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【エンタメ関係者必見】吉本興業の約束

吉本=歴史あるお笑いというイメージはしていましたが、新しい形でタレントの受け皿を常に生み出していて、社会貢献も幅広くやっているという多様性を理解できた1冊でした。
地方創生、デジタル教育、国際映画祭、吉本に対してこういったイメージを持つ人は少ないと思いますので、多くの気付きと学びがあるでしょう。

まるで豊臣秀吉のような大崎さんの人たらし術やキャリアは、「人」が財産となるエンタメ業界では非常に大切だと理解出来ましたし、学歴や才能よりも、一般人の視点を持ちながら、周囲への気配りを忘れないことが、いずれご縁となり大きな未来に繋がると学びました。
自分もご縁をもっと大切にしながら、妙なプライドは捨てて、何気ない日常からアイデアを生み出せるような視点を大切にしていきたいなと思います。

何より感心したのは、60を超えてここまで謙虚に、世の中の新しいことに興味を持ち続けて、常に芸人や社員のためにチャレンジし続ける姿勢でした。
歴史ある企業の会長とは思えない佇まい、だからこそ吉本はBS放送、YouTube、沖縄国際映画祭と、媒体や手法を変えながら時代に応じたコンテンツ提供が出来るのです。こうした柔軟性や多様性は、VUCAの時代においては、多くの企業が時代や環境に順応するために学ぶべきことでしょう。

自らが地方創生にやや関わっていることもあり、よしもと住みます芸人と損得あまり考えず何か出来たらと思いつつ、毎年6億円の赤字を出しながら、将来のDNAになると信じて映画祭を継続する吉本は、やっぱり本質的にチャレンジ精神旺盛なのでしょう。

スティーブ・ジョブズも晩年語っていましたが、どれだけ仕事で大きな成果を上げて、立派な肩書を得ても、最後は家族や人を大切にして、社会貢献したくなるのだなと共感出来た良書でした。

■一部抜粋■

気がついたら社長になって、会長になって。 66 歳になったいま、自分はほんまは何がしたかったんやろうと考えるようになったんです。年いけばいくほど、平凡がいちばん素晴らしい、ありがたいと思うようになるんですね。普通の結婚をして、普通に朝御飯や晩御飯を子どもたちと食べて、近所の銭湯に行って、みたいな生活をしたかったなぁとも思うんですよ。僕は吉本で月に1回しか家に帰らんような仕事ばっかりの生活をしてるうちに、嫁さんはもう死んでしまった。「ああ、平凡ってありがたかったんやなぁ」といまになって思います。
「住みます芸人」といって、全国各地で実際に芸人さんが住んで活動する地方創生に役立つシステムも作っています。それも日本だけではなく、アジアにも広がっていってる。他の分野もありますよ。このイベントをやっている「ラフアウト」というコミュニティスペースの運営。国連と組んで、 SDGs といって国連が提唱する「持続可能な開発目標」というプロジェクトに関わる仕事もしていますし。僕が個人的に面白いと思うのは、ソフトバンクのペッパーくんっていう、人工知能ロボットがあるでしょ? あの中身も実は吉本が考えてるんです。
ラブ&ピース、愛すれば平和になるって、必ずしもそうでしょうか? 愛はどちらかというと排他的ですよね。愛国心があるからこそ戦争が始まることも多いじゃないですか。愛が強まると、実は争いは起こりやすい。「ラブ&ウォー」になる場合もある。一方で、人が笑っているところというのは、いちばん平和な状態じゃないかと思うんですよね。「そのラフ&ピースを目指すのが、僕らの仕事や」というようなことを、大﨑さんがおっしゃったことがあって、僕はその言葉にめちゃめちゃ感動しました。
吉本は他の放送局から仕事をもらっているんで、吉本がBSの放送局をもってしまうと、取引先の放送局と競合する可能性があるわけです。でも、競争したって勝てるわけないし、バッティングして迷惑は絶対にかけたくない。そこで考えたのは、吉本のBSチャンネルは、ほとんどすべての番組を地方創生の番組にするということです。全国 47 都道府県、何千何百とある市町村を紹介する番組ですね。すると、バラエティやドラマや情報番組をやってる、地上波やBSの他の放送局とバッティングしないし。地方の経済が大変やという中で、少しは役に立てるんじゃないかなと思ってね。そこで、大阪は万博も控えてるし、地方創生の中心になれるんじゃないかとも思ってるんです。大阪が頑張って、地方を元気にしていきたい。疲弊してる農業や、後継者のいない商店街や、問題が山ほどある地方を、応援できるチャンネルにしたいんですよね。吉本が作る放送局やけど、売れてるタレントは一切出ませんっていう感じにして。
僕はね、お笑いは心のインフラやと思うねん。鉄道や水道が生活のインフラなら、お笑いは人と人とをつなぐインフラ。だから、お笑いという文化を育てることは、日本全国や、やがては中国やアジアとつながっていけるインフラを作ってるんやと思う。大阪人はみんな世話焼きで、困ってる人や悩んでる人に、「あんた、どないしてんねん?」って声かけたりするでしょ。「笑うことは許すこと。許すことは笑うこと。笑い合って許そう」っていうのがいいなぁと思うんですよ。そして世話を焼いて、お互いに笑い合うっていうのが、大阪の文化。それを日本全国に、あるいはアジアに広げていけたらなぁと、考えてるんです。
タレントエージェンシーの機能は本当にどんどん広がっていってます。『アイ・アム・サム』(2001年) というショーン・ペンが出ていた映画を覚えてますか? 知的障害のある主人公がスターバックスで働いていて、ルーシーという娘が生まれてという展開の映画なんですが、あれは、もともと制作側がスターバックスに場所を貸してくれと頼んだのが始まりで、おかげでものすごくスターバックスのイメージが上がった。それで、スターバックスは映画投資の部門を作ったんです。映画に投資をするから、出会いの場をスターバックスにしてくれとか頼むわけです。
僕は社長になった時に、「デジタル」「アジア」「地方創生」の3つのテーマを掲げました。理念を言葉にするのも違うなと思ったし、でもなんかわかりやすい言葉は示したほうがええなと思ったので。なんで「地方」をひとつの柱にしたかっていうと、単純やねん。僕は新幹線でしょっちゅう移動してるんで、最初の頃は窓の外を見ながら、海を見たら「魚を捕って食べてはるんかな」とか、山を見たら「林業の人が多いのかな」とか、単純な想像するのが好きやったんやけど。ある時、夕暮れの車窓を見ても、イメージがまったくわかんようになってたんよ。東京の放送局と会社を行き来するだけで、視聴率がどうとかばっかり考えてるうちに、「自分はおかしくなってる」とショックを受けた。その時、もっと地方のことを知らなきゃいけないと感じたんです。






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