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93. Zoom授業雑感(Week 5)-口頭試験

1.今週の要約

ヒジュラ暦1441.8.23 (2020.4.16)

今週は会話クラスで1対1の口頭試験を実施した。Zoomのブレークアウトルームを利用して、一人5分程度の試験を20名程度行った。概ね、普段教室で実施するものと同様にできたとは思うが、やはり数名の学生がノートや資料を見ながら試験に臨んでいる印象があった。

今週、勉強になった発信は、AATJのウェビナーでオンラインでの試験や評価についての実践報告が大変、参考になった。また、「ニッポンのオンライン授業カンファレンス2020」の動画ではZoomの細かな使い方に関して参考になるコツが紹介されていて参考になった。

2.Zoomでの1対1口頭試験の実施

2-1 実施の手順
私が勤務する大学では中間テストがあり、本来であれば、3月末に実施される予定であったが、遠隔授業の対応などがあったことで、実施が2週ほど遅れた。

当初の予定では20名ほどの学生に対し、1対1で口頭試験を5分程度、実施することになっていた。その場合、学生を教室の外で待機させ、一人一人教室に入って試験を行っていた。このやり方の問題点としては、試験を終えた学生が、他の学生に試験内容を言ってしまうということがある。もちろん、そういうことはしないよう指示はするが、このあたり、学生の助け合い精神は非常に強いため、なんとなく後半の学生になるほど、手際よくこちらの質問に答えている印象はあった。

それで、実際の手順としてはいつも通り、Zoomで参加してもらい
1.授業開始時にメインセッションにて学生に試験の手順について確認をした。
2.その後、学生全員をブレークアウトルーム1(待機教室)に移動。
3.私(教師)はブレークアウトルーム2(試験実施教室)に移動する。
4.学生をランダムにBR1(待機教室)からBR2(試験実施教室)に呼び出し、試験実施。
5.試験終了後、学生をミーティングから退出させる。
6.以降、4,5の繰り返し。

今回、試験を受ける順番をランダムにすることにした。通常だと、名簿順にすることが多いのだけど、それだと、学生も誰が先に試験を受けたかがわかり、どんな問題だったかを聞く可能性が高くなるのでランダムにした。

これがおもしろいのは、学生が待機教室から、吸い取られるようにだんだんいなくなることだ。待っている学生は次は自分かもと思いながら待つようになる。ドキドキしていたらしい。これにより名簿順よりも緊張感をもって試験に臨めるし、名簿順だと後半の学生は自分の番まで、携帯やPCの前からいなくなる可能性もあるので、いる・いない問題を回避するため、全員、常に待機の状態にしたかった。(イメージ図↓)

プレゼンテーション11

ブレークアウトルーム2つ用意し、待機教室と試験実施教室に使ったのは理由がある。当初はメインセッションを待合室にして、ブレークアウトルームを1つ作り、試験教室にすることを考えた。しかし、メインセッションを待機室にすると、試験後の学生がメインセッションに戻る可能性があること、また試験を待っている学生も待っている間にミーティングに出たり入ったりすることができてしまうので、上の図のような流れで、学生が試験を終えるように、こちらも学生の動きを把握しやすいよう2つの部屋を作った。ちなみにメインセッションを試験実施教室に使うのも難しい。遅刻した学生が突然、試験中に入ってくる可能性もあるからだ。

2-2 実施
上のような流れでブレークアウトルーム2に学生を呼び出したら(こちらが操作する)、試験を始める。
リアル教室とは違って、最初にお互いのマイクと共有画面(スライド)の確認をした方がいい。こちらの音声とスライドが見えるか確認し、同時に相手の音声がこちらによく聞こえるようにマイクの位置などを調整してもらったうことで通信トラブルを回避したい。

試験の流れ自体は通常と変わらず、問題なくできたと思う。リアル教室の時のような学生の出入りにかかる時間などがないので、学生が入れ替わる時間はいつもより短かった。また、通常時も口頭試験は録音しているが、今回はzoomの録画機能を使ったので、動画として記録できたのもよかった。後で見直すのには録画の方が便利だ。

あと、よかったのは学生がこちらの反応を頼りに回答できないことだと思う。時折、学生はこちらの顔や手(ペン)の動きなどを見ていて、正誤を判断する者もいるが、Zoom上だとそういった手がかりを使うことは難しい。それは逆も然りで、マイクのみのでの受験だと、非言語情報がほとんどないので、教師側も言語情報のみで採点することになった。

2-3 問題点
予想はしていたものの問題点もあった。それは、学生が何かノートや資料等を見ている可能性が0%ではないということだ。例えば、ビデオで参加している学生で不可解な目線の移動が見られた。また、マイクのみの学生でも、口頭で質問に答えるのに、何かを読んで漢字の読み間違いをしているように感じられる場面もあった。

これに関しては、こちらも決定的な証拠をつかめるわけではないので、強く指摘することもできない。対策としては、疑わしい時には「何も読んでないですよね」とけん制しつつ(笑)、評価基準として、時間がかかりすぎる場合は、減点の対象とし、時間制限をかけることでカンニング対策とした。

2-4 まとめ
筆記試験に比べると、口頭試験はzoomと相性がよいと思った。ほぼリアル教室と同じやり方が再現できたと思う。一方で学生のカンニング問題はリアル教室より起こりやすそうだ。これに関しては、後述のリンクでの実践報告でもあったが、カンニングを絶対にさせないように技術的制約を加えるより(回答場面の撮影等)、問題数を増やしたり、制限時間を設けることで、何かを見ている時間を与えないようにするのが、現実的な方法なのかなと考えている。今後、筆記試験などで、「何を使ってもいいです試験(持ち込み可試験)」をするのもアリかなとは思ったが、これこそ、通信環境とデバイスの良しあしで差が出る可能性が高く、重要な試験を実施するのは怖いかなと個人的には思う。

3.今週、特に勉強になった発信




一つ目は4月11日に行われたAATJ(The American Association of Teachers of Japanese)のウェビナー動画で、遠隔授業での試験や評価をどうするかということについて実践報告がされている。アメリカでも急遽、オンラインで授業をしなければならなくなった先生方の実践で、現実的で参考になった。例えば、前述したように、オンライン授業における試験のカンニングに対して、技術的な対処より出題の工夫で対策することや、限られた状況でのルーブリックの使い方、フィードバックの仕方など、勉強になった。

二つ目はZoomの使い方で、細かな部分の使い方や工夫が参考になった。
facebookの動画は速度をあげて再生できないの仕様なのか、標準速度でしか見られなかった。

Zoomの話:16:30から。
投票結果のダウンロードのやり方:33:00
ブレークアウトルームの振り分けの話:43:00
共同ホスト、参加者の名前の始めに番号や記号をつけてもらうことで、ブレークアウトを複数回する時にかぶらないグループ分けがしやすくなる。

これは、なるほどと思った。グループワークをその都度、違うメンバーで行いたい場合に、名前に番号がつけておくと、こちらが分けやすい。

<終わりに>

実践されている先生方を見て感じるのは、公平性や不正に対する完璧を目指さず、今あるものを上手に使いながら、遠隔授業をやられていることだ。理想的な状況が準備できれば、それに越したことはないが、今回、学期中に遠隔対応に迫られた先生方は、与えられた条件で最大限、できることをやっていらっしゃるように感じられた。AATJのウェビナーのタイトルにある "Pivoting"の精神だと思う。私もこの精神でやっていきたい。

We Have Enough Distance For a Pivot

いつもより、ちょっとよい茶葉や甘味をいただくのに使わせていただきます。よいインプットのおかげで、よいアウトプットができるはずです!