

「DX推進の分断を防ぐ!」

というテーマについて触れてみたいと思います。


あなたが働いている会社の中に「デジタルに詳しい人」「アナログな人」がいて、その人たちの仕事の進め方や会話に温度差やミゾはありませんか?

例えば営業と情シス。

顧客や業界知識豊富な営業と、IT知識豊富な情シスの間には仕事の進め方や会話に大きな温度差やミゾがあるケースが多くあります。

・情シス主導でツール導入しても営業が全然活用してくれない。

・全体最適の視点で基幹システムを運用している情シスと、顧客満足度のために独自のアナログ運用ルールを作る営業。

・メール受信やネット接続が不調になると険悪になる営業と情シス。


どんな会社にもある光景ではないでしょうか。


また、最近では会社全体を横断する「DX推進部門」が新設される会社も少なくありません。

しかし、そのDX推進部門と既存の事業部門の現場との知識の格差・経験の違いからくる「DX推進における分断・ミゾ」が問題になってきています。

<事業部門の声>

・「DX」は専門部署だけがやればいい話でしょ。

・既存の業務で忙殺されているのに、DXでさら新しくやることが増えるなんてたまったもんじゃない。

・我々の稼いだ金をDXにつぎ込んで、本当に成果は上がるのか?

・お客様のことを理解していない人たちにとやかく言われたくない。


<DX推進部門の声>

・現場がデジタルの知識なさ過ぎてDXが全然進まない。

・現場主導でシャドーIT化してセキュリティ観点のリスクが噴出している。

・現場は足元の業務に追われて中長期の視点や危機感が欠けている。


・・・と、こんな声をよく耳にします。


参考:DX推進における大企業社内の分断・ミゾの概略図

図1


これらの「DX推進における分断・ミゾ」を解消し、本来のDXを推進するためにはどうしたら良いか?このミゾを超えていける人材をどうやって育成していけば良いか?


ここで重要になってくるキーワードは


・流動性、循環、越境

・自己開示と情報交換

・感謝と共感とリスペクト


が挙げられます。



まず「流動性、循環、越境」では、DX推進部門や情シスにいるような「デジタル人材」と事業部門で活躍している人材を意図的に混ぜることが重要です。

具体的には現場のエースをDX部門へ。

逆にDX部門のエースを現場へ。

兼務も良いですが、できれば1年ほど専任として経験を積むのが良いと思います。

顧客視点&業界視点と、デジタル視点が混ざり合うことで本質的なDXが進み始めるからです。

それぞれ現在のコンフォートゾーンから抜け出し、越境することで新たな経験・知識・考え方が身に付き、そのサイクルを回していく(循環させる)ことで、部門の壁を超えて個人も組織も文字通りトランスフォーメーションしていくことができるようになります。

意図的に混ざった人材はその会社の「新しいモデル人材」としてコンピテンシーの対象にもなります。そういった人材をしっかり社内でヒーロー化することも重要です。(もちろんそういった人材の市場価値は高くなるでしょう!)


また、経営陣、マネジメント、現場それぞれの階層ごとに混ぜる方がより効果が高まります。経営陣であれば、デジタル系の役員と営業系の役員が双方に兼務すると非常に効果があります。

マネジメントも事業サイドであればDXのミッションを付加し、DXサイドであれば事業側のミッションを付加することで相互理解が深まることが期待されます。

現場も同様で、事業部門内にデジタル推進の担当を複数名設置することや、DX推進部門では各事業部担当を設置し、実質的にはその事業部の中の人として扱ってもらえるところまで入り込むことで本質的なDXが推進されることになります。


次に重要なのが「自己開示と情報交換」です。

この流動性の高い循環サイクルの中で大事になってくるのは過去の経験値や実績よりも現在・未来に対する個々人の「正直な気持ち」や、「チャレンジしたいこと」、「疑問・不安・懸念に感じていること」といった自己開示のスタンスです。

「誰か教えて!」「誰か助けて!」「こんなことやってみたい!」

そんな意思表明を起点に、立場や役職関係なくカジュアルに「こういう情報があるよ」「こんな失敗したことあるよ」「こうやったらうまくいったよ」「何か手伝えるかもしれない」といった協力関係が生まれ、「共感と感謝」へと連鎖していきます。

こういった一つ一つの積み重ねがDXを前に進めるのです。


このような一連の活動はデジタル系の会社、特にスタートアップの企業では普通にやっていることかもしれません。

扱っているサービスや事業がデジタルと密接であればあるほどこういったことが当たり前になされているケースが多く、一方で歴史ある大企業などは特にそうですが既存事業とデジタルの距離感が遠いと、こういった一連の活動はほぼ未経験だったり不慣れだったりします。

日本の大企業が本当に「DX」するためには、こういった自己開示と情報交換をベースに部門や役職を超えた個々人のトランスフォーメーションが必要です。

これからも日々、こういった活動の機会提供を通じて、1社でも一人でも多くの人のトランスフォーメーションを支援していきたいと思います。


次回は「DX人材ってどんな人材?」というテーマで、リアルな人材要件定義を掘り下げていきたいと思います。


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